「希望出生率1.8」の定義と計算

※     本稿は、定義の整理・記録のための記述である。

一億総活躍社会の実現を目指し、政府は「希望出生率1.8」を目標の一つに掲げている。この「希望出生率」は「合計特殊出生率」などとは全く異なるコンセプトである。
大胆に表現すれば「有配偶者及び未婚女性が希望する通りにこどもを儲けることができた場合に実現する出生率」といったあたりになると思われる。

正確な定義と具体的な「1.8の諸元データ」は下記の通り。

「希望出生率」の定義
内閣府資料における式の定義

(希望出生率)=(有配偶者割合×夫婦の予定子ども数+独身割合×独身者のうち結婚を希望する者の割合×独身者の希望子供数)×(離死別等の影響)

この内閣府が公表している算定式は日常語が長く、見にくい。各定数の定義も細かく注釈を見ないと漠然としか理解できない。また、数値の出典元となった各調査を読んでいないと意味が分かりにくいと思われる。(筆者はたまたま既読。)

日常語の長い文章による立式では構造を見通しにくいので、各定数に(筆者が)記号を付けた上で式に代入し、構造を少し見やすくしたのが下記となる。

(希望出生率)=(Mr × Ec + Sr × Emr × Es )× Id


これでも十分見にくい。
各定数の記号の意味は以下の通り。

Mr=(有配偶者割合)=(総務省統計局国勢調査における「18歳~34歳の
   有配偶者の割合」。平成22年調査では「33.8%」(女性))
Ec=(夫婦の予定子ども数)=(国立社会保障・人口問題研究所
  「出生動向基本調査」における夫婦の平均予定子ども数。
   平成22年・第14回調査では「2.07人」。)
Sr=(独身割合)=1-(有配偶者割合)=1-M
Emr=(独身者のうち結婚を希望する者の割合)
 =(国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」における
   18歳~34歳の独身者のうち「いずれ結婚するつもり」と答えた割合。
   平成22年・第14回調査では「89.4%」(女性)。)
Es=(独身者の希望子供数)=(国立社会保障・人口問題研究所
  「出生動向基本調査」における18歳~34歳の独身者のうち
  「いずれ結婚するつもり」と答えた者の平均希望子ども数。
  平成22年・第14回調査では「2.12人」(女性)。)
Id=(離死別等の影響)=(国立社会保障・人口問題研究所
  「日本の将来推計人口」における出生中位の仮定に用いられた
  離死別等の影響。平成24年1月推計では「0.938」)

これに1.8の算定根拠となった各実数を代入すると次の通り。

(希望出生率)

=( Mr × Ec + Sr × Emr × Es )× Id
=(0.338×2.07 +0.662×0.894×2.12 )×0.938
=(0.6996…+1.2546…)×0.938
=1.83…
≒1.8


第1部 少子化対策の現状(第2章 第2節): 子ども・子育て本部 - 内閣府 (cao.go.jp) より引用
 
(おわり)

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