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日本ショッピングセンター協会 関東・甲信越支部主催研修会をANA Blue Baseにて開催

ANAは一般社団法人 日本ショッピングセンター協会より「業界を超えた相互勉強会」の提案を受け、9月14日に『航空×SC 異業界セッション「アフターデジタル時代の接客とUXの進化」~市場競争を勝ち抜く接客の在り方とは~』をテーマとした研修会に参加しました。

研修会は、「ANA Blue Baseの見学ツアー」と「接客の取組みに関する講演会」の二部構成で行われ、日本ショッピングセンター協会に加盟しているディベロッパー企業、テナント企業等から30名ほどが参加しました。

見学ツアーではANAの職員が同施設にてどのような訓練を行っているかなど、ANAの接客・サービスの基本とも言えるポイントを見学していただきました。

講演会の前には、ANA Blue Baseの見学ツアーを実施

講演会では、まず主催者を代表して、日本ショッピングセンター協会 関東・甲信越支部支部長を務める㈱東急モールズデベロップメント 相談役の秋山浄司氏が登壇。今回の研修会を開催した経緯として、「今回のテーマはUX。顧客体験価値とも言いますが、なかなか捉えづらい概念でもあります。顧客体験はリアルのお客さまが体験をして、そこで何か感じていただき、喜んでいただくこと。その成果というのは『笑顔』なのではないかと思います。ANAの企業理念・ビジョンには『笑顔』という言葉が入っており、ANAとコラボレーション・アライアンスを組むようなことができれば、違った世界が開けるのではないか」と話がありました。

ANAからのプレゼンでは「ANAが提供する新しいサービスモデルと空港環境・旅客係員の役割変化」をテーマとし、講師として最初にCX推進室CX戦略部 今田麻衣子さんが登壇しています。


ANA CX推進室CX戦略部 今田麻衣子さん
「ユニバーサル」、「衛生・清潔」、「環境への配慮」の3つのキーワードを元に、新しい取り組みをスタート

今田さんは、「コロナ禍でお客様が激減した2020年度の夏頃に、この先どうなっていくのか。どうしていくのか」ということを社内で徹底的に議論したとのこと。「どんな人が乗るのだろうかということや、どういうお客様がこれから空港を利用してくれるのだろうか、といった点を真剣に考えました」と話しています。

そこで「グローバル観点で見たときに、まだANAを知らない方々がたくさんいます。さらに今後飛行機を利用したいと思っている方々も、世界中にはたくさんいるはず。そういった層にアプローチしていくべき」と、ターゲットとなる客層を明確に設定。さらに「体験したお客様にリピーターになっていただく。ほかのお客様にすすめていただいて、航空を利用する人を増やしていく」ことにポイントを置き、新しい体験をつくっていくと語りました。

今田さんはさらに、この取り組みを進めていく際の3つのキーワードとして「ユニバーサル」、「衛生・清潔」、「環境への配慮」をピックアップ。これらをスマートフォンで結び、お客様に体験していただくシステムとして「ANA SMART TRAVEL」の提供をスタートしたと説明しています。

さらにANA SMART TRAVELという考えのもと、空港環境や人的サービスがどう変わっていくのかについて、オペレーションサポートセンター OSC空港サポート室 旅客サービス部 岩村優憲さんがプレゼン。岩村さんは空港環境について「予約の時点からご搭乗まで、欠航の通知などイレギュラーな対応も含めて、すべてお客さまがお持ちのスマートフォンの中でサービスの利用を完結できる。こういう世界を作っていきたい」と話し、ANA SMART TRAVELを使った新しいスタイルの搭乗フローについて説明を行いました。


ANA オペレーションサポートセンター OSC空港サポート室 旅客サービス部 岩村優憲さん


「アクティブラーニング」を取り入れた教育訓練を導入

また、人的サービスについては、お客様の求めた時と場所でお困りごとを解決していくことが重要とのこと。そのため現在地上係員はすべてiPadを携帯しており、その場で課題解決を図る環境を構築。「iPadにはお客さまが見ている情報を表示できるので、お客様と一緒の目線で案内が可能。また情報連携の通信ツールも入っているので、地上係員同士だけでなく、客室乗務員とアプリケーションを通して連携し、地上と上空の隔たりなくタイムリーにお客様へご案内する環境の構築も検討しています」と語りました。
また、その場で課題解決を図る環境を構築するためには、教育訓練での能力開発もこれまでと違ったアプローチが必要と説明。これまでの「暗記型・座学・単一」から「検索型・実践・個性」へと変化しており、インプット型教育とアウトプット型教育のサイクルを回す「アクティブラーニング」を取り入れた教育訓練を行うことがポイントとしています。

講演会では、ANAに続いて日本ショッピングセンター協会にも加盟している㈱アダストリアからもプレゼンが行われています。アダストリアは東京・渋谷に本社を置き衣料品や生活雑貨、家具、飲食業態など30以上のブランドを展開。国内約1300店舗、海外約70店舗の実店舗を運営している専門チェーンで、正社員は6000名ほどでアルバイトスタッフを含めると1万5000人ほどが就業している企業です。

アダストリアの会社概要

プレゼンに登壇した㈱アダストリア 広報部長 風間陽子氏は、同社が取り組んでいるスタッフと同社独自のSNS「STAFF BOARD」を使った取り組みについて説明。現在は4000名以上のショップスタッフが毎日のスタイリングや、調理家電を使って料理をするレポートなどを「STAFF BOARD」に投稿しているそうです。

㈱アダストリア 広報部長 風間陽子氏

「STAFF BOARD」は「ECサイトのスタッフが上げる写真というと、白い壁をバックにコーディネートを見せている写真をイメージされると思いますが、子どもとお揃いのコーディネートで遊園地に行った投稿だったり、今朝は上手に朝ご飯を作れたなど、自分のライフスタイルにあった好きなものを発信する」ことをコンセプトにしています。

さらに希望するスタッフには、個人のSNSアカウントとの連携も可能。そのため、個人のインスタグラムなどで、会社のサイトを使って自社のブランド商品を紹介しながら、自分自身のファンも増やせるというような仕組みになっています。


アダストリアのスタッフがライフスタイルを発信する独自コンテンツ「STAFF BOARD」

このようなスタッフ個人の発信力を強化している背景として、風間氏はANAと同じくコロナ禍がきっかけと説明。「2020年4月、5月の緊急事態宣言のときにリアル店舗が全店舗休業となりました。2週間ぐらいは本当にすべてが閉まっていました。お店が空いてないということは売上ゼロです。幸い我々はECを持っていましたので、その中でどうやって売り上げをつくるかということが最初の課題。というより足元ですぐに対応しなきゃいけないこととして取り組みました」と話しています。

その際に出勤できない中、スタッフが自発的に何かできることがないか、と始めたのが、日常の中で商品を使っている写真をSNSにアップすること。「家の中でかっこよく映るポイントを工夫しながら探したりと、投稿を継続してくれるスタッフが多かった。そこで会社としても何かサポートできないかと、フォロワーの多いスタッフや投稿をやりたいと希望するスタッフには、商品を会社から提供したり、新商品のPRをお願いするようにしました」と、現在の取り組みの核となる部分がスタートしたそうです。「コロナで休業が続いていた時期は、STAFF BOARD経由の売り上げが、全体の半分以上を占めるほどの影響力がありました」と風間氏は話しています。
 
現在ではスタッフの自主的な動きに頼るだけでなく、本社の中にスタジオを作り、そこからSTAFF BOARDのライブ配信機能を使って、専門の撮影班が配信を行うといった取り組みまで行っているとのこと。
とはいえ、「オンラインで接客をして販売しているので、お店はなくても大丈夫というわけではありません」と風間氏は指摘。「STAFF BOARDでフォロワーの多いスタッフ、あるいは売り上げの高いスタッフというのは、店舗でも非常に接客が上手で高い売上高を取るスタッフたち」とのこと。その理由として風間氏は「お客様の声を聞いてニーズを引き出し、商品を提案するという意味では、リアルもオンラインも接客はまったく変わらない」と説明しています。

また、アダストリアでは、「SSC(サービス・スキル・サーティフィケーション)」接客スキルの認定制度を設けて、1年間をかけて、スタッフの販売スキルを認定する選考会を毎年開催しているとのこと。この選考会に参加したスタッフもリアルとオンラインと接客で違いはないと話しているそうです。

実はANA 岩村さんもプレゼンのなかで「Haneda's Prideコンテスト」など接客スキルを競うコンテストをANAでも開催していることを説明しています。業界こそ違うものの、リアルの接客がベースとなって、オンラインへのサービスへとつながっているのは同じというわけです。

研修会ではさらに、アダストリアが行った選抜スタッフによるリアルイベント効果や、ANAからは無人決済店舗「ANA FESTA GO」の導入事例。さらにはANAのTikTokをはじめとするSNSへの取り組みとその狙いなどをプレゼン。異業種ならではの違ったポイントや、実は共通する課題や成果など、有意義な意見交換が行われた研修会となっていました。