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『ライオンのおやつ』 ~「9」死と隣り合わせにある誕生

数秘&禅タロット セラピスト tomokoです。
今日のお話は、ある命の物語と、「」について。

小川糸さんの小説、「ライオンのおやつ」。
本屋大賞2020にノミネートされ、NHKでドラマにもなった、心に深くやさしくしみる作品です。

両親を交通事故で亡くし、叔父が父代わりになって育ててくれた主人公・(しずく)。

育ての父が結婚するのを境に、高校生からたった独りで生きてきた雫は、33歳の若さで余命1カ月を宣告され、一時自暴自棄にもなるのですが、縁を得て、瀬戸内の島にあるホスピス「ライオンの家」にやってきます。

そこには、「ライオンの家」の経営者兼、看護師でもあるマドンナ、死を迎えるためにホスピスに滞在する人々、ホスピスでおいしい食事をつくる姉妹、島の葡萄畑で働く青年、ボランティアにやってくるセラピストたち、そこで以前亡くなった女性が飼っていた白い犬・立花(りっか)など、それぞれの命が瀬戸内の自然に抱かれて、最期の日々を紡いでいくものがたり。

小説「ライオンのおやつ」をイメージしたコラージュ

この小説に限らず、”ものがたり”は、生と死がテーマになっていることがほとんど。人生を描くのに、生きるということと共に、死を扱わないドラマはない、といってもいいでしょう。

数秘的に、「生と死」のテーマをハッキリと映し出す数の要素は「」です。

」でこの世に誕生し、「」でひとつのサイクルを手放して卒業する。
1~9、ひと桁の数字のラストを飾る「」は、あの世=死に一番近く、だからこそ全てを慈愛で包み込むような成熟した数。

数秘リーディングの観点からみると、「」が人生のテーマになっている場合、人間不信や諦念(ていねん・あきらめの気持ち)、老成の雰囲気と同時に、取り繕うことなど放念した、子どものような、または穢れのない赤ちゃんのような質を同時に持っていることを感じます。

医療従事者や治療家、介護福祉士や養護学校の教師、画家、音楽家、小説家、映画監督、俳優、また、職業ではなくても、苦しんでいる人・動物・自然環境に尽力し寄り添う方々など、深い傷を癒す役割を持った人に、この「」の要素を持つ人が多いように思います。

変容する蝶は、たましいの乗り物、とも言われます

数の流れの中で、「」は社会を表し、物質的世界の頂点、「」に入ると、その形が境界線を失い、目に見えない精神の世界へと溶け出し、天然自然へ回帰していきます。

また、ものごとの最期を迎える時には、それまでのことが走馬灯のように駆け巡り、ノスタルジックな気持ちが湧きあがってくることがありませんか?

たとえば、愛した人と別れる時、馴染んだ土地を離れる時、青春を過ごした学校を卒業する時…

過去が愛しくかけがえのない場面としてリフレインされるように、ラストの数「」は超ロマンティックな要素も持っています。
行き過ぎると過去の記憶や想いが美化されて、過剰に甘ったるくなることもありますが…

本のタイトルの中にもありますが、「ライオンのおやつ」の物語の中では、毎週日曜日、入居者たちがもう一度食べたい「想い出のおやつ」をリクエストできる「おやつの時間」の場面がいくつか出てきます。

「おやつ」にまつわる、子ども時代や、過去のよい想い出、ほろ苦く切ない想い出など、その食べ物の色合い、フォルムや味わい、香り、それにまつわるエピソードなどを聞きながら、五感をフルに使って大切に「おやつ」を食すことで、その場にいる人たちの間でストーリーを通して瞬時に共有できるのも、物語性のある「」的な質。

」のキーワードは「慈悲」「利他」「手放し」など色々ありますが、「共有」「共感」「共生」なんて言葉も連想され、かな~りドラマティックなエネルギーなんです。

この世の卒業は、あの世への帰還であり、あの世への誕生…

小説「ライオンのおやつ」は、ものがたりの力を借りて、生命が本来持っている境界線を飛び越えていく力、肉体を脱ぎ捨てた、あちらの世界への飛翔が描かれているように感じました。

そして、今回取り上げた数字、「」って、そもそも胎児のかたちに似ていませんか?肉体を持った命の終着点は、やはり、誕生と背中合わせになっている…と捉えるのが、自然なことだと思います。

涙もろい人は、人に会う前や仕事に行く前に、この本を読まないでね。私も読んだ後、号泣して顔が腫れてしまってもう大変、大変。

では、今日も良い一日を!

数秘&禅タロット セラピスト tomoko







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