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ANAあきんどが秋田県と熊本県の自治体と協力新しい休み方改革、旅をしながら働こう!

新型コロナウイルス感染拡大により、私たちの生活は大きく変化しました。在宅勤務などリモートワークで仕事をされている方も多いのではないでしょうか。

そんな中、このリモートワークがさらに進化した「ワーケーション」も最近注目を集めています。ANAあきんどは仕事と余暇を組み合わせたワーケーションの新たな企画を打ち出しています。

角屋さん(左)、螺良さん(右)オフィスでの様子

Q:熊本と秋田のワーケーションやリモートワークの取り組みについて教えてください。


螺良: 熊本市では、2021年から「リモートワーク応援シティ・熊本」と名付けてシティプロモーションを展開し、大都市からの来訪を促し、リモートワークの目的地としての知名度を高めています。熊本城を中心に、半径2kmというコンパクトな範囲に、働く、遊ぶ、休む、といった熊本へ訪れる方のためのスポットが充実しており、利便性が高く、回遊しやすい街です。

小谷: コロナ期間中、日本の多くの自治体では、国内からの観光客を自分の市町村でワーケーションすることを奨励する取り組みが行われてきました。ワーケーションとは、小さな都市や地方に第二の拠点を設け、地域経済の活性化を図ることで、地域との関係人口を増やす手段のひとつと考えられています。現在、各社が専門的なパッケージやアクティビティツアーを提供し、さらなる関心を集めています。

秋田県では、従業員を3人以上派遣し、3泊以上のワーケーションを行う企業に対して、県が10万円の補助金を出していました。実際に2月にANAあきんどで3名の社員が秋田でワークショップを行い、このプログラムを活用しました。

Q:ANAあきんどは、どのように関わっているのでしょうか。

螺良:ANAワーケーション熊本」というサイトを通じて、コワーキングスペース、飲食店、温泉、観光地、利き酒など、熊本の魅力を満喫できるおトクなクーポンやパッケージ商品を展開しました。その際、地元の観光施設・飲食店や、ワーケーションに適した宿泊施設と連携することで、地域経済へ貢献できるように意識しました。また、訴求にあたり、短期間のワーケーションに適したコンパクトシティである、という熊本市の一番の強みを軸としました。空港から市街地までバスでたったの40分というアクセスの良さも魅力の一つですね。

小谷: 秋田犬ツーリズムという地元のDMO(Destination Management/Marketing Organization)の出資で、ANAあきんどにワーケーションパッケージの企画を依頼し、現在「ANAワーケーション秋田」として販売しています。

秋田には雄大な自然、美味しい食べ物、観光地があります。冬は雪が多く降りますが、四季がはっきりとしている県です。東京から飛行機で約1時間、ANAは秋田空港に1日5往復、秋田県北の大館能代空港にも近々3往復のフライトを運航します。

秋田県角館武家屋敷付近の桜並木

また、秋田県では、郷土料理教室や観光、ワイナリー巡り、国の重要文化財に指定されている歴史劇場の見学などに参加できる特別プランが用意されています。

もちろん、周辺の宿泊施設やコワーキングスペースの情報も提供しています。

Q:お客様からどのような反応がありましたか?パッケージは好評ですか?

螺良: 昨年11月に販売を開始しましたが、残念ながらコロナの影響で販売が伸び悩み、当初の目標を見直すことになりました。また、一般のお客様ではありませんが、12月にはANAグループ社員を対象としたモニターツアーを実施し、知見のあるメンバーで意見交換したところ、他の都市と比べて一人ひとりの趣味・嗜好に応えることができるコンパクトシティとして、日本人に最適であるとの意見が挙がりました。現在はコロナもようやく落ち着き、予約も増え、修正目標の達成に近づいています。

小谷: ANAワーケーション秋田は4月中旬から始まります。お客様の反応はこれからです。
秋田犬ツーリズムは、秋田でワーケーションを推進する非営利のDMOです。秋田県は、航空旅客の拡大と空港の強化を目指しています。民間企業であるANAグループが入り、ワーケーションの取り組みで街をつなぎ、長期的に地域に関係する手段を提供することができます。それが、このプロジェクトの次のステップだと考えています。

Q:地域経済の活性化に向けて、それぞれの地域が抱えている課題は何でしょうか?

小谷: 私は3年前から秋田に住み、仕事をしています。ここは伝統的にさまざまなものが充実した地域です。米の生産量も全国3位で、自然災害の影響もあまり受けません。おいしい食べ物や自然、温泉を楽しめます。その一方で、人口減少が著しいという課題もあります。ANAは、秋田に輸送手段を提供する企業として、秋田県民が課題に直面し、解決策を見出すための重要な役割を担っていると考えています。

秋田でのワーケーションを推進する小谷さん

角屋: 他の自治体同様、熊本市でも関係人口の創出に取り組んでいます。ワーケーションもその手段のひとつです。熊本市はアクセスも良く、水もきれいで、全体的に住みやすく、働きやすい街です。第二拠点の候補地としても最適ですが、その良さを知っている人はまだ多くはないでしょう。ANA ワーケーション熊本が、日本の皆さんに熊本の良さを知っていただくきっかけになればと思います。

螺良: 私は、熊本市がPRしたい地域の魅力と、ターゲットとなる層のニーズをうまく合致できるように努めています。他の地域との差別化により、一人でも多くの方に熊本を第2の故郷のように認識してもらうことが、目下の課題です。ANAあきんどは、熊本の大きなの魅力の一つは「食」だと考えています。「食」は熊本へ再訪してもらうために重要な要素だと捉えています。

熊本を単なるワーケーションの目的地とするだけでは、中長期的な誘客促進は難しいと思います。ワーケーション先を選ぶ側の立場でニーズを考え、その土地でしか体験できない素材を付加価値として提供することが重要だと考えます。

Q:自治体や団体との提携はどのようなものだったのでしょうか?また、ANAグループへの期待はいかがでしょうか。

小谷: 集客はまだまだですが、これまでの貢献は効果があったのではないかと思います。ANAグループは、秋田に住み、秋田で働くことを推奨するパートナー企業として、補助金の交付を受けることが認められました。現在、ANAの客室乗務員が県庁や市役所、一般企業で勤務しています。

秋田県・乳頭温泉郷の温泉を楽しむ人々

ANAは60年前から秋田に就航しています。自治体としては、ANAグループはもちろん、社外にも秋田をアピールしてくれることを期待していると思いますし、私たちも期待に応えたいと思っています。

螺良: 自治体の皆さまがまず期待することは、なんといっても誘客促進だと思います。ANAマイレージクラブ会員を始めとする顧客基盤を活用したい、というお話をよくいただきますし、まさに自治体の皆さまのターゲットと合致すると捉えています。一時的な観光誘客にとどまらず、中長期的にステークホルダーと地域をつなぐことが、私たちの使命です。

角屋: 確かに、ANAがお客様を呼び込むことは期待されています。長期的に見て、誰がベストマッチングになり得るのか、知恵を絞る必要があると思っています。

Q:プロジェクトの今後の展開について教えてください。また、海外からの観光客に向けた取り組みを展開する予定はありますか?

螺良: 熊本市はブリジャートラベル(レジャーを兼ねた出張)先として最適な場所です。来年度は、お客様のニーズの変化にフォーカスし、ANAワーケーション熊本のサイトやパッケージをリニューアルして、継続的な集客につなげたいと考えています。

熊本を訪れる人々に、地酒と料理を提供する「洲さき」

また、海外からのお客様については、長期的な受け入れ態勢を整える必要があります。どの国をターゲットにすればいいのか。コロナによって、彼らのニーズや期待するポイントは変わったと考えられます。

角屋: 今後は、今年の経験を生かし、より多くの方にワーケーションで熊本市に来ていただけるよう努めたいと思っています。感染状況が落ち着けば、企業やグループでの誘致にも取り組んでみたいと思っています。

西のサウナの聖地と言われる、熊本の「湯らっくす」

小谷: ワーケーションの推進は、日本ではまだまだこれからだと思います。秋田をワーケーションの有力候補として紹介するためには、他の地域との差別化をさらに進め、「なぜ秋田なのか?」という問いに答えられるようにしなければなりません。

もちろん、既存の観光資産のブラッシュアップが重要であることは言うまでもありません。また、県を巻き込みながら、単なるパッケージ旅行ではなく、持続可能なプランを作っていきたいと考えています。SDGs(持続可能な開発目標)関連の取り組みなど、潜在的なステークホルダーに秋田に来る動機付けをする必要があるのです。

海外からの観光客にとって、秋田は東北地方で唯一、国際線の直行便がない県です。かつて秋田県は、秋田-台湾間の航空会社の誘致を試みました。コロナにより、再び原点に立ち返り、台湾を国際線の候補地として考えています。

国際線の誘致には自治体も多額の費用がかかる可能性があり、リスクも高いです。それよりも、乗り継ぎが抜群に良いANAの国際線からANAの秋田-羽田便を利用して、秋田に誘客することを提案したいです。