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ピート・シェリー/ルイ・シェリー『ever fallen in love-the lost Buzzcocks tapes』(22)

ホワイ・キャント・アイ・タッチ・イット?

Why can’t I Touch It?[1]

 

「エヴリバデイズ・ハッピー・ナワデイズ」のB面

ソングライターズ:スティーヴ・ディグル、スティーヴ・ガーヴェイ、ジョン・マーとピート・シェリー

レコード内溝のメッセージ:「触るって何を?」

 

創作はどこで、いつ?

 

スタジオ入りする何日か前に、TJ‘sで練習していた。-ジョイ・ディヴィジョンの部屋と言われてる所でね。マンチェスターのリトル・ピーター・ストリートにあったけど、今は取り壊されてしまった。「Love Will Tear Us Apart」のヴィデオのオープニングで、落書きされたドアが開き、倉庫に導かれるシーンがあるだろう?あそこが僕らの練習場で、「ホワイ・キャント・アイ・タッチ・イット?」が生まれた場所でもあるんだ。

 銀行に金を降ろす用があって、その足でスタジオに戻るときに「本物の姿に見える、本物の味がする、本物の音に聞こえる」という言葉が思い浮かんだ。スタジオに戻ると同時にその言葉を書き留め、全員で音出しを始めた。ジャムさ。これがバンドのあるべき姿なのさ。僕は歌い始めた。「本物に思える、本物に見える/それなのに、触れられないのは何故?」「何故?」本源的な問いかけだね。その時々でいろんな心の移ろいがある。「エヴリバデイズ・ハッピー・ナワデイズ」を補完する意味もある。「ホワイ・キャント・アイ・タッチ・イット?」が求めているのは理解すること・・・・そう、ヒッピー的思考を、だね。

 

レコーディングで何か記憶にあることは?

 

スタジオ作業は土・日の二日だった。[2]土曜の朝にはセット・アップを済ませてね。「エヴリバデイズ・ハッピー・ナワデイズ」をレコーディングし終えて、腹ごしらえをすることにした。ストックポートには旨いギリシャ料理の店があって、そこにはワインにウーゾーouzoにレチナretinaもたくさんあった(訳注:ウーゾーとレチナはともにギリシャの酒の名)。ほろ酔い気分で戻ってきてから「ホワイ・キャント・アイ・タッチ・イット?」のバッキング・トラックのレコーディングを始めた。「エヴリバデイズ・ハッピー・ナワデイズ」のようなトンガってイラついた、アンフェタミンで突進するって感じよりも落ち着いて和んだ、レイドバックしたノリになった。二~三時間でマーティンがとりまとめて完了させた。レコーディングの前日に曲を書き上げて、そこから全員、気合を入れたよ!スタジオでは集中して練習に励んで、ライヴもきっちりこなせるくらいに仕上げた。次の日はヴォーカルとほんの少しのオーバーダブをレコーディングしミックスをした。当時の僕らは仕事が早かった。

 

もう一つ別のタイトルがあると聞きましたけど。

 

何それ?

 

「Why Won’t You Touch It? 何故君はそれに触れようとしないの?」

 

いやいやいや!そりゃないって。どっから聞いたの?〔笑い〕

 

今もずっと「ホワイ・キャント・アイ・タッチ・イット?」を演奏してますね。

 

フェスで演るなら、「ムーヴィング・アウェイ・フロム・ザ・パルスビート」より「ホワイ・キャント・アイ・タッチ・イット?」の方がいい。「パルスビート」は小さい会場向きだね。「パルスビート」は難しいんだ。屋外で風が吹く所だとドラムが屋内よりもはるかに聴きとりにくいんだ。



[1] 「ホワイ・キャント・アイ・タッチ・イット?」はバズコックス・ファンのみならず、ミュージシャン関係者からも評価の高い一曲である。この曲は言葉に表せないもの,曖昧なもの、把握できないものを雄弁に語る。事実スポティファイにおいては「エヴァー・フォーリン・イン・ラヴ」に次いで二番目に人気の高い曲である。スティーヴ・ガーヴェイも以下のように語っている:「アメリカじゃすごい人気があるんだ。よく聞かれたよ。『なあ、どうやってあのゴキゲンなベースラインを思いついたんだ?』って。ノレる曲だよ。ペンシルバニア大やブリストル大のラジオ局じゃ、7分のフル・ヴァージョンがしょっちゅうかかってるよ」

[2] ジョン・マーの回想:「ミキシングの作業に立ち会ったのはよく憶えてるよ。『ホワイ・キャント・アイ・タッチ・イット?』のレコーディング中ちょっとヘマをやったから憶えてるんだ(ウーゾーのせいさ)。スネアを叩く場所を外しちゃった所があったんだよ。けどマーティン(ラシェント)が上手くやってくれた。そこのヴォリュームを上げたらちゃんとらしく聴けるようになったと言ってた。大したもんさ!