参議院外交防衛委員会 松川るい委員 (文字起こし)

質問者:松川るい委員
日 時:2023年5月9日
参議院インターネット審議中継 (sangiin.go.jp)

5月9日に実施された参議院外交防衛委員会における松川るい委員の質疑について、文字起こししました。(挨拶や発語など、話し言葉特有の細かい表現は省略しました。)

松川るい委員:

本日国家安保戦略ということですが、質問の前に自分の問題意識をちょっと述べさせて頂きたいと思います。日本という国は歴史を振り返ると、何回か、本当の大きい危機に直面した時に、自己変革をしてきたと思うんですね。
1番最初は663年の白村江の戦い、でありまして、当時は倭という国でありましたけど、倭と百済の連合軍が唐と新羅の連合軍に、朝鮮半島まで行って戦って大敗して、負けてその後どうしたかというと、律令制を敷き、防人を九州に置き、名前も倭から日本に変えて中央集権化というか国の形を作った。二つ目は明治維新でありまして、鎖国していたのを開国して、近代化、富国強兵をして、日本の発展を作ったと。
その後日本の国の形を大きく変えたのは、正直敗戦、で占領期の政策、平和憲法と呼ばれるものもその残滓だと私は思っておりますけども、それは自分で選んだわけじゃない、仕方なく敗戦でそうなったと。
私は今回の国家安保戦略は、日本という国が自分の足で立つ国になる、自分の国は自分で守る、こういう国になって行くための非常に大きな一歩だという風に意義を感じております。
もう一つは、ウクライナ侵略と、それから米中対立によって、時代がこれはもう政府も指摘している通りでありますけど「危機の時代」に代わったと思うんですね。その時に残念ながら「国際リベラルインターナショナルオーダー」と言われる国際秩序はやっぱり後退していて、「パワーポリティクスの時代」になっているんだという現実に直面しなければならない。そうすると日本の地図を頭に思い浮かべて頂くと、私改めてこの戦後の平和な時代はあまり関係なかったと思うんですが、九州から3時間しかヘリで離れていない韓国、まあ朝鮮半島の南側と、あと「第一列島線」の日本のすぐ隣に位置している台湾っていうのが、台湾と韓国というのが地政学的に極めて大切だと思うんですね。そういう前提にたって今日質問させて頂きたいと思っています。

一昨日まさにその韓国に、シャトル外交の返礼ということで早速、私が思っていた以上に早く、岸田総理がいかれました。とても良かったと思っています。これで日韓の正常化の改善の軌道に乗ったな、という感じもしております。この総理の訪韓についての成果について、如何思っていらっしゃるか、ご説明を頂きたいと思います。

林外務大臣:

今般の岸田総理大臣の韓国訪問でございますが、日本の総理大臣による韓国への二国間訪問としては約12年ぶりに行われたものであり、3月の首脳会談の際に両首脳が再開で一致したシャトル外交、これ本格化するものでございます。首脳会談を通じまして、首脳間の信頼関係を更に深めるとともに政府間の対話の活性化が順調に進展をし、日韓関係の改善の動きが軌道に載ったということを確認することができたと考えております。また、日米韓連携につきましても、両首脳が地域情勢について意見交換を行いまして、特にこの北朝鮮の挑発行為が継続する中で、日米同盟、韓米同盟、そして日韓、日韓米の安全保障協力によりまして、抑止力、対処力を強化することの重要性について一致をし、更にG7広島サミットの際に、日韓米首脳会合を開催しまして、更に議論を深めることとしたところでございます。

松川委員:

実は私この連休中にワシントンDCも訪問させて頂きまして、外交防衛それから議員の方々いろいろお目にかかりました。その時に、今林大臣もご指摘されたように日米韓連携ですね、「ようやく仲の悪かった日本と韓国が正常化したおかげで日米韓連携が非常にこれから厳しい北朝鮮、それから台湾海峡への圧力が増す中でやっていけることを歓迎する」ということをこちらが聞く前に異口同音におっしゃったのが非常に印象的でございました。

私その日米韓連携というときにですね、これあの韓国の人にあった時にいつも言っているんですけど、北朝鮮は当然なんですけど韓国にとっても、でも私は台湾海峡の有事、台湾有事の抑止が当面の、日本にとっても地域にとってもボトムラインとしての最大の外交安全保障上の課題だと思うんですけど、韓国の方が困るんですよね、台湾海峡有事は。なぜかというと、対馬海峡と台湾海峡を通らないで韓国に物資は到達しないからであります。日本は西太平洋を迂回すれば別に時間一週間くらい余計にかかりますけど、別にエネルギーであろうが物資であろうが日本に到達できるんですけど、そういう意味で私は、韓国への地域の貢献について期待するところの中にぜひG7のサミットもありますので、「台湾有事の抑止」「台湾海峡の平和と安定」へのコミットメントをもう少し高めて頂きたい、という意識を持っております。その点について外務大臣のご見解をお伺いします。

林大臣:

韓国は国際社会における様々な課題への対応に協力して行くべき重要な隣国です。特に北朝鮮への対応を含めて現下の戦略環境を踏まえますと、日韓日米韓で緊密に連携していくということの重要性は論を待たないところでございまして、今委員からお話があったとおりでございます。7日の日韓首脳会談でもですね、この先ほど触れた北朝鮮の挑発行為とともに、この地域における力による一方的な現状変更の試みが見られる中で、日米同盟、韓米同盟、日韓、日韓米の安全保障協力により、抑止力と対処力を強化することの重要性について改めて一致を致しました。また自由で開かれたインド太平洋の推進やウクライナ情勢等ですね、国際社会が直面する諸課題、についても意見交換を致しまして、緊密に協力していくということで一致をしたところでございます。こうした日韓首脳間で共有されました認識に基づいて、韓国側とは引き続き緊密に意思疎通をいたしまして具体的な連携や協力を進めていきたいと考えております。

松川委員:

更にですね、私第一列島線連携というのを作って頂きたいなと非常に思っております。自分の国は自分で守るという意識は大事ですけど、結局、一国では守れないのでそうするとやはり同志国の連携が必要なんですけど、中でも特に台湾有事のことを考えた場合には、韓国・日本・台湾・フィリピン・ベトナムそしてインドネシア、でまた豪州という、このシーレーンを守る立場にある第一列島線国の連携というのは極めて大事だと思っております。その時にミッシングリンクは台湾でありまして、台湾とアメリカは話しているけど、日本と台湾は安保関係はあまり連携もありませんし、フィリピンと台湾もたぶんないと思うんですけど、今後の日本の外交防衛政策の課題の中でぜひこの「第一列島線連携」というのをお考えいただきたいということを申し上げたいと思います。ちょっと時間の都合でこれはもう要望だけにしておきたいと思います。

もう一つですね。今回拡大抑止ということが、米韓首脳会談でも非常にとりあげられてワシントン宣言が出されたところです。「ニュークリアコンサルテティブグループ(NCG:核協議グループ)」という、これは日米でもやっている拡大抑止協議とたいして違いはないと思うんですけど、やはりあの2月にやったテーブルトップエクササイズですね、これ北朝鮮が核を使用することをもう想定したうえでの机上演習だったと思いますし、もう一つは原潜の寄港ということなんですけど、日本の拡大抑止についてもぜひあの、少なくともこのテープルトップエクササイズっていうのは踏み込んでやって頂くということも含めて更に強化して頂きたいと思いますが、防衛大臣のご見解をお願いします。

浜田防衛大臣:

米韓間で拡大抑止の強化に関する議論が行われることは日米間での拡大抑止の強化に向けた取り組みとも相まって地域の平和と安定に資するものであると考えております。日米間では2010年以降、定期的に日米拡大抑止協議を実施する中で核抑止を含む拡大抑止の維持強化に向けた取り組みについて議論をしてきております。またこれまで事務レベルで行ってきた、日米拡大抑止協議に加え、1月の日米2+2では、拡大抑止を議題の一つとしてまとまった時間をとって突っ込んだ議論を閣僚レベルでも行い、米国の拡大抑止を支える戦略体制についてわが方の理解を深め、またわが国の考え方について改めて米側に伝えております。引き続き拡大抑止協議および、1月の日米2+2でのやり取りのような様々なハイレベルでの協議を通じ拡大抑止の強化に向けた取り組みを進めて行きたいと考えております。

松川委員:

ぜひ机上演習の実施も含めてやって頂きたいということを改めてお願い申し上げます。
あとまた原潜寄港というのはセンシティブなこともありますけど過去の答弁においても岡田大臣のおかげで本当に必要な時にはこれは当然その時の内閣が決断するということも言っているということもご指摘しておきたいと思います。

次に防衛装備移転についてお伺いしたいと思います。国家安保戦略で正にあの、防衛産業の維持強化、ということは国が前面に立って官民連携で、ですね、守っていかなければならないという重要な分野だということが示されたことを私は非常に高く評価をしております。またその際に防衛装備移転ができるということは非常に防衛協力の深化、その防衛装備品を移転した先の国との防衛協力を深化させる上でも、日本の安全保障にとっても大変有益でありますし、また防衛産業が「顧客は自衛隊、以上」、ということではなくて、移転先があるということは、非常に維持をするうえで不可欠だと思っておりますが、残念ながら、防衛装備移転3原則の制約が大きすぎるという問題がございます。事実上、ほぼ禁輸状態に置かれていると言っても過言ではないんじゃないかと。
このお配りした資料が非常に視覚的にわかりやすいんじゃないかと思っております。これはもともと内閣参与でありました宮川大使が作られた資料でありまして、ご許可を頂いて配布をさせて頂いております。これですね、移転を原則として禁止している場合というのはこれは割と当たり前、国際約束に反する場合、安保理決議に反する場合、紛争当事国はダメ、これは割と当たり前、どこの国でも割合ある原則でございますけど、じゃそれ以外だったらいいのか、っていうとそうじゃないんですね。
それ以外の場合を極めて運用指針において絞っております。で運用指針はちょっと細かいので全部説明するときりがないんですけど、「我が国と安全保障協力関係にある国、つまりその国と連携が深まった方が日本の安全にとって資する国であっても、そこに出していい装備品というのは、救難・輸送・警戒・監視・掃海というこの5分類にあたるものしか駄目だよ」、ってなっているんです。これは「八百屋に行ったら5種類しか野菜がない」と。そんな八百屋に皆さん買い物に行きますか、ていう話。もうちょっと言うとですね、これ宮川大使のその表現を私が自分バージョンに変えて言うと、「日本に来ていいよ、世界の皆さん日本に来てください!」といいました。「わかった、日本に行ってどこに行ってもいいのかな」と思ったら「大阪しか行っちゃダメですよ」と。「じゃあ大阪だったらどこでも行っていいのかな」と思ったら、これが黄色のところですよね、違うんですよ、緑だけなんですよ。「梅田だけです。」「えっ、難波ダメなの?」みたいなこんな話なんです。これくらい絞られているんです。
これはね、自衛隊法もそうなんですけど、日本の良くない癖で、ポジリス式(Positive List)なんです。もう「ポジティブリスト思考」を変えるべきなんです。私は今回の防衛装備移転三原則の中の運用指針をまあ変えるんでしょう。与党協議中だと思うんですけど。ぜひですね、この「ポジリス5分類から1分類増やしました」とか「2分類増やしました」とかね、そういうやり方をぜひやめて頂きたい。そうではなくて、日本の安全保障に本当に資するかどうか、それだけを本来基準にするべきだと考えております。防衛大臣のご見解をお願い致します。

浜田防衛大臣:

委員ご指摘の点についてですね、現在の防衛装備移転三原則の運用指針では、国際共同開発生産による場合を除き、完成装備品の移転を認め得るのは基本的に救難・輸送・警戒・監視および掃海、いわゆる5類型に該当する場合に限定をされております。この点について、2014年に防衛装備移転三原則や運用指針が作成されて以降、約9年の間に完成装備品の移転の実績としてはフィリピンへの警戒管制レーダーの移転1件にとどまっていることは事実でございます。その上で、国家安全保障戦略に記載している通り、防衛装備品の海外への移転は我が国にとって望ましい安全保障環境の喪失や国際法に違反する侵略を受けている国への支援などのための重要な政策手段となり得ます。防衛装備移転三原則や運用指針をはじめとする制度の見直しについてはこうした観点から関係省庁と共にしっかりと議論を進めてまいりたい、と考えております。

松川委員:

ぜひあの、これは我々国会議員の方も頑張らなければいけない話だと当然思っているんですけど、やはり今回、国家安保戦略、そしてまあ、その他の2文書も含めて、防衛装備移転三原則及び運用指針を改定するという非常に重要なタイミングに来ていて、昨日私IHIの瑞穂工場に行ってきたのですが例えばF15のエンジンがこれから退役あと100機位していきますから、200個分くらいF15使っている国とかに出せると。でも、今はエンジンすら出せない。とか、エンジンの整備をするために他の国に出す、そして戻すってこれが輸出と輸入にあたって制限がかかるからできないとかですね。あらゆる鎧を三重四重に着ているのが今の日本なんですね。これは、今回を機に一気に変えなければ私は日本という国がこの厳しい安全保障環境の中で本当に自分の独立と平和と繁栄を守ってやっていけるのかと、非常に危機感を持っておりますので是非、防衛大臣外務大臣にも、我々も頑張りますけども、是非よろしくお願いしたいということを申し上げたいと思います。

G7サミットが間近でございますので、G7サミットにおきまして、もちろんロシアによるウクライナ侵略への対応も大事ですけども私ども日本にとりましてはやはり台湾海峡の平和と安定ということが非常に地域的には大事なことであります。このG7サミットには、インドそれから韓国で島嶼国も含めて様々、日本が大事だと思う国を招待されていると思います。ぜひですね、このG7サミットの場におきまして、ウクライナとともにですねこの台湾海峡の平和と安定というのを改めてもう一歩具体的な形で、こうして多くの国のコミットメントをするものとして確立をしていただきたいと希望しております。この点に関しての意気込みやご見解を外務大臣にお伺いしたいと思います。

林外務大臣:

台湾海峡の平和と安定はわが国の安全保障はもとより国際社会全体の安全と繁栄にとっても重要でございます。わが国の従来からの一貫した立場は、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待する、というものであります。この点これまでも米国やG7との間で台湾海峡の平和と安定の重要性について一致しておりまして、先般のG7外相会合においてもこの点を再確認を致しました。わが国としてこうした立場を中国側に首脳レベルを含めて直接しっかり伝えると共に同盟国同志国と緊密に連携しながら、各国共通の立場として明確に発信して行くということが重要でありまして、今後ともこのような外交努力を続けてまいります。その上でG7広島サミットこれアジアで開催するということも踏まえまして中国など東アジアを含むインド太平洋地域情勢についても首脳レベルでもしっかりと議論するということが重要であると考えております。お触れ頂きましたように今回G7首脳に加えて韓国、そして豪州を含む8か国の首脳も招待することとなっておりまして、国際社会が直面する様々な課題への対応を中心に有意義な議論が行われるということを期待しておるところでございます。

松川委員:

日本はG7唯一のアジアの国でありますし、中国は非常に重要な、地理的に永遠に変わることのない隣国ですので、ボトムラインとしてやはり紛争がおこらないということを確保する上でもですね、対中外交を建設的かつ安定的なことにしてゆく上でも非常に今回重要なG7だと思います。大臣のご活躍を期待しながら質問を終えたいと思います。

私がいつもリストアップしている副大臣の活用と外務大臣をもっと外交に活用しろ、というこの質問はですね、毎回入れ続けておりますけど質問する時間がいつもないんですけど、気持ちは汲んで頂けたと思っております。ありがとうございました。


(おわり)

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