赦し
※ネタバレを含むので鑑賞予定の方はご注意。
娘を殺された元夫婦と、犯行時に未成年だった加害者女性の葛藤を通し、魂の救済というテーマに真正面から挑んだ裁判劇。
17歳の福田夏奈は同級生の樋口恵未を殺害し、懲役20年の判決を受ける。7年後、恵未の父・克と、別れた妻・澄子のもとに、夏奈に再審の機会が与えられたとの連絡が入る。娘の命を奪った夏奈を憎み続けてきた克は、澄子とともに法廷で裁判の行方を見守ることに。夏奈の釈放を阻止するべく証言台に立つ克と、つらい過去に見切りをつけたい澄子。やがて夏奈は、7年前に自分が殺人に至ったショッキングな動機を告白する。
「義足のボクサー GENSAN PUNCH」の尚玄が怒りと憎悪にとらわれた主人公・克を熱演し、「台風家族」のMEGUMIが元妻・澄子、「眠る虫」の松浦りょうが夏奈を演じる。長編第2作「コントラ KONTORA」が国内外の映画祭で注目を集めた日本在住のインド人監督アンシュル・チョウハンが監督を務めた。
まあショッキングな理由っていうのは予想通り「いじめ」なんですけどね。いい加減この表現どうにかならないものかね。『MIU404』で桔梗さんも苦言を呈していたように、内容としては名誉毀損・器物破損・窃盗・脅迫・傷害等でそれぞれ刑法で罰せられる行為なのだから、加害者を自覚させる為にも曖昧な表現は避けるべきじゃないのか。(「性的いたずら」も同様。)
そんな加害行為の「加害者」である娘の恵未が、「被害者」である夏奈に殺された事により殺人の「被害者」へとすり替わり、夏奈は「加害者」となる。犯行当時未成年であった夏奈に対して下された懲役20年という判決は重過ぎるとして、再審の場が設けられる。果たして人を殺して20年服役する事は「長過ぎる」のか、犯罪者の「更正」を重んじるべきなのか。裁判は判決を出すけれど決して100%の正解を示される訳ではなく、被害者や被害者家族の落とし所を見つける術でしかないのだなと痛感。
被害者遺族給付金で生活を成り立たせる父親の克を責めるようなシーンもあったけれど、被害者家族は常に誠実に清廉に悲しみ続けなければならないようなイメージを持たれるよね。勿論大きな出来事なのだけれど、その人の人生はそれだけじゃなくてその後にも別の悲しい事や楽しい事が続いていく。ラストでそれを見出した克。それでも矢張り殺されてしまった恵未にはそんな未来は無い。死んでしまったらそこで終わり。克が夏奈に放った「お前が死ねば良かったんだ」という言葉、もし私が克と同じ立場に立ったとしたら加害者にこの言葉を言わずに居られるだろうか。
「私がもっとちゃんとしていればあの子死ななかったかもしれない」と泣き叫んだ母親の澄子は、恐らく恵未が加害者側に立つような子であった事を解っていたんだろうなと思う。その結果、娘は殺されてしまった。加害行為をした人間は殺されて当然、なんて事は決してない。どんな人間であろうと「殺したら負けなんだよ」って伊吹も言ってたよ。ただのMIU語りになってきたな…。
澄子役のMEGUMIさんもさる事ながら、澄子の再婚相手役のオリラジの藤森さんも良い演技してたのでその辺も見る価値有りかも。