仏国在住者ulalaさんの価値ある指摘「自民女性局がフランスで見るべきだったもの」

 フランス在住の著述家ulalaさんが、ラジオ番組『文化放送 おはよう寺ちゃん』(8月14日5:00放送)において、自民党女性局のフランス研修に関してコメントを発信しました。
ulala(フランス在住 著述家) 【公式】おはよう寺ちゃん 8月14日(月) - YouTube

当該研修が問題視されてからここまで2週間、200を軽く超える報道がなされ、多くの人が批判を展開しましたが一つ一つは皮相的な指摘の繰り返しであり、あまり有意義な声ではありませんでした。
しかしこのulalaさんだけは違いました。「ulalaさん」とは、フランス在住で家庭を営み、IT技術者として男性優位社会を生き、仕事と子育てを両立させている著述家です。そのためフランスが現在直面している、最新の深刻な社会問題を知り尽くした貴重な日本人であり、それを的確に日本社会にフィードバックしている方です。
このラジオ番組でのコメントは、まさに彼女にしかできない真に傾聴に値する指摘でした。
そこで、当該テーマに関する部分を文字起こしの上記録として残します。
(※ 途中の小見出しは筆者が内容整理のために付与した。)

テーマ:「自民党女性局がフランスに出向いたフランス少子化対策の現状」

寺ちゃん(以下MC):
“自民党女性局のフランス研修について、素直な感想は?”

Ulalaさん(以下ulala):
“本当にダメですね。トップに立つ女性としてもダメですし、研修の内容もダメですし、SNSにアップする画像も誰の利益にもならないような。すべてを台無しにしていると思いました。”
“エッフェル塔とかいいんですよ。言ってみれば社員旅行みたいなものではないですか。でも一応「研修旅行」を前面に出しているにもかかわらず、「みんなが良いって言っているから学んできました」みたいな内容で、「それくらいの内容は日本でも学べるし、かかった費用でそれ以上の価値生み出せるんですか?」と素人ながらも心配になってしまう内容でした。”
“現状を見ないで「これがいいですよ」って人が言っていることに流されて行って、それに従って行ってきました、みたいな。そういうところが「女性の弱点を体現している」かのようです。”

フランスは少子化対策に成功している国なのか

MC:
“フランスと言うと、イメージですよ、「出生率が高くて少子化対策に成功している国」というイメージがあるんですが、近年出生率は低下傾向にあるみたいですね。”

ulala:
“低下しています。過去30年間のフランスの出生率を見ると、90年代から2000年代にかけて回復したあとに、低下し続けているんですね。今出生率は1.8まで下がっている。”

かつて出生率が上がったのはベビーブームに乗れたから


ulala:
“出生率が上がったのはベビーブームに乗ったからなのです。それにうまく乗らせるのに補助金とか凄く良かったのかもしれないですけど、落ちてきているということは「補助金」は持続性がある対策ではないのですよね。
多分25年前に日本がやったら、日本はバブルが弾けてベビーブームに乗れなかったので、少しでも補助金があったら少しだけでもベビーブームにのれたかもしれないですけど、今同じことをしようと思っても私は意味がないと思いますね。”

MC:
“日本でよく取り上げられていたフランスの少子化対策・子育て対策、「フランスは成功した国です」みたいな。こういうところの理由として「子育て支援に対する公的支出が日本よりも多い」ですとか「結婚せずに子供を作れる仕組みが整っていて婚外子が多いことが出生率にプラスになっている」とか「子供が多い世帯ほど所得税が軽くなる『N分N乗方式』を採用している」とか、こういったことが挙げられているんですが、出生率が下がってきている背景なんですが、これはulalaさんは何かお感じの部分ありますか?”

フランス出生率は補助金で盛り上がってきたわけではなかった


ulala:
“ベビーブームが終わったから下がってきていて、補助金で盛り上がってきたわけではない、ということですね。フランス人同士のカップルの話を聞いていても、フランス人同士のカップルって出生率が凄く減っているんですね。「二人目を育てる余裕がないから二人目はいらない」というカップルがいるんですよね。確実に手当なんか功を奏していないじゃないですか。
凄く子沢山の家というのは裕福な家だったりとか、あと移民の家では奥さんが家庭にいて子供を育てるという環境が整っているので、そういう移民の方とか、そういう方は凄い多いですけども、普通の堅実なフランス人カップルでそんなに子沢山の人はあまり最近いないですね。でも離婚すると「前の奥さんとの子が二人いて、今の奥さんとの子が二人いる」というとこはいっぱいありますけども…。”

今フランスは、少子化よりも恵まれない郊外問題が深刻

MC:
“となりますと、『フランスも今では少子化対策苦慮している』という感じでしょうか?”

ulala:
“そうですね、そこまで(少子化対策を)最近はしていないって感じですね。現在は、「少子化対策」っていうよりも、すでにいる人材を働けるように教育することに熱心だと思います。「恵まれない郊外に住んでいる若者」っていうのは教育もちゃんと受けていなくて失業率が高いんですね。そこで学校を退学になったとしても18歳までは何らかの教育を受けることを義務付けることにしたりですとか、あと亡命を希望する人のなかで、レストランやホテル業で働くことを希望する人っているのですけども、そういう方たちには滞在許可証を取りやすくしようとしていたりします。この点って今日本がやっていることと重なる部分があるんですけども、それを今フランスがやっているっていうことですね。”
 

どうすれば、研修を実りあるものにできたか

MC:
“そうすると自民党の38人、うららさんからみてこの研修、どうすれば実りあるものになって人々が受け入れたと思いますか?”

ulala:
“もっと違う発想で違うところを見てくるべきだったと思います。これは彼女たちだけの問題ではなくて計画を立てた人が一番悪かったと思いますが、例えば「めぐまれない郊外」を見てくるとかそういうところを…。今日本だって移民とか問題になっているわけじゃないですか。そういう点について(フランス)はものすごい「先進国」ですから、そういう点を学ぶことに価値があったと。”

ulala:
“(日本がこれから取り組もうとしている「外国人との共生」は)フランスはもうやっていて「どんな弊害があるのか」、「どんな問題があるのか」を聞いてくるべきだったのではないかと思います。”

ulala:
“「フランスの格差や分断がいかに国をダメにしているのか」を本当に確認してくるべきだったと思います。日本も同じことをすれば同じ結果になることがありますから、フランスからは学んできたほうがいいと思います。”

少子化対策は「結婚に拘らず、まずはカップルになれる体制を整えること」

MC:
“日本でも大きくなっている「まずは結婚を促進していくことなんだと。経済的な不安感でそれが萎縮…」”

ulala:
“カップルになると助け合えるので経済的な負担も減る。結婚に拘らずまずはカップルになることを促進して、それで生活してゆくという体系を作ることが大切だと思いますし、それでプラス子供も生まれてくると思いますから、そういうのがもっと容易にできる体制を作って行くことが大切かなと思います。”

(文字起こしおわり)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?