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週刊ALL REVIEWS 巻頭言総集編

月日の立つのは早いですね。
2019年6月の週刊ALL REVIEWS配信開始からもう半年たち、年末となりました。
この間の巻頭言をまとめてみました。お楽しみいただければ幸いです。vol.1を最初に、他は新しい順に並べてあります。見出しと目次に「執筆者名」を追加してあります。


週刊ALL REVIEWS創刊号(Vol.1)(執筆者:由井)

皆様こんにちは!
ALL REVIEWSの由井でございます。とうとうきました週刊ALL REVIEWS第1回!どうぞ宜しくお願い致します。
初回だからどうのって話は実はなく笑、ぼくは以降はそんなに出現してこないと思います。
来週以降、この冒頭の「天声人語」的なコーナーは、「ALL REVIEWS 友の会」会員の中の有志(皆さん超・本好き/読書好き!)が週替りで担当◎
それぞれの個性にご期待ください!あるいはここで個性が誕生したりしなかったりするのか?!
どうなるか全く読めませんが、どうにかなっていく過程も皆様と一緒に楽しんでいければと思っております。

■担当委員より自己紹介
【hiro】
ALL REVIEWS友の会会員・同サポートスタッフ。古稀の素人目線ながら、読書の喜びをぜひ伝えたいです。
【雪田倫代】
1984年生。奄美大島在住。物書き。猫にめろめろ。好きな作家は島尾敏雄。Twitterアカウントは@島尾文学を読むひと
【Fabio】
海外経験豊富な本好きです。皆さんと古今東西の書籍の魅力を分かち合いたいです。(@FTNCaipirinha
【悠太郎】
1965年生。放送大学生。フランス文学系を中心に様々なサークルに参加していて、沢山の予定を入れるのが大好き。立ち止まることのない回遊魚みたいな存在。
【小島ともみ】(朋)
映画とミステリと猫とビールが大好き。初恋の人は「ホームズ」の自称シャーロキアン。原産地北海道、雪は無条件ではしゃぎます。Instagram:@dera_cine17


週刊ALL REVIEWS Vol.26 (2019/12/2-2019/12/08)(朋)

「あと何回ご飯食べられるかわからないんだから、好きなもの食べさせてよ!」とあるレストランで耳にした笑い交じりの言葉に、ふと考えた――私、残りの人生であと何冊、本を読めるかな? 偏った読書傾向のまま「好き」を重ねて突き進むのもいいかもしれない。でも、新しい出会いを求めて、時に失敗したり騙されたりするのも楽しいんじゃないか。週刊A. R.はそんな私のささやかな冒険心をナビゲートし、まだ見ぬ世界に放り込んでくれる。未来に向けての旅だけでなく、過去に刊行された本にもピンを刺してくれるのが良い。目に留まったときが、その人にとっての読みどきなのだろうから。
私は、物語が好き。フィクションだろうと、それは人生のひとつのかたちだ。登場人物たちの向かう行く末へとページを繰るなかで、決して交差することのない人と知り合い、さまざまな事象を疑似体験する。裏表紙を閉じた瞬間、今いる日常が愛しくなったり、いざというときの避難場所を見つけてホッとした気持ちになったり。物語にはそんな効能があると思う。読み終えたばかりの『日本人の恋びと』、実はことしの1月1日にALL REVIEWSで既に取り上げられていた。もしかするとその時点でサブリミナルのように私の意識下に何かしら刻み込まれていたのかもしれない。今週の書評一覧で目にしたとき「この本だ!」と確信をもって「カート」に放り込んだ。
サンフランシスコの老人施設で働く東欧からの移民イリーナとお金持ちの住人アルマ。背景も立場も違う二人の出会いは、それぞれの家族を巻き込みながら、メロドラマ的な重く切ない人間関係の迷路へと続く。ちらつく戦争の影、実らなかった愛を経て、たどり着いた先に広がる光景をなんと呼べばいいのか、私は知らない。いつか言葉で表せる日が来るかもしれない。その日を待って、また読もう。


週刊ALL REVIEWS Vol.25 (2019/11/25-2019/12/01)(悠太郎)

いちにちいちにち秋が深まり、気づけば、もう冬ですね。寒くて、乾燥していますが、皆さま、おかわりはないでしょうか。風邪等に注意していきたいものです。
さて書評サイトALL REVIEWS(AR)では書評のみに限られず、作者自身の解説や作者、書評家の読書記録等も含まれます。また違った趣があって楽しいものです。
今日取りあげさせて頂くのは、この夏に発刊された梨木 香歩さんの『ヤービの深い秋』です。作者による自著解説です。作者自身が自著を語るのはなかなか勇気がいるのではないかとも思われますが、その勇気が遥か遠い世界へ連れて行ってくれます。ぼくはファンタジー童話が好きなのですが、その世界は多重な意味を持っています。大きい人と小さい人の対比ですが、やはり大切なものは、意外なところにあるのでしょうか。ぼくも作者と同じような価値観を持っているようです。骨折り損なことは、結局はないこと、そして、そう決めておけば、いろいろと心穏やかでいられること、自分にとって価値のあることは、計り知れないところにあるのかもしれないということ。読書前の解説は、想像力が羽ばたきます。こういった世界が好きです。


週刊ALL REVIEWS Vol.24 (2019/11/18-2019/11/24)(Fabio)

11月22日は「いい夫婦の日」ということもあってか、著名人の結婚報道が相次ぎました。
おめでたいニュースは大歓迎です。
さて今回ご紹介の書評の中からまず目に飛び込んできたのが、『生き物の死にざま』と題した一冊。
多様な生命の終幕を粛々と描いたエッセイです。
生まれて、生きて、産んで、死んで、と生命のバトンが次世代につながれていく自然の仕組みと、その中で「死」が持つ役割について分かりやすく実に興味深く書かれています。
よく知られているのはセミ。
夏を謳歌するかのようにオスは大きな声で鳴き、メスを呼び寄せ、二体はパートナーとなりメスは産卵します。これがセミの成虫に与えられた役目のすべてであとは死を迎えるのみ。
「繁殖行為を終えたセミに、もはや生きる目的はない」とのこと。儚くも清々しい生きざまです。
「死」はすべての生命のプログラムに組み込まれており、いつか終幕を迎えるのは避けられません。
それならば逆に生きている間はしっかりと生きる目的を見出し、「生」を謳歌したいものです。
いい夫婦の日にあらためてそんなことを考えさせられる一冊でした。


週刊ALL REVIEWS Vol.23 (2019/11/11-2019/11/17)(雪田倫代)

私は積読本に囲まれて暮らしている。
我が家の猫様はとてもおりこうさんで、本にいたずらを一切しない。
しもべに気を使ってくれているのかもしれない。
しかも、ここひと月ばかりバタバタしていたのだが、本に対して財布のひもはゆるいせいで、積まれた未読本の高さは増える一方である。
忙しさと本の繁殖力は反比例しないらしい。
さて、今週も、ALL REVIEWSで発見した書評のせいで積読本が増えた。
川越宗一『熱源』(文藝春秋)
私は鹿児島県の奄美大島に住んでいるが、琉球、薩摩、アメリカに次々支配された。だから、『熱源』と同じように、「文化」に踏み敷かれた記憶がまだ色濃く残っている。
女性の指先を彩っていたハジチ(刺青)も「野蛮」とされ、古い和語が残っていた言葉もまた、淘汰されていった。
これは、日本の北端と南端だからという話ではなく、多かれ少なかれ、各地において起こった出来事なのではないだろうか。
「文化」とはなにか。私は北海道に行ったことがないのだけれど、北の民に寄り添って文章を追いたいと思う。……まだ積読なのだけれど。


週刊ALL REVIEWS Vol.22 (2019/11/4-2019/11/10)(hiro)

通常、「月刊ALL REVIEWS」は友の会会員なら、YouTubeビデオで視聴できるし、その気になれば豪華な書斎兼用のノエマ・イマージュ・スタジオ(西麻布)などでの収録を観覧できる。11月9日に、高遠弘美・鹿島茂両先生の対談「『失われた時を求めて』を読む」を観覧させていただいた。直接両先生の貴重なお話を聞けるまたとない機会だった。
当日収録したビデオは、今回特別に一般にも開放されている。ご覧になることを強くオススメする。 (ビデオへのリンク。
光文社古典新訳文庫版で『失われた時を求めて』の完訳を目指しておられる、高遠弘美先生のお話はすべて、「完読」を目指す私の胸に突き刺さってきた。私としては、現在第6巻まで出ている、この本との貴重な出会いを大切にしながら、楽しみながら今後も読み続けたいと強く思った。
***
一方、収容所の中という極限の状況で、手元に本がないままに、記憶のみで『失われた時を求めて』の連続講義を行ったという話が、書籍化されている。『収容所のプルースト』(著者:ジョゼフ・チャプスキ 翻訳:岩津 航)だが、この本について、高遠弘美先生の書評が二つ、ALL REVIEWSに収録されている。リンクはこの二つ。

2018年4月2日の記事。
2018年3月4日の記事。

どちらの書評も素晴らしい。これらの書評を読むと、『収容所のプルースト』を読みたくなる。それだけでなく、『失われた時を求めて』をも猛烈に読みたくなることは間違いない。実践した私が保証する。
実際にどう読むかについては鹿島茂先生の『「失われた時を求めて」の完読を求めて』を参考にするのが良い。


週刊ALL REVIEWS Vol.21 (2019/10/28-2019/11/3)(hiro)

濫読家hiroこと私の今朝の様子です。
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起床する前に、Twitterのタイムラインをチェックし、読書に関する情報を得るのが日課。今朝見つけたのは、青空文庫で新規リリースされた文章で島村抱月の「今の写生文」。そこに『セルボーンの博物學』という手紙形態の自然誌の本が紹介されている。著者は単に「ホワイト」とある。
読みたくなった。明治40年頃の文章なので、国会図書館デジタルライブラリーに相談してみる。寝床なので「帝國圖書館」という手軽な検索・読書アプリを使った。「セルボーンの博物學」で検索したがヒットしない。「博物誌」でもだめ。一般公開していないのだろう。念の為、「ホワイト」で検索したら100冊以上の本が検索できた。目的の本はなかったが、網にかかった本たちはどれも面白そうだ。ホイットマンの『自選日記』、とか『世界飛行機構造図解』とか…ホイットマンのは「ホワイトハウス」が、飛行機の本は「グラハム・ホワイト複葉機」が書誌に含まれているのでヒットしたらしい。
かくて、まったく関係ないが面白そうな別の本の読書にいそしむことになる。あいまいな語「ホワイト」でなく、正確な「ギルバート・ホワイト」で検索していたら、この寄り道は楽しめない。
***
起きたあと、Amazonさんで調べたら、『セルボーンの博物誌』はいろいろな翻訳本が今でも出ている。近所の図書館で調べたらそのうちの一冊があったので借用することにした。そしてInternet Archiveで調べたら、『The essential Gilbert White of Selborne』という本の中に、『セルボーンの博物學』らしきものを発見。島村抱月は、きっと原書で読んだのだろう。


週刊ALL REVIEWS Vol.20 (2019/10/21-2019/10/27)(悠太郎)

皆さま、こんにちは。
今年は例年より2か月早くインフルエンザが流行り出しているとのことです。ぼくも週末風邪をひいてしまいました。今年のインフルエンザは、世界的なパンデミックになった2009年以来の早い襲来らしいです。早めの対策をとっていきたいものです。
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今回は、『開高健のパリ』(集英社) - 著者:開高 健 - 角田 光代による解説に注目してみる。
「若きの日に旅をせずば、老いての日に何をか語る」と、書中にも掲載されているユトリロの「ラ・フェールの教会」の印象的な絵に、少し古風だがそれ故に素敵な言葉が刻み込まれている。
開高健は、27歳で若くして芥川賞を受賞しているが、少年時代に夢見ていた日本からの密出国は果たせないでいた。
「外国に逃げられないから」読書に亡命していたという。その青年がパリを夢想したのがユトリロの絵だったのだろうか。
「十数年の昂揚期を通じてユトリロについて眺められることは、一つには、その、執拗な人間嫌い(ミザントロープ)の志向である。壁や屋根や木については同時代の誰も表現できなかった、彼独自の素晴らしい色価を創出したが、この風景のなかには人間が拒まれていた。」、こう聴くと寒い日のどことなく寂しいパリを思い浮かべてしまう。開高健は、そのようなイメージをこの都市に見出していたのだろうか。
角田光代氏が、開高健初めての「大人の絵本」であると紹介しているが、ユトリロの絵やパリ断章の文章はまさしくその通りだ。それがアルジェリア問題の文章では変化が見られる。ユトリロの絵の解説は続くが、街角のデモ隊がストップモーションで語られる。その季節は、まさに冬だ。ジャーナリストとしての開高健の真骨頂である。
絵本にして、パリを夢見て、ルポにして、現実を描く。なんと贅沢な書であろうか。


週刊ALL REVIEWS Vol.19 (2019/10/14-2019/10/20)(Fabio)

初めに、台風19号により被災された皆さまに、謹んでお見舞い申し上げます。
一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。

20(日)はラグビーW杯「日本 vs 南アフリカ」で大いに盛り上がりました。
ここまでのチーム JAPANの大健闘、日本全国に感動を与えてくれました。
にわかファンの自分もすっかりラグビーと代表チームの面々に魅了されている次第です。
しかし一区切りついた今、いろいろと考えてしまうのです。
今季限りで代表チームからの引退を表明しているベテラン勢がいる中、今後こんなに強いチームがまた結成されるだろうか、4年後にはどんなチームになっているのだろう、と。

そこで今週ご紹介の一冊『アスリートは歳を取るほど強くなる: パフォーマンスのピークに関する最新科学』(草思社) はアスリートは歳を取るほど強くなれることを、科学的に明らかにしていく興味深い一冊。
加齢はパフォーマンスを向上させる「武器」になるというのです。

ラグビー代表チームにとってももちろん朗報ですが、取り組みや研究結果から我々も何かを学べるとしたら、自分のような中年にわかファンにとっても大いに得るところがあるはず。
足枷だと思われていた加齢を味方につけることができれば、人生100年時代これほどいいことはありません。
(逆にいえばもう運動をしない言い訳ができません・・・汗)
W杯の雄姿に涙した後は、今度は自分が動く番だと日ごろの運動不足を反省しながら読み進めたいと思います。


週刊ALL REVIEWS Vol.18 (2019/10/7-2019/10/13)(雪田倫代)

台風19号により災害にあわれた方々に心よりお見舞い申し上げます。
台風が接近中に地震もあり、竜巻も起こり、つらい思いをされた方も多かったと思います。重ねて、1日も早く日常を取り戻されますこと、お祈り申し上げます。
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この数日、インターネットとテレビをずっと見ていた気がする。良くも悪くも、私が住む南島は、台風に慣れてしまっている。だから、自分が台風に見舞われているよりも、なん倍も心配だったし、大きな被害が出てしまったことに心が傷む。
そういうふうに落ち込んだとき(もちろん罹災された方には及ばないのだけど)、私は本を読むことが多い。自分の気持ちを説明してくれるもの、折り合いをつけさせてくれるものを探す。 ALL REVIEWSを探していて、読みたいなと思ったものが2冊ある。
『大災害の時代 未来の国難に備えて』(毎日新聞出版)
『津波、噴火……日本列島 地震の2000年史』(朝日新聞出版)
それぞれ、歴史に学ぶ、という点が共通している。
地球温暖化の影響で、海水面の温度が上がり、台風の進路が読めなくなってきている。
そんななか、新たな局面に臨むにあたって、本の力を借りていきたい。


週刊ALL REVIEWS Vol.17 (2019/9/30-2019/10/6)(hiro)

私事になるが、『失われた時を求めて』を本格的に読み始めて約一年になる。もちろん翻訳で。何回か挫折しているが、今回は高遠弘美先生の訳で、光文社古典新訳文庫のKindle版を5巻まで入手して読んだ。
今回、挫折せずにマドレーヌどころかずっと先まで読めたのは高遠先生の流麗な訳文と、読者に親切な巻頭・巻末解説と、脚注のおかげだ。脚注はKindle版の特徴で、本文との行き来が楽で、読みやすい。実は、途中で感想をつぶやいたら、高遠先生からゆっくり読むようにと助言をいただくというハプニングもあった。6巻以降の翻訳もゆっくりと、でも首を大いに長くして待っている。
集英社版の鈴木道彦抄訳『失われた時を求めて』の書評が今週の新着でALL REVIEWSに掲載された。それには、
「むしろ不惑の年齢を過ぎ、《失われた時》が多くなった中年以上の人間にこそふさわしい書物であろう。それはきっとプチット・マドレーヌのように《失われた時》を喚起する役割を果たすにちがいない。」
とあって、かなり感動した。
人生の良い伴侶のような読書経験をナビゲートしてくれるのも、書評の役割だろう。
なお、今週末10月12日の月刊ALL REVIEWSは高遠・鹿島両先生の対談。もちろん話題は新刊の『「失われた時を求めて」の完読を求めて 「スワン家の方へ」精読』。これも首を長くして待っている。


週刊ALL REVIEWS Vol.16 (2019/9/23-2019/9/29)(悠太郎)

皆さま、こんにちは。
先週に引き続きまして、悠太郎が巻頭言を書かせて頂きます。今日は、我が国では5年半ぶりの増税の日、お隣中国では建国70周年に当たる国慶節です。
こんな折、過去の歴史を省みてみるのも良いのではないでしょうか。元外務省国際情報局長孫崎享氏の近著『日本国の正体「異国の眼」で見た真実の歴史』を見ていきたいと思います。
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外務省に入ると、研修中に『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』戸部良一他、中公文庫、1991年(単行本は1984年ダイヤモンド社刊)が、先輩による推薦図書として広く読まれていると聞きます。大東亜戦争における諸作戦の失敗を、組織としての日本軍の失敗ととらえ直し、これを現代の組織一般にとっての教訓あるいは反面教師として活用されることが、この書のねらいです。これを読み進めていくと信じられないような事象に出くわすのですが、組織内の融和と調和を重視し、他組織との折衝が疎かになることが日本人の特徴として分析されています。 孫崎氏は、「歴史を通じ、他者の声に耳を傾けなくなった時代には、必ずといっていいほど『重大な戦略ミス』を日本は犯してきた」と訴えています。「戦略」という言葉を聞くと同じく外務省元情報調査局長の故岡崎久彦氏の『戦略的思考とは何か』中公新書、1983年、(2019年8月に改版が発刊されている)が思い浮かびます。日本には戦術が有っても戦略がないと言われています。戦争や戦略論を冷静に語っており、戦争を語ること自体に未だアレルギーのあった当時としては、刮目すべき書物でした。これらの書物も併せて読むと孫崎氏の著書もより立体的に捉えることができると思います。左右対立に固執されずに、建設的な議論が求められているのではないでしょうか。


週刊ALL REVIEWS Vol.15 (2019/9/16-2019/9/22)(悠太郎)

皆さま、こんにちは。今週のALL REVIEWS 書評には、色々と考えさせられるものが多かった気がする。フランスのこと、中国のことなどが印象に残っている。その中でも、近未来小説として読めるフランスの作家ミッシェル・ウェルベック『服従』の書評に特に関心を引かれた。
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最初にパリに滞在した90年代初頭、夏の暑い午後には、パリ最大のモスクであるグランド・モスケ・ド・パリ にミントティーを飲みに出かけたものだ。アルハンブラ宮殿を模したという美しい建築物を訪れるたび、不思議に心が落ち着いた。祈りの時間を告げるアザーンの声が聞こえ、その場のおごそかさが増す時間帯であることも影響していたかもしれない。冷戦が集結し既に湾岸戦争を経験していたものの、イスラム教徒への反感が大きく取り上げられることはなかった。しかしながら9.11アメリカ合衆国での同時多発テロを受けて、アラブ地域への軍事行動が取られると、文明の衝突という概念が大きく取り上げられるようになっていった。お互いに強い憎悪の対象となったのは悲しいことである。そしてテロ行為はパリを中心にフランス各地で多発していくだろう。パリは人権宣言が発布された場所であり、西欧的普遍性を象徴する場所である。その為に標的にされるのか。そうとばかりは言えない。社会的背景として、パリ及びフランスは、EUの中でも失業率が高く、若者層ではドイツや英国とは比較にならないくらいである。そして移民の子どもたちが多く住み、失業率が40%近くにも達する「郊外」の住民の間には疎外感が生まれている。その一方で、イスラム教徒ではない国民も同様の疎外感を持っている。反移民の極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン氏に大統領選で票を投じるような人々だ。彼女に投票するのは仕事がないからだ。
そのような中、国民戦線とイスラム穏健派のそれぞれの候補が争い、フランスにイスラム政権が誕生するといったあらすじを持つミッシェル・ウェルベックの『服従』が刊行された。諷刺新聞「シャルリー・エブド」紙本社襲撃事件の日が発刊日となった小説であり、それだけでも大きな話題になった。
この書は、ただのディストピア小説なのか?ポストコロニアル的視点、ジェンダー的視点からの想像力も働くだろう。その読み方は読者に委ねられている。読者がいて作品が成り立っていくのである。
イスラム教徒の6割がアジアに在住する。それらの国々から日本へ事実上生活の本拠地を移す人たちも多くなっていくであろう。日本にも同じような事態が起こらないとも限らない。


週刊ALL REVIEWS Vol.14 (2019/9/9-2019/9/15)(hiro)

『植草さんについて知っていることを話そう』(高平哲郎 2005年 晶文社)を読んだ。「お弟子」の高平さんがいろいろな人に取材して書いたもの。
担当編集者だった来生えつこさんが述べている日常生活の植草さんが可笑しい。原稿を受け取りに行くと股引(ももひき)をはいたまま応対する。原稿は書き上がった分、2、3枚だけを彼女に渡して残りをまた書き始める。複写機などもちろんないので渡した原稿は読み返せない、だから続きは「話は変わるが…」で書きはじめる。
平野甲賀さんは、植草さん宅でご馳走になった昼飯がコロッケ一個だったことがあると回想する。大皿にぽつんと乗っていて、すべり止めに刻んだキャベツが少々。
片岡義男さんが述べておられるように、植草さんの未発表の手書きの原稿(出版社の倉庫に大量にあるそうだ…まだ残っているのかやや心配…)を写真版で出版する件は、夢のような良い話だが、ぜひぜひ実現してほしい。できるならお手伝いをしたいくらいだ。声かけてください。
植草さんのことを書いた本には、『植草甚一の勉強』(本の雑誌社)もあり、ALL REVIEWSでその書評を読める。


週刊ALL REVIEWS Vol.13 (2019/9/2-2019/9/8)(雪田倫代)

最近、上野英信(『追われゆく坑夫たち』(岩波新書))とか山本作兵衛(『新装版 画文集 炭鉱に生きる 地の底の人生記録』(講談社))がのこした九州の歴史について読むようにしている。もちろん石牟礼道子も、だ。
『生きづらさについて考える』(毎日新聞出版)で内田樹が「忘れるからこそ「次の戦争」も起きる」と書いているように、忘れてしまえばあの貧困や公害も繰り返すように思うからだ。
炭鉱で労働力を搾取されている様子は、時代は違っても、ブラック企業で退路を断たれ、蝕まれていく若者たちと重なる。
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶという。
私は目を見開き、読み、学び続けたいと思う。
次の「地獄の釜の蓋が開」くことがないよう、しっかりと見張れるように。



週刊ALL REVIEWS Vol.12 (2019/8/26-2019/9/1)(Fabio)

暑い日々が続いています。
ニュース報道等では先行き不透明な情勢が連日伝えられています。
先が見えないときこそ、「故きを温ねて新しきを知る」ことが大事な気がします。
そこで今週は「古典」にスポットライトを当てたいと思います。

一つ目は言わずと知れた『源氏物語』。この日本の名作が世界に知られるようになったのは、今回ご紹介のイギリスの東洋学者・ウェイリーの翻訳のおかげとのこと。そのウェイリーが英訳したものを今度は日本語に「逆翻訳」したのが本作です。『源氏物語』はこれまでも数多くの近・現代日本語訳が出ていますが、今週の一作『源氏物語 A・ウェイリー版1』はその中でも際立った一冊。読んでいてこれはどこの国のお話か?と良い意味で混乱すること請け合いです。折しもつい先日参加した「第2回ALL REVIEWS書評家と行く書店ツアー!」にて沼野充義先生に直接ご紹介いただいた一冊でもあります。本作品の新鮮で滑らかで優美な語り口は、古いのに新しい世界文学になっていくんだと思います。
二つ目は『三体』。すでに方々で絶賛されていますが「中国で社会現象となったアジア最大級のSF小説!」、「あのオバマ前大統領も絶賛!」とまでいわれると熱心なSF読者でなくともチェックせざるを得ません。終焉を迎えようとする地球、そんな非常事態においてさえ争いあう人類の愚かさ・・・。人間が抱えてきた普遍的なテーマがダイナミックに扱われているのを見るに、こちらもまた新たな古典の仲間入りを果たしそうです。
さて、まだまだ暑い日々が続きますが皆様どうぞお体にはお気をつけて。
もう少し涼しくなってきたらぜひこういった古典にも取り組んでいきたいですね!


週刊ALL REVIEWS Vol.11 (2019/8/19-2019/8/25)(朋)

ALL REVIEWS友の会会員の小島ともみ(朋)です。

突然ですが、物語の主人公に恋したこと、ありますか?私はあります。初恋の相手は英国人でした。異性をなんとなく意識しだす小学生の、モテカテゴリは2パターン。クラスの誰よりも足が速くて、ドッジボールの得意な子。あるいは、いつも真っ先に手を挙げて、黒板に現れたげに難しげな算数の問題をチョーク1本、またたく間に退治してしまうメガネ男子。しかし私は、いずれにも属さない至高の存在を「本の中」に見つけてしまったのでした。その人は、いつも紫煙の向こうにいました。ヴァイオリンをなんなく弾きこなす長くきれいな指を胸の前で合わせる端正な顔立ち。頭脳明晰、どんなときにも取り乱さず、情に薄いようでいて、親友のピンチには熱くなってしまうギャップがたまりません。名をシャーロック・ホームズといいます。

この、架空の存在を実在の人物のように感じさせてくれた一冊の本がありました。島田荘司さんの『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』。漱石がロンドンに留学していた当時、ホームズに遭遇していたに違いないという仮説で描かれた本作は、ある一つの事件が漱石目線とワトソン目線の交互で語られて進みます。同じ出来事が見方によってこれほどに大きく違ってくるのかという驚きは、ちょっと待って!「真逆の立場」で考えてみようよ、という心構えを私に与えてくれました。事件が回り回って迎えるラスト、その瞬間はやって来ました。登場人物である少女の目を通して仰ぎ見るホームズの、ああ、なんと背の高いこと!永遠の一方通行である私の想いは、このとき確かに報われたのでした。本作、ホームズと漱石のいずれかにでも興味のある方には楽しめる一冊ではないかと、ご挨拶代わりにお薦めいたします。

こんなタイプの本好きですが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


週刊ALL REVIEWS Vol.10 (2019/8/12-2019/8/18)(悠太郎)

西日本を中心に帰省客の足を止めた台風10号が上陸した8月15日は、終戦記念日でした。この日を中心に、テレビでは毎年戦争特集が組まれます。戦争を思い出すのは、夏の風物詩なのかと思ったりもします。その後も暑い日々が続いていますが、おかわりないでしょうか?
ぼくは、今日も汗をかきかき、あちこち飛び回っていました。回遊魚のように。
映画「聯合艦隊司令長官 山本五十六」や「日本のいちばん長い日」などの原作者として知られている作家半藤一利氏作の絵本『焼けあとのちかい』は、昭和20年3月10日の東京大空襲の体験をもとに描かれています。当時中学二年生であった作者は、その日逃げまどい川に飛び込んだところを船に救われ九死に一生を得たそうです。そこで見た光景は!
「戦争だけは絶対にはじめてはいけない」との叫びが、大胆な画風で知られる絵本作家塚本やすし氏の手になると。
文章に絵が加わることで、強いインパクトが生まれます。戦争を知らない自分やその子供たち、漫画で育った「われわれ」の世代にとって、この絵本から伝わるメッセージは、大きな意味を持つことでしょう。特にこの絵本の対象となっている小学校中学年以上の子供たちに何が伝わるのか。大人も考えたいことです。
江東区には、東京大空襲・戦災資料センターという施設があります。


週刊ALL REVIEWS Vol.9 (2019/8/5-2019/8/11)(Fabio)

みなさん、連日の猛暑ですがどうぞお体にお気を付けて。
冒頭からこんなあいさつからになってしまうほどの暑さです。

さて今週の書評群を振り返っていて、まず気になったのが『サー・ガウェインと緑の騎士:トールキンのアーサー王物語』。私はトールキン作品は本も映画も好きで、数年前のある夏、ニュージーランドにある『ロード・オブ・ザ・リング』 3部作のロケ地を訪れたことがあります。ワイカト地方の町、マタマタの緑豊かな牧草地の風景はゆったりとしたホビット庄のイメージにぴったりでした。ファンタジー作家として有名なトールキンですが、もともと英・オックスフォード大学の言語学の研究者でもありました。味わい深い素晴らしい作品をたくさん残していますが、今回紹介されているように中世の古典を現代語に訳すといった地道な研究をベースに書かれていることを知ると余計に頭が下がります。

暑い盛りですがこんなときはよく冷えた白ワインでも飲みながら、こういった古典作品にも触れてみるのもいいかもしれません。
(ワインは風味豊かで味わい深いニュージーランドの白ワインをおススメします!)


週刊ALL REVIEWS Vol.8 (2019/7/29-2019/8/4)(雪田倫世)

暑い。毎日暑い日が続きますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

近年毎年猛暑なので、「奄美大島へ避暑に来てくださいね」と冗談を言うようになった。本土に比べたら、海風もあるし、いくぶんは過ごしやすいから。

最近、マーガレット・アトウッド『侍女の物語』(新潮社、斎藤英治訳)を読んだ。1985年に出版されて、日本に紹介されたのは1990年。新訳が早川書房からも出版されているようだ。驚いたのは、内容が古臭くないこと。ディストピアものだのに、女性の置かれている立場は、ある意味ここから進んでいないような気さえしてくる。

そこで気になったのが、『レイナルド・アレナス『襲撃』(水声社)である。どんなディストピアが描かれているのか、星野智幸氏の書評を読んで手に取りたくなった。

きっと猛暑を吹き飛ばす、背筋の寒くなるような傑作に違いない。


週刊ALL REVIEWS Vol.7 (2019/7/22-2019/7/28)(hiro)

最近出版されたばかりの『三体』を読んで、長らく忘れていたSFへの情熱がまた燃え上がった。

***

ALL REVIEWS 友の会限定YouTube番組「月刊ALL REVIEWS」で、2月のビデオ収録終了後に、ゲストの牧眞司さんと雑談をさせていただき、最近のおすすめSF作家を伺った。回答は、テッド・チャン、ケン・リュウ、そして、超ベストセラー『三体』の著者、劉慈欣など。

『三体』の日本語訳が出るのを心待ちにしていたが、7月になって、訳者のお一人である大森望さんのサイン本を八重洲ブックセンターで入手できた。帰りの電車で100ページを読み、翌日には全部読み終えて、なるほどこれは素晴らしいと思った。壮大なスケールの話だし、奔放なストーリーの設定においては過去の多くのSF名作への敬意にあふれている。訳文も読みやすい。

今回の『三体』日本語版は、原作のほぼ25%のみで、来年以降、続きの日本語版が出版される。ああ、『三体』ロス。渇きを癒すため、ケン・リュウやテッド・チャンの作品を読み漁りはじめた。こうして、いままで途絶えていたSF読書熱が完全にぶり返した。

『三体』の解説(大森望さんによる)は、ここから参照できる。『三体』ロスが怖くなければ、本を購入するのがもちろんおすすめだ。


週刊ALL REVIEWS Vol.6 (2019/7/15-2019/7/21)(hiro)

いま旅行中の「シャーロキアン」が、今回この文章を書く予定でしたが、日程変更のため執筆時間がとれず、私(hiro)が急きょ代理をつとめます。よろしく。
個人的なALL REVIEWSとの関わりと楽しみ方を紹介します。

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ごく平凡な読書好き老人の私が、ALL REVIEWSに出会ったのは、2017年。鹿島茂さん @_kashimashigeruのツイートを読んで、ALL REVIEWSの存在を知り書評を読みはじめた。自ら求めて書評を読むのは初めてだった。有名書評家の書いた書評記事がたくさんある。存在すら知らなかった本を発見して、手に入れて読むのがこよなく楽しい。

2018年夏に、やはり鹿島茂さん @_kashimashigeruのツイートで、書評記事の校正を手伝う「サポートスタッフ」の募集を知り、大胆にも応募。たぶんなにかの間違いで採用された。ともかくいまも老骨に鞭打って頑張っている、いや楽しんでいる。サポートスタッフって、実際何をやるのか…は別の機会に。

2019年初め。ALL REVIEWS友の会が発足。早速会員になる。多くの読書好きの人たちと知り合って好きな本の話をすることは最高に楽しい。サラリーマンおよび隠居人生には味わえなかった楽しさだ。
そして、多くの書評家・作家の方々の話をビデオでも直接にでも聞くことが出来る。これは嬉しい。

読書とは受動的な娯楽と考えられていそうだが、私はそれ以上のものと考え始めている。
本の感想などの情報を、積極的に発信すると、それが数倍数十倍になって戻ってくる。
以前から読書記録ブログ(「りんかん老人読書日記」)は書いていた。これだけでも十分楽しい。が、友の会やサポートスタッフの仲間とオンライン・オフラインで読書についてあれこれ話し合ったり、イベントを企画して一緒に実行したりすると、至福の極みということになる。なんだか寿命も延びそうだ。


週刊ALL REVIEWS Vol.5 (2019/7/8-2019/7/14) (悠太郎)

皆さま、こんにちは!
「1965年生。放送大学生。フランス文学系を中心に様々なサークルに参加していて、沢山の予定を入れるのが大好き。立ち止まることのない回遊魚みたいな存在。」と、週刊ALL REVIEWS創刊号で自己紹介させて頂きました悠太郎です。ALL REVIEWS友の会の会員です。今後ともよろしくお願い致します。
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予定表に隙間があるのを恐れ、連日走り回り、ふりかえる時間も持たずに日々を過ごしてしまう時期ってないですか?そうなると本をゆっくりじっくり落ち着いて読む時間がなかったりしますよね。
どうしたものかと悩んでいた時に、たまたまツイッターに自分が好きな仏文学者の一人である鹿島茂さんの書評が流れてきたのです。それがALL REVIEWSでした。書評を読んで、時間が止まりました。そして、この本読まなくては!となりました。
ALL REVIEWS書評家には、放送大学で授業をもっている方も多数いらっしゃり、親しみを感じています。
今週目に留まったのは、放送大学で「地中海世界」についてのテレビ授業をされていたローマ史研究者本村凌二さんの書評です。『ヨーロッパとゲルマン部族国家』。今日の異文化共存社会を考える糧になります。



週刊ALL REVIEWS Vol.4 (2019/7/1-2019/7/7)(Fabio)

みなさん、こんにちは!
創刊号で「海外経験豊富な本好きです。皆さんと古今東西の書籍の魅力を分かち合いたいです。(@FTNCaipirinha)」と自己紹介しました Fabio です。これから一つどうぞよろしくお願い致します。

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さて、海外のビジネスエリートとの商談の場など、関係を築く上で効果的なのが相手の国の本をしっかり読んだ「風(ふう)」でいること。必ずしも読んでいなくていいと思う、時間もないし自由にできるお金だって貴重。だからそんなとき助けてくれるのが書評だ。その道のプロが本の紹介、要点までまとめてくれる。書評さえあれば自分もさもその本を読んだかのように相手と語り合え、分かち合える!

あらためて書評の素晴らしさについて考えるとき、自分の番で我らが鹿島茂さんの『大読書日記』(それも評者が楠木建さん!)の回を紹介できることに感激している。どんなに時間やお金があっても世界中のすべての良書を読むことはできない。そこは本物のプロたちにお任せし、どんどん紹介してもらい、がんがん批評してもらおう。川を上って海を渡る書評集ほどコストパフォーマンスの高い商品は世の中にない。万が一、ブラッドベリの華氏451度の世界が到来したとき、まっさきにターゲットにされるのがこの種の本だと思う。一冊で何百冊の価値があって、一冊で何百倍も危険だからだ。

今回は他にも中国の大注目SF作家による初の短編小説集、戦争が歴史に落とす影、芥川賞作家の作品まで、古今東西の書籍の魅力を分かち合う上で興味深い本ばかりです。
それでは、今週もお楽しみください ♪


週刊ALL REVIEWS Vol.3 (2019/6/23-2019/6/30)(雪田倫代)

「1984年生。奄美大島在住。物書き。猫にめろめろ。好きな作家は島尾敏雄。Twitterアカウントは@島尾文学を読むひと」と創刊号で自己紹介しました、雪田倫代です。hiroさんに引き続き、よろしくお願いいたします。
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奄美は梅雨明けしそうだ。島尾敏雄はここ奄美で、20年近く暮らした。私は小さい頃から島尾が館長を務めていた図書館に通っていた。島尾の写真をよく見かけていたからなのだろうか、そのまま彼がライフワークになってしまった。刷り込みってこわい。
代表作『死の棘』は、そのほとんどが奄美時代に書かれたものだ。『死の棘』の中で、娘のマヤを「ニャンコ」と呼んでいる場面がある。何故そういう愛称で呼ぶのか、作中でなんの説明もないのだが、シマでは猫のことを「マヤ」というからではないか、と思っている。猫=マヤ=ニャンコ、というわけだ。作品の中にシマのかおりを嗅ぎつけてにやりとするのは、とても楽しい。
ちなみに、うちには猫でマヤでニャンコが2匹いる。この子たちに囲まれて本を読むのも、これまたとても楽しい。


週刊ALL REVIEWS Vol.2(2019/6/16-2019/6/23) (hiro)

「古稀の素人読者目線ながら、読書の喜びをぜひ伝えたいです。ALL REVIEWS友の会会員・同サポートスタッフでもあります。」と創刊号で自己紹介したhiroです。5週間に1回登場します。それでは…
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私のような素人読書老人にとって、ALL REVIEWSの書評ってどういう意味があるのだろうか。と、考えてみる梅雨の朝。
きのう、偶然入った下北沢の有名本屋さんで以前から欲しかった本を手に取った後に、そのまわりの本棚の本もたくさん読みたくなって驚いた。
ALL REVIEWSの書評はよりどりみどり。有名書評家さんの数千の書評がおさめられており、自分の気に入りそうな本を、リアル本屋内感覚で楽しく選べる。本屋さんには多くのあたらしい本が並んでいる。その中に突然飛び込むと、どれを選んでいいのか大いに迷う。老眼のせいもある。ALL REVIEWSを読んで選んでおいた本は有力な「水先案内本」となる。
昨日入手した本は『戦地の図書館』。数週間前に読んだ書評記事はこちら、『戦地の図書館――海を越えた一億四千万冊』、本を「読むこと」の意味を深く考えさせる一冊だろうと思う。雨降りなので、今日はこの本をじっくり読んでやろう。


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いかがでしたか。お楽しみいただけたと思います。
毎週火曜日夜に発刊される、週刊ALL REVIEWSの購読申込はこちらから。無料です。
2020年も週刊ALL REVIEWSメルマガをどうぞご愛読ください。(hiro)

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【「ALL REVIEWS 友の会」とは】
書評アーカイブサイトALL REVIEWSのファンクラブ。「進みながら強くなる」を合言葉に、右肩下がりの出版業界を「書評を切り口にしてどう盛り上げていけるか」を考えて行動したり(しなかったり)する、ゆるい集まりです。
入会すると、日本を代表する書評家、鹿島茂さんと豊崎由美さんのお二人がパーソナリティーをつとめる、書評YouTube番組を視聴できます。
友の会会員同士の交流は、FacebookグループやSlackで、また、Twitter/noteで、会員有志が読書好きにうれしい情報を日々発信しています。
友の会会員の立案企画として「書評家と行く書店ツアー」も、フランスのコミック<バンド・デシネ>をテーマとしたレアなトークイベントや、関西エリアでの出張イベント等が、続々と実現しています。リアルでの交流スペースの創出や、出版の構想も。
本が読まれない時代を嘆くだけではダメだと思う方、ぜひご参加ください!


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