素敵な人々
露出計の壊れたそのカメラでも
完璧なシャッター速度で
狂った被写界深度を合わせ
三原色の諧調が255段を超えるか
または0を下回るかして
写したそんなフィルムでも
あなたは持ち前の感性で
この現実の断片を切り取って
一枚の写真に、
仕上げてしまうのでしょう
思い出をたくさん
鳶色のものから、虹の光まで
電子の砂浜やいろいろな机の
引き出しに、しまっているのでしょう
そこには未来から流れてやってきた
メッセージボトルの中身なんかも
混ざっているのだと聞きました
私は生まれつき視力が弱かったので、
普段はずっと眼鏡をかけています
たまに嫌になったりして外すこともありますが
レンズ越しに現実を眺める時間は
あなたよりはるかに長いでしょう、
ですが私は写真の撮り方について
全く学ばなかったので
今までたくさん捉え損ねてきました
目の前に横たわる薄暗い現実に辟易し
なかなか元気になれない時があります
こんな調子で嘆いてみますが
代わりに、私は いつも
突き抜けた感度で見えるものだけ
ただ見えるものだけを見ています
全ての声を聞きとり
それらに音をつけ
曲にして、歌いあげてしまいます
たまには五線譜に記して
オーディオデータを整えて
遥か未来へと放つことだってあります
思い出はひっそりと絨毯に隠しています
私の部屋の真っ白だった壁には
あなたの写真や作品も飾っています
時間は一方通行にただ流れゆくだけ
と、普通の人たちはそう云いますが
私たちに言わせれば 時間なんか
逆回転させたり、静止させることも
可能であり、そういうものだと
当たり前に思っています
わたしもあなたも、刹那を封じ込むすべと
それを我々のものにする才覚を持っていますが
この時を永遠のものにしようなんて思いません
「何もこの時はこの時で結構だ。」と、そう思うからです
書き得ない事は知っている
書き得たことは知らない
忘れて生きて、思い出しては死なせる
繰り返していくうちにまた新しい朝を見つける
美しい一瞬とつまらない毎日
言葉にできぬものが死ぬほどある
私たちはやれと生きている
たまにどんな表現への欲望も持てず涙を流す。
シテキ感覚をこんな風にして
躁病ちっくに書き連ねてると
iPhoneの通知音がなって
もう朝なことに気づく
「シグ」という画家からだ
この辺で意識してペンを置かなければ
自由詩はすぐに散文になろうとする。
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