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森元斎(哲学者)×荒内佑(cero) 対談の感想

アナキズムやホワイトヘッドの哲学を研究されている森先生と、ceroの荒内さんがウェブで対談をやっていた。すでに内容はうろ覚えだが今のうちに感想をば。

そもそも対談をみようと思ったきっかけ

音楽好きだからceroの荒内さんの方に興味があったんでしょ、と僕を知っている人なら言うと思うけど、実は話を聞きたかったのは森先生の方で。森さんのことをなぜ先生呼びしているかというと、大学6年生(院生ではないよ)の最後の半年間だけ、実は森先生の講義を受けていたから。僕が卒業する一年前から、某猫だらけの地方大学に森先生はいらっしゃったのである。

森先生はそこで「思想史」を教えていて、ドゥルーズとか一部を除けばかなりアナキズム寄りで講義していた記憶がある。話が面白かったのですぐに大学の生協で『アナキズム入門』を買い、バクーニンや聖クロポトキンなど個性豊かなアナキストたちを知ったのでした。めでたしめでたし。

と、終わってしまえばよかったのだが、もっと大学で講義を聞きたかったとの無念から、卒業後も動向をそれとなく追っていて、今回ceroも好きなので久しぶりに森先生のトークを聞きたいと思ってウェビナーに応募したのだった。

人間のつながりはかくも偉大

対談の序盤は森先生と荒内さんのルーツから入ってceroの髙木晶平さんとの出会い、そこから付き合いとしてはしばらく空白の時間がありながらも森先生曰く「ソウルメイト」として意識していたという話だった。そこから荒内さんが森先生の『もう革命しかないもんね』の内容(畑で採れたもの=死んだものを吸収して生が成り立っていくといった話があるとのこと)に刺激を受けてソロアルバムのタイトル「Śisei」(=刺青)を考えたりと、実は荒内さんは森先生の本をかなり読んでいるということが判明したり(一方で森先生はceroや荒内さんについて、何となくアルバム出したんだね~くらいの認識だったらしい)。

それでも高校生の頃から20年も付き合いが続いているというのは何とも素敵な話だと思う。アナキストたちも各地にコミューンをつくって、必ずしも一つの場所や集団に対する帰属意識を強めるのではなく、比較的ゆるいつながりを複数もっている。この二人も常に一緒にいたわけではないけど、違う道を進んだからこそ今回のような対談もできるのだと考えると、人間のつながりはかくも偉大だなと思う。

対談のなかで、たまたまある時期に同じ空間にいた人々が各領域で活躍している、これは文化の土壌があったからこそだという話もあった。森先生めちゃくちゃ中高一貫教育で進学率上げようという考え方を批判してたわ。まったく納得したけれども、中高一貫校を出た自分としては(高校から通っていたので厳密には当てはまらないのだが)ちょっと悔しい気分になった。

ceroの歌詞にもアナキズム

話は飛ぶがceroのRojiという曲に、

いなくなった奴も何人かいるけど どっか他所で変わらずにいるだろうさ

という歌詞があって、何というかアナキスト的思考そのままだよなと思う。詳しくは知らないけれど、この曲が阿佐ヶ谷Rojiのことを歌っているのはほぼ間違いなくて、Rojiもそういう意味ではコミューンだよね。

ceroの曲でいうと他にもマイ・ロスト・シティーという曲はダンスをとめるな、という言葉が繰り返されてエマ・ゴールドマンを思い出さずにはいられないのである。

アメリカのアナキズムを代表するエマ・ゴールドマンが言ったとされる「ダンスができない革命なんていらない」という名言があります。(図書新聞 いつも心に革命を――われわれは「未開人」である

彼女のことも、森先生が某大学で栗原康さんを呼んで対談したときに聞いて初めて知った。このときは大学の教室で生徒なんかを集めてトークをしていたのだが、まあお酒がらみでちょっとした事件があったり。トークも深いのか浅いのか分からんかったので、今回荒内さんが本の内容をもってきて森先生に質問していたおかげで進行がスムーズだった。

荒内さんはすごく誠実な人という印象でした。

とにかく本を読んで音楽を聴いて

これが森先生の遺言であり、今回の対談のまとめでもある。過去に書かれた本もつくられた音楽も腐るほどあって、当たり前だけどそれをすべて読み尽くす/聴き尽くすことはできない。おそらく自分なんかが新しくつくれるものなんてないんじゃないかというくらい、すでに良い作品だらけの世界なのだ。

そして、それらを(森先生の言葉を借りれば)ディグる営みは、楽しくないはずがない。みんなもっと本を読め。音楽を聴け。そしたらもっと世界は良くなるぞ。とのことでした。細野晴臣も昔の曲や映画をひたすら漁ったりしているぞ、と。


余談ですが、森先生は長崎でコミューンをつくろうとしているとのことなので、帰省した折にはぜひお邪魔したいなあ。いつかこの記事を見つけてくれるだろうか。

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