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映画『HELLO WORLD』感想・考察一覧

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自分なりの考察や感想を思いつくままに書いていきます。あくまで一つの解釈ということで。
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#野崎まど

[解説] 映画「HELLO WORLD」を1回見た人向けに簡単にポイントを解説してみるよ

(ネタバレあり)映画『HELLO WORLD』、1回見て「!?」となった人は結構多いのではないかと思います。しかしそこで終わってしまってはあまりにもったいない。結構観客に「背伸びを強いる」作品で、ガッツリSFなところもあるのでちょっとハードル高い部分もありますが、そこを乗り越えると本当に面白くなってくるんです。 この記事では、初見だとちょっとわかりにくい部分を自分なりに解説してみようと思います。 自分自身、3回くらい観てもまだわからなくて、原作とスピンオフと解説記事を読ん

映画『HELLO WORLD』界隈の「よくある(ニッチな)質問と回答」をちょっと作ってみたよ

映画『HELLO WORLD』が公開されて、早いものでもう5年になります。その間、劇場での上映機会は残念ながらほとんどなかったのですが、各種動画配信サービスやBlu-ray、DVD等であらたに本作に触れる方は確実に増えてきています。新鮮な感想を見るたびに一ファンの端くれとしても非常にうれしく思っています。 一方で、上映当時と比べて後から観た人はどうしても周辺情報が得られにくい、というのが悩ましい点です。Web上の情報の散逸や消滅も増えていますし、SNSでの盛り上がりもニッチ

舞台の外の僕らと彼女——映画『HELLO WORLD』スピンオフ『ANOTHER WORLD』2話の演劇的三人称とその破れ

映画『HELLO WORLD』には、『ANOTHER WORLD』という珠玉のスピンオフ短編アニメがあります。配信が終わってしまい、公式サイト(Internet Archive)もなくなってしまった2023年現在ではBlu-rayスペシャル・エディションでしか視聴できないというハードルが高い映像ですが、各話わずか10分のこれがとんでもない傑作でして、特に2話「Record 2032」はカタガキナオミという登場人物を考えるうえで必見である、と事あることに言い続けて早4年。 「

拝啓、素敵なnoteありがとうございました——映画『HELLO WORLD』にまつわる勝手に往復書簡note的なやつ

(ネタバレ注意)先日、noteで映画『HELLO WORLD』に関する非常にすばらしい知的な論考を見つけました。kqckさんという方が書かれた記事です。 何しろ映画が公開されてもうすぐ4年なので、新鮮な感想に飢えていたところにこの熱量の高い記事を出されたら感激しかありません。大喜びで調子に乗ってめちゃくちゃ偉そうなツイートをしてしまいました。 そうしたらなんと、kqckさんからまるでお返事のようなnote記事を頂いてしまいました…!! しかもご自身のポッドキャストで『HE

我は記し留めゆかむ——映画『HELLO WORLD』における「書く」ことの意味

久しぶりに映画『HELLO WORLD』のことを書きたいと思う。この映画に頻出する「書く」というモチーフについて、映画が公開されて3年が経った今、あらためて考えてみたい。 頻出する「書く」モチーフと『ビジュアルガイド』の手書き寄稿『HELLO WORLD』という映画は、何かを「書く」モチーフが実に多い作品だと思う。デジタル全盛時代の話とは思えないほどに、とにかくみんな紙に文字を書きまくる。主人公は読書好きだけど、「読む」よりむしろ「書く」行為がやたらと出てくるし、作中で重要

映画『HELLO WORLD』ラストを本気で考察してみよう<後編>:「しっくりこない」を深掘りすると世界の在り方が見えてくる

<前編>はこちら/<中編>はこちら/この記事は「中編の続き」です (ネタバレあり)映画『HELLO WORLD』は、「ハイスピード青春ラブストーリー」と銘打っでいるだけあって、中盤から突然どんでん返しの応酬に翻弄され、特に衝撃のラストシーンは頭が混乱した方も多いのではないでしょうか(初見で全部理解できた方は誇りに思ってよいと思いますw)。しかしここからがこの映画の真骨頂、本当に楽しい部分のはじまりです。初見で「分かった気になる」タイプの映画では味わえない、考察の楽しみ、背伸

映画『HELLO WORLD』ラストを本気で考察してみよう<中編>:浮かび上がるカタガキナオミ10年の軌跡

<前編>はこちら/<後編>はこちら (ネタバレあり)映画『HELLO WORLD』は、「ハイスピード青春ラブストーリー」と銘打っでいるだけあって、中盤から突然どんでん返しの応酬に翻弄され、特に衝撃のラストシーンは頭が混乱した方も多いのではないでしょうか(初見で全部理解できた方は誇りに思ってよいと思いますw)。しかしここからがこの映画の真骨頂、本当に楽しい部分のはじまりです。初見で「分かった気になる」タイプの映画では味わえない、考察の楽しみ、背伸びして見えてくる世界の広がり。

映画『HELLO WORLD』ラストを本気で考察してみよう<前編>:簡単なおさらいと解釈の数だけ生まれ出る物語

 (ネタバレあり)映画『HELLO WORLD』は、「ハイスピード青春ラブストーリー」と銘打っでいるだけあって、中盤から突然どんでん返しの応酬に翻弄され、特に衝撃のラストシーンは頭が混乱した方も多いのではないでしょうか(初見で全部理解できた方は誇りに思ってよいと思いますw)。しかしここからがこの映画の真骨頂、本当に楽しい部分のはじまりです。初見で「分かった気になる」タイプの映画では味わえない、考察の楽しみ、背伸びして見えてくる世界の広がり。  あのラストシーンは、いったいど

彼が「先生」と呼ばれる必然——映画『HELLO WORLD』における「先生」というパワーワード

(本記事は映画『HELLO WORLD』のネタバレを含みます。またいくつかの小説(野﨑まど『know』、夏目漱石『こゝろ』)の軽微なネタバレを含みますが、核心には触れないようにしています) 映画『HELLO WORLD』において、主人公の男子高校生・堅書直実の前にある日突然現れた、10年後の直実自身であると名乗る男、カタガキナオミ。未来の自分のことを何と呼べばよいかと尋ねる直実に対し、彼はこう答えます。 「ならば『先生』と呼べ」 ——「先生」。 教員でもないのに、自分

いつか京都マルイを幻視する日——映画作品における「失われた風景の記録と再現」、その真骨頂としての『HELLO WORLD』

(ネタバレあり)この記事は、映画『HELLO WORLD』の「クロニクル事業」に代表されるあるモチーフ、「失われた風景の記録と再現」を、昨今のいくつかのアニメ・実写映画に強引に見いだし、無理やり読み解いていくというと同時に「クロニクル事業」の意義を勢いのままに語る企画です。このモチーフを愛するあまり、あらゆる映画にその幻影を観てしまうイキリオタクの妄想力の成れの果てです。(2020年3月19日公開、2020年5月4日追記) 注意:この記事の解釈は、登場する作品に込められた意