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腹話術


夫とは大学時代からの付き合いで、私から贈った初めての誕生日プレゼントは腹話術の人形だった。


当時雑貨屋さんでよく見かけた「ミスターチャーリー」というシリーズで、箱もおしゃれだった。

箱ごとラッピングしてもらうと、まあまあ存在感のある大きさになり、それを抱えて歩きながら
「まさかこんなものをプレゼントされるとは思わんやろ」とニヤニヤして楽しかったことを覚えて
いる。

今思うと、そんなプレゼントができる相手だから
結婚ができたような気がする。

人形は何度目かの引越しのタイミングで処分してしまったけれど、ヒモを引っ張って遊びすぎて口が開いたままになり...「ガバガバくん」と名前をつけていた。


この「ガバガバ」はどちらかというと、ラモーンズの「GABBA GABBA HEY」のガバガバという感じでつけた。
(神戸フィッシュダンスホールのLIVEに行ったのは
1988年だったとはびっくり。)



***


最近図書館で「腹話術入門」という本を見つけた。


日本のザ☆昭和な腹話術で、人形の名前は「さくらちゃん」だった。


色々な台本が載っていて、さくらちゃんのセリフを読むだけで、頭の中であの腹話術師の独特の
高い声が聞こえてくる。

口の横のスジも思い浮かぶ。

「ミナサン コンニチワ
  サクラチャン ヤネン」


「ワタシハ アイサツハ トクイダッセ」



腹話術師が何か困った体験を話すと、

「ツラカッタナー ゲンキダシヤ」

「キイオトシナヤ」

「イヤナコッチャナァ」

「タイヘンヤッタナァ」





ツッコミも冴えている。

「チガウガナ」

「ナンデヤネン」

「イランワ!」

「ソンナコト キイタコトナイデ」



テンポが妙に心地よい。
もしイヤなことがあったら、心の中で腹話術の人形を動かすと面白いかもしれない。


「コマッタコッチャナア」

「マア ジンセイ イロイロアルワナ」

「キキトウナイネン」

「ゴメンヤッシャ」


口を動かさずに声を出すトレーニングの仕方も書いてあった。


テクニックを習得して、仕事で幼児さん相手にしゃべるときに指人形やぬいぐるみを動かしながら使えるようにしたいと、ちょっと本気で思っている。




昔、息子が突き指をして病院で説明を受けたとき、「マレット指」という症状の名前を初めて聞いた。


人間というものは、聞き慣れない言葉は知っている言葉に置き換えてしまうもので、私は「マレット」を指人形の「マペット」と聞き間違えをしてしまった。

可愛い名前の病名だなと感心し、
「へえ!すごいですね。人形を動かすのも意外と大変なんですね。」と、指人形をはめて動かすような動作をしながらお医者様に言った。
キョトンとされて変な空気が流れた。
後で理由がわかった。


アホラシイコッチャナア


ゴメンヤッシャ
















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