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500年周期の反転的変移

500年という単位は、観測する上で特別な意味を持つ。ここ2~3000年の間だけに目を向けてみても、500年の周期で何かしら動きがあり、区切りというよりは、一つのセンテンスの句読点のような息継ぎの境だ。

ただし、正確に500年というわけではなく、時間の存在しない領域からの観測のため、およそ500年程度、という曖昧さは否定できない。また、そのタイミングで必ずしも何かしらのイベント(事象)がある、というわけでもなく、あくまで次元間のエネルギーレベルの変移のため、現実に顕著な形、現れが生じるとは限らない。

そんな、次に控える500年周期の時代へと調査に赴いた。その時の、この現実次元の様相は想像を絶するものだった。あまり詳しくは記せないが、前回から今回に至る500年間と比較しても、その変化の度合は著しく、一つの文明が興り、滅ぶに要するほどの、何倍もの年月が経過したような様変わりが印象的だった。

さながら進歩、発展ではなく、反転。ある種の aftermath、然るべき破壊的回帰といったところか。そんな様相の時空世界に、何名かを引き連れて位置したわけだが、まずは指定されたポイントである、とある放棄された、古い研究施設へと向かった。

内部で待機していると、数体の気配が施設に入ってくるのを察知し、仲間たちに姿を不可視化(透明化、ではなく)するよう指示をした。不可視化した私たちの潜む開けた空間へと、三体の存在が近づいてきた。彼らは一見、人間存在のように見えるが、前時代を生きていた人間とは僅かな点で差異が見られた。

前時代的に描写するなら、一人は年老いた科学者風の男。残りの二人は双子のように、互いにとても似ている若い世代風の女性。彼らの格好は、現在の環境を生き抜くためだろうか、前時代にはない特殊な装いだった。

不可視化を保ったまま三人を観察していると、驚いたことに科学者風の男がこちらに目を向け、「その必要はありません、あなた方を認識できます」と、前時代の言語の面影を微かに感じさせる、この時代の言葉でそう言った。二人の若い女性もこちらを見て頷いた。

可視化し、改めて事情を問うと、科学者風の男から、実は私たちを待っていたこと、続けて、私たちにとって予期せぬ話があり、一時、場はざわついたが、その背景を《船》に確認し、事の経緯を受け入れ、この時代の調査から、彼らへの協力という異例の方向へとシフトした。

「では、二人をガイドとして残しておきます」と言い残し、科学者風の男は施設を去り、彼の指揮する拠点へと戻っていった。その後、二人の若い女性(科学者風の男の助手、部下のような立ち位置)から、目下、地上で進行している一連の状況に関する説明があった。

因みに、彼女たちの名前を正確に言語で表記することはできないので、仮に「ルル」 と 「ララ」 にしておこう。

ルルとララには初めて接した瞬間から、旧知の仲のような愛着を感じたが、それは不思議ではなく、実はかつての星の仲間たちの意識が二人に宿っていたためだった。因みに、私が人としてこの世で生きている際も、非常に稀だが、初めて出会う人に同じような感覚を得ることがある。

この時代の彼女たちは、前時代的に言えば、レジスタンスの兵士のような立場とのことだった。ただし、このあと展開されるオペレーションは決して、戦闘の類などではなく、永劫なる “争い” の思いに囚われた者たちの、終わりなき勝利と敗北という幻想からの解放なのだ。

私たちの協力の主旨はそこにあり、今回のような態勢の実現となった。ふと、ルルとララが同時に顔を見合わせ、何かを察知した仕草を見せた。私たちも直ちに意識を周囲に向けると、施設を取り囲む、多数の攻撃的な思念を持つ気配を観じ取った。

外部からの侵入者に対し、ルルとララによる多少の攻防、駆け引きはあったものの、結果として全面的な戦闘に至ることはないまま、オペレーションは完了した。

今回の機会を通し、改めて再認識できたのは、争いまで至らずとも、ほんの僅かな対立の思いであれ、思いを抱き、飲み込まれた者にとっての内的次元に、その思いが正当化される虚構の世界を造り出してしまうということだ。それが集合的となれば、閉じ込められる意識も多くなる。

対立、という表現を用いたが、大抵はその思いに対し、人には自覚がない。極端に言えば、平和を願う心もまた、対立の思いの一側面なのだ。平和や安寧を願うことを否定しているわけではない。だが、求める思いは全て、対立の影を足元に生んでいることを知る必要はある。

内的次元に誕生してしまった世界から目覚めるには、この現実の時間で換算すれば、決して短くない準備期間が必要となる。深い眠りと夢見にある者を急に起こすことのショックは計り知れない。幾世を要してでも、その綿密な処置は尊重されなければならない。

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