マガジンのカバー画像

映画・アニメ・小説・ゲームの感想

15
いろいろな映画・アニメ・小説・ゲームの感想を雑にまとめたものです。
運営しているクリエイター

#乙野四方字

信頼できない語り手たちの信頼できる狂気——『ミウ -skeleton in the closet-』を勝手に深読みしてみる

(ネタバレあり)乙野四方字先生の『ミウ -skeleton in the closet-』を読みました。 ライトなミステリ、といった風情の作品であり、実際そうなのだと思うんですが、『僕愛』『君愛』や『正解するマド』といった四方字先生の過去作品群を読んでしまっていると、もはやそのままライトに読めない自分がいるんですよね。何かギミックがあるのではないかと勝手に勘ぐってしまう。 作中ではある殺人事件が提示され、最終的に犯人とその犯行動機やトリックが鮮やかに曝かれて、物語はきれい

原作への敬意とガチSFに溢れた唯一無二の映画体験——『僕愛君愛』映画版が描くもう一組の並行世界の物語

2022年10月に公開された映画、『僕が愛したすべての君へ』と『君を愛したひとりの僕へ』。 先に原作小説を読んでいたのでドキドキしながら鑑賞しましたが、めちゃくちゃ良かったです! 小説の映像化にありがちなコレジャナイ感が皆無で、よくぞここまで原作の世界観を映画にしてくれた、というのが第一印象でした。プロット的には決して原作そのままの映像化ではなく、むしろ改変要素がかなりあるのですが、それすらも非常に納得の行くものと感じました。 原作小説についての記事は以前書いたので、今回

『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』関連リンク集

『僕愛君愛』関連(原作・映画)のリンク集です。公式サイト、インタビュー、イベントレポート、グッズ情報など、ほぼ自分のメモ用途ですが、何かの参考になれば。 抜け漏れがあったら教えてください! 公式サイトhttps://twitter.com/bokuai_movie https://twitter.com/kimiai_movie 公式動画本編映像のかなりの部分が公開されているので、円盤が出るまでの間もさみしくないですね!(でもなぜか番号が揃っていない…揃えると全編になっ

『僕愛君愛』ロケ地マップを作ってみました

『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』『僕が君の名前を呼ぶから』について、小説・映画にまたがったロケ地マップを勝手に作ってみました! 随時更新していきます。聖地巡礼のお供になれば幸いです。 https://www.google.com/maps/d/embed?mid=1G4kD0XbGYmk2TMpOOpvtkHrNxH9meWs&ehbc=2E312F&ll=33.252527791008845%2C131.59581168292098&z=12 作って

虚質科学を武器に、すべての世界を肯定したい——『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』を雑に解釈してみる

(前半ネタバレなし)どちらから読むべきか悩ましい『僕愛』と『君愛』。めっちゃエモい並行世界SFでした! 付け焼き刃で学んだ「虚質科学」を武器に、まずは原作だけ読んだ状態で語り散らかしたいと思います。 (追記:映画観ましたがすごくよかったです!本記事は映画の参考にもなるかもしれません。映画だけ観た方への注意点をこの記事に追記しました。また映画の感想は以下の記事に書いています↓) 自分なりに図や表を描いて解釈しようと試みていますが、全然自信がないので、他の方の考察もぜひ教えて

『正解するカド』、メタ視点で観たらこんなに面白いってことを全力で訴えたい

2017年のTVアニメ『正解するカド』を今頃になって観たらラストまで含めて個人的にはめちゃくちゃ面白かったのですが、世間の声を見ると面白かったという境地に辿り着いてない人が多いみたいで、もったいない!! ということで、『カド』のここが自分は面白かったんだー!と叫ぶだけの記事です。 もちろん自分の解釈が「正解」である保証なんてまるでありません。解説や考察からはほど遠い、贔屓目と相当に変態的な見方に基づいた、ただの妄想であることは自覚してます。ラストが賛否両論なのも当然だとは思

これはアシモフの正統な翻案だ——映画『アイの歌声を聴かせて』の雑な感想

(ネタバレあり)この記事は映画『アイの歌声を聴かせて』の雑な感想を垂れ流したものです。 ミュージカル映画のもつ「不気味の谷」の扱いが巧すぎるまず、これはすでにあちこちで散々言われているっぽいけど、強く思ったのは「ミュージカル映画」にこんなに巧くメタな必然性を持たせた映画を観たことがないってことだ。 たいていのミュージカル映画は登場人物が突然歌い踊り出すし、彼ら側に感情移入させようとする。慣れてない観客は若干面食らうし、ノリノリの登場人物との間に「壁」を感じてしまう。ところ