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笑の大学

PARCO劇場で上演されている『笑の大学』を観劇してきたよ。

小学生か中学生の頃、何故か授業で映画版を見たのだけれど、その時すごく自分の中で印象に残ったこの作品が以前舞台上演されていた時とキャスティングを変えて、しかも私の大好きな作品(『おかえりモネ』『きのう何食べた?』)に度々出演されている内野聖陽さんと、『鎌倉殿の13人』でトキューサを好演していた瀬戸康史くんで上演されると知り、迷わずチケットを確保。

時は戦時色濃厚な昭和15年。
登場人物は、警視庁検閲係・向坂睦男(さきさかむつお)と劇団「笑の大学」座付作家・椿一(つばきはじめ)。
非常時に喜劇など断じて許さないとする向坂は、上演中止に追い込もうと執拗なまでの注文を繰り返す。しかしなんとか上演許可をもらいたい椿は、向坂が要求する無理難題を逆手に取りながら、あくまで真正面からの書き直しに挑戦する。
警視庁の取調室を舞台に、相対する男二人のドラマが始まる。
公式ホームページより

映画版でも基本そうなのだけれど、登場人物は2人だけで場面も取調室のままひたすら会話のみで進んでいくのに、決して単調になる事無く約2時間もの間観客を飽きさせないのは脚本の妙も勿論だけれど、何よりそれを演じる俳優お2人の技量に尽きると思う。内野さん演じる向坂(映画版では役所広司さん)は至極厳格だけれどだからこそ修正する度に脚本を面白くしてしまう可笑しさ、瀬戸くん演じる椿(映画版では吾郎ちゃん)の向坂の無理難題に毎度振り回されながらもただひたすらに面白い芝居を目指すひたむきさ、各々が熱演されていた。何より2人のリハーサルシーンは爆笑必至。向坂家に突如やってきた迷い烏の武蔵のエピソードもたまらない。演者2人が巻き起こす笑いの渦に始終引き込まれてしまうのだけれど、そこは矢張り時代背景もあり終焉は突如やってくる。あの当時、絶対に口にしてはならなかった言葉で椿を送り出す向坂。最終日に取調室に入ってくる椿の表情と、最後に1人取調室に取り残される向坂のシーンは、両名の圧倒的な演技力に魅せられた。

そうそう、開演前の注意事項のアナウンスは脚本家の三谷幸喜氏自らも行っていた。三谷さんらしく会場全体が思わず笑いに包まれるような内容なのだけれど、それも最終的にラストシーンの伏線だったのかと思うと感慨深い。とても良い舞台を見させていただきました。改めて生の演技って素晴らしい。