映画レビュー『KOTOKO』(2011)


ストーリー

「鉄男」「六月の蛇」の塚本晋也監督がシンガーソングライターのCoccoを主演に迎え、苦しみもがきながらも愛する息子を育て、懸命に生きるひとりの女性の姿を描き出したドラマ。ひとりで幼い息子の大二郎を育てる琴子は、世界が“ふたつ”に見える現象に悩まされ、歌っているときだけ世界が“ひとつ”になる。神経が過敏になり強迫観念にかられた琴子は、大二郎に近づくものを殴り、蹴り倒して必死に息子を守っていたが、幼児虐待を疑われて大二郎と引き離されてしまう。そんなある日、琴子の歌に魅了されたという小説家の田中が現れるが……。2011年・第68回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門で、同部門の最高賞にあたるオリゾンティ賞を受賞した。(映画. comより)


苦しい。
生きることはあまりに苦しい。
言葉ではなく、それを人と映像と音楽で見事に表現してしまっている。
そしてそれは圧倒的なリアルである。
どっちが作りモノの世界なのか、何が本当か、そんなことに答えはない。
「逃げ恥」が好きな僕に見えているこの世界もリアルだし、
彼女たちの瞳に映るその世界もまたリアルだ。
キラキラした装飾で飾り付けられた部屋も、どこか遠い地で行われている戦争も、家族での団欒も、どんなに暴力をふるってもそばに居続けてくれる人も、いい母を演じるのも。そして流れる赤い血も。真っ白な世界も。

だけど、それでも人生は「生きろ」と言う。
だとしたら、たとえ狂気の沙汰だと思われようと、
世界がひとつになって見えるもの、
この世界に命をつなぎとめるための何かと、
出会うために生きてゆきたい。

とはいえ決して観ることをお勧めはしない、でも素晴らしい映画だと思う。

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