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映画「マッチング」を色で紐解く(ネタバレなし)

この映画は、光と影と陰の三要素で構成されている。


こんばんは。

本当は、夏ぐらいに出そうかな、と思っていたのですが、盛り上がりがすごいので思いっきり便乗しようと思います(白状)。

初週の興行収入ランキング第2位でスタートした映画「マッチング」。

ストーリーはすごい!キャストの演技がすごい!という話は他の方がたくさんやっていると思うので、私は変わった視点から、ビジュアル的な方を現時点で出ている予告編を見ながらネタバレなしでしようと思います。

【前置き】

【映像の色味】

前置きなのでスルーしてもらっても構いません。

人に入ってくる情報の9割は視覚と言われるほど、目に入る画は重要、というのはよく言われる話ですが、画は我々が思っているよりもたくさんの情報を無意識のうちに与えます。

それの代表格がです。
デザインや写真などでご存知の方もいらっしゃったり、もしかしたらその業種の方々もいらっしゃるかもしれませんが、映像業界にもその色に関するスペシャリストカラリストがいます。
複数のカメラで撮影した際、どうしてもカメラ間で色の差がでるため、色味を整えたりします。そして、色の演出も行います。

プロではない自分の例ですが、こんな感じに色を整えます。
(一部モザイク使用)

『色だけでそんなに違いが出るの?』
そう思う方もいらっしゃると思うので、例を挙げましょう。

例えば、「美味しそうなものを食べる時」を思い浮かべる際、どんな情景が思い浮かびますか?
寿司でもステーキでも、大半の場合は温かな食卓であったり、雰囲気の良いレストランであるかと思います。電球色の明かり、鮮やかなランチョンマット、さまざまな要素が彩られているでしょう。

逆に「まずいものを食べる時」はどうでしょう。
たとえあたたかい食卓でも、その料理だけ淋しそうな雰囲気を醸し出しているのではないでしょうか。たとえ雰囲気が良くても、その料理だけ異質な様子になっていませんか?

作例として、自分が以前撮影してレタッチした写真を出します。

「美味しそうに見せたい!」とレタッチすると

「まずそう…」と思わせたいと思い、色味をコントロールすると

だいぶ雰囲気が変わったのではないでしょうか。
プリンははちゃめちゃに美味しかったです。
(硬めプリンにアイスが合う、、、)

【色は演出の材料である】

アニメやゲームで料理が下手なキャラクターが料理すると良く紫色の料理が出ることが多くあります。
上手いキャラは黄色やオレンジのキラキラエフェクトがかかってる、ていう場面にであったことはありませんか?

無意識のうちに、紫などの感触=まずい、黄色やオレンジの暖色=美味いと認識しているかと思います。
茶色のものは美味しいて言いますからね。
人の顔色だって、青かったら「不健康そう」だと考えたりしませんか?

もうここまでくるとこの章の冒頭に書いた「色を演出する」というのも理解いただけれたのではないかと思います。

この夕焼けの写真だって、

色をコントールすれば、

日の出のように演出することができるのです。
(※これはかなり極端な例です)

【本編】

さてはて、前置きがとても長くなってしまいましたが、映画「マッチング」ではどのような色遣いになっているのか。
私は、光と影と陰の混在を色“も”使って表現されている映画だと思っています。もちろん、視覚的アプローチだけではなく、脚本、演技、音楽などたくさんの要素も一緒に、あらゆる手段で表現されているのではないかと感じました。

光、影、陰を図としてはこんな感じです。

本編の色の使われ方、そして光の使い方が秀逸で、特にここのカットが…!と言いたいのをグッと我慢して、ネタバレなしいきたいのでこのファイナル予告編で見れる部分だけで書いていきます。

【普通の人は鮮やかに】

【0:00〜0:30】は土屋太鳳さん演じる輪花、そしてその周りを取り囲む人物はみんな、どこにでもいる普通の人。決して異質な存在ではありません。色が強すぎず、普遍的でありふれた日常をそのまま切って撮ったかのような。そんな印象を受けました。
ホラー系にとって「幸せ」というのは「光」なのかもしれません。
これから事件に巻き込まれるので「嵐の前の静けさ」と言った方がいいのでしょうか。

【どんよりとした影のモノ】

佐久間大介さん演じる吐夢が出てくるカットだけ、狙っているのかわかりませんが、彩度が低めだと感じました。全体的に重いんです。
そして外のシーンではほぼ全て曇った日の、グレーの色味が出ています。
予告編内で初めて姿を現す水族館のシーンではストーカーという役柄なのもあって、どんよりした“影”の人間というのが、全面に押し出されています。

わかりやすいのが、輪花の同僚である、尚美と吐夢が対峙したシーンだと思います。
尚美はそのシーンまでは暗い色を纏っているカットはありませんでした。
吐夢の色は、重い何かに引きずられるように周りに伝染していってるかのようでした。
影は光までも殺すのか?

【時間が進むことによって生じる陰】

この映画は「サスペンスホラー」に分類される作品なので、時間が進む=物語が進むということはこのシーンのように恐怖に打ちのめされることがあります。予告編では、輪花が叫んだりして、あらゆる負の感情をこれでもかというくらいぶちまけてます。
よくよく見てると、冒頭の日常的な雰囲気の色遣いではなくなっているような気がして、暗くなっていってます。事件に巻き込まれていくことにより、人間の陰の部分が見えていく。特に予告編の後半(「その≪出会い≫が〜の文字以降)、ほとんどのカットが暗めなんです。唯一明るいのはレコードあさってるシーンかと。(あのレコード店、友達と一緒に行ったことがあって、テンション上がりました)
変わらずに日常は進んでいくけど、それと並行して何かが発生している状態。光が当たるということは、同時に陰も発生している。

【とにかく見てほしい】

ほんとはもっと詳しく書きたい、書きたい、という念が強いのですが、これ以上書くとどうしてもネタバレに触れていないといかないので、今回は泣く泣くここで筆を置くことにします。
とにかく観てほしいです。
色の演出て細かいところまでやっているんだよ、この映画、色もすごいんだよ!!
という私の語彙力のない思いが、誰か1人にでも届いてくれたら嬉しいです。
正直本編観る前に書けばよかったー!

映画マッチング、監督やプロデューサーが「ぜひ続編を!」と言っているので、もしちょっとでも興味を持ったのならば、行ってみてはいかがでしょうか。

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