アンマーよ

「という訳で、お袋に何プレゼントしたらいいか、いいアイデアない?」
「あと10日くらいだもんね。無難に花とかは?」
「カーネーションの鉢植えあげたことあるんだけど、かなり育っててもはや庭を占領してるんだよな」


と言ってスマホの写真を見せてくる。赤とピンクの立派なカーネーションだった。


「それなら花じゃない方がいいかもね。食べ物はどう?」
「うーん、最近体型を気にしてるらしくて「お母さんの前で甘いもの食べないで!」って言われたからなぁ。ご飯は普段から俺も作ったり手伝ったりするし、特別感はないよな」
「なるほどね」

僕は母の日のプレゼントなんて縁がなかったから、なかなかネタが思いつかないな。 ちょっとネットで調べてみるか。花、化粧品、スイーツ、アクセサリー、エプロン……。どれもこれもセンスが問われるな……。

「うーん……。あ、歌はどう?物珍しくはあるよね」
「お!歌いいな!ちょうどピッタリの曲知ってるしな!」
「(いきものがかりの『ありがとう』とかかな?)提案しておいてなんだけど、僕楽器とか歌とか出来ないからね」
「ただCD流して歌うんじゃ味気ないし、助っ人でも探してみようかな!」

母の日当日、僕は撮影係としておるばくんの家にやってきた。お店の駐車場を使ってミニライブをやるんだって。規模が大きくなってきたな。

「ましゅ、来てくれてありがとうな!こっちは隣のクラスのタケちゃん」
「初めまして!俺はアコギ担当」
「あ、どうも……。」
「今日の演奏のためにゴールデンウィーク返上で練習してくれたんだよな」
「暇だからいいよ!」
「いい人すぎる」

お客さんもなんだなんだと集まってきて、おるばくんのミニライブが始まった。
「お袋!いつもありがとうな。感謝の気持ちを込めて歌います。かりゆし58で『アンマー』」

アンマーよ アナタは私の全てを許し
全てを信じ全てを包み込んで
惜しみもせずに何もかもを
私の上に注ぎ続けてきたのに
アンマーよ 私はそれでも気付かずに
思いのままに過ごしてきたのでした

(いい曲なのでみんな全部聴いてください)

厨房でお手伝いする時に親父さんのCDをよく流してたから、それで知ったのかな?いい曲センスだ……と思いながらカメラを回してると、お袋さんが号泣してた。喜んでもらえて良かったね、とおるばくんの方を写したら、タケちゃんもつられて泣いてた。いい人すぎる。

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