電子レンジを加熱終わってそのままにしていたらピーピー鳴るみたいに

広いリビングでひとり寂しく冷凍食品の担々麺をすすっていると、おにぎりにして持っていくご飯の解凍が終わったらしく、電子音のメロディが耳に入ってくる。すぐ必要ではないので食べ終わってから取り出せばいいやと放っておく。すると電子レンジは何度も音を鳴らす。「早く取り出して」と僕を呼ぶ。この瞬間この世界に僕に意識を向けているたったひとつの存在。何がそんなに心地悪いのだ。立派に箱の形をしているくせにものが入っているのを嫌うのか。誰かの手を借りないともとに戻れないなんて、本当にしょうがないやつだな君は。しばらく放っておくとこちらを呼ぶのを止めてしまうのを知っている。だから、音がな鳴っているうちに、できれば鳴っている瞬間に扉を開き、この手でメロディーをぶつっと切る。振り返るとほとんど事務連絡しか声に出していない今日、これが唯一の「会話」だったかもしれない。

冷蔵庫。あいつを開けっぱなしにしたときも結構呼んでくる。でもあれはなんか怒られてる感じがする。確かにこっちが大分損するのを防いでくれてるのでありがたいのだけど。

洗濯機やポットの作業終了のお知らせ、電子レンジの出来上がり第一声は義務で鳴らしているのを感じてあたたかくない。鳴らしているより"鳴っている"。

とするとやっぱり電子レンジの「早く取って!」はとても気持ちのこもった音だ。いずれ鳴らさなくなるくらいだから、そんなに切実な叫びではないけどそれでもなにか伝えようとしている。プログラム上は決まっているのだろうけど、こっちからしたらいつ鳴るかわからないのも生きている感じがする。

これからも、君が(僕が)寂しいときは僕を呼んでね。

Call Me by Your beep.

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