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妊娠中の魚摂取が子どもの脳発達に及ぼす影響(富山大学)

概要:
 富山大学の井上真理子らの研究チームは、「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」を使い、妊娠中にお母さんが食べた魚の量と、生まれてきた子どもが3歳になった時の発達状況を調べました。
 調査の結果、妊娠中に魚を多く食べたお母さんの子どもは、いくつかの発達領域で遅れが少ないことが分かりました。これは、以前に行われた生後6カ月や1歳の子どもを対象とした研究とも一致しており、妊娠期間中の魚の摂取が子どもの発達に良い影響を与える可能性があることを示しています。
 この研究結果は約9万人の妊婦を対象にした調査から得られました。

詳細:
 魚にはエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)といった、n-3系多価不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。これらは、脳や神経の形成に不可欠な栄養素であり、人の一生を通じて脳機能を維持するのに重要です。動物実験を通じて、これら脂肪酸のメカニズムが明らかになってきています。

 過去の研究では、妊娠中に魚を摂取することが、生まれてくる子どもの神経発達に良い影響を与えると報告されています。しかし、魚の摂取が神経発達に影響を与えないとする研究結果もあり、意見が一致していません。以前、研究チームは、妊娠中に魚を多く摂取した母親から生まれた子どもが、生後6ヶ月と1歳の時点で微細運動や問題解決の領域において発達遅延が少ないことを報告しました。しかし、1歳を超える年齢での研究結果はまだありません。

 一般的に、子どもの発達遅延は3歳頃に顕著になります。このため、日本では3歳児健診で発達遅延のスクリーニングが行われます。「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」に参加した約9万人の母親のデータを用いて、妊娠中の魚の摂取量と子どもの3歳時点での神経発達との関連を調べました。

 この調査で使用された食物摂取頻度調査票(FFQ)には、21種類の魚介類が含まれており、摂取頻度と量から魚介類の習慣的な摂取量が算出されました。また、子どもの神経発達評価には、保護者が記入する発達評価ツールAges and Stages Questionnaires®, Third Edition(ASQ-3)を使用しました。ASQ-3では、コミュニケーション、粗大運動、微細運動、問題解決、個人・社会の5つの領域が数値化されて評価されます。

 妊娠中の魚の摂取量が最も少ない群を基準にしたとき、魚の摂取量が多い群では、微細運動、問題解決、個人・社会の3つの領域で、神経発達が遅れる子どもの割合が少なくなるという結果が見られました。しかし、粗大運動の領域では、魚の摂取量と神経発達の遅れとの間に関連は見られませんでした。

出典:富山大学:https://www.u-toyama.ac.jp/wp/wp-content/uploads/20240319.pdf

論文を読む:https://www.frontiersin.org/journals/public-health/articles/10.3389/fpubh.2023.1267088/full

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