「ブス」と呼ばれて。

私は、幼少期から母親に「ブス」とか「デブ」とか言われて育った。名前を呼ぶ代わりに使われることもあった。
あまりに日常的に言われすぎてきたので、30歳を過ぎた今でも自分のことは「ブス」だし「デブ」だと思っている。

ただ、それがコンプレックスだとか、自分のことが嫌いだとかそういうネガティブな言葉で悲観的に捉えているわけでは決してなくて、単純に事実として「私はブスだしデブなんだな」と思っていて、それはたとえば「目は2つある」とか「鼻はひとつ」とか当たり前に備わっているものとして認識している、という感覚だ。

母親との関係も至って良好だし、憎んだり恨んだりとかには無縁だ。離れて暮らしてはいるが、ふつうの親子だと思う。
そうやって一般的には卑下した表現で呼んでいたことも、母が娘である私のかわいさ余って言っていたことだとちゃんと分かっているからだ。照れ隠しみたいなもんで。ひねくれた愛情表現。

でも、それでも時々思うことがある。

母が、幼少期から私に「かわいいね」と言って育ててくれていたら。きっと今の私の容姿に対する自己評価は違っていたのかもな。
そこに愛があったとしても、やっぱり「ブス」と呼ばれて育ったことは不幸だと思う。

親から言われたことって、たぶん親本人が思っている以上に子供に影響を与える。
親の教育ってある意味刷り込みみたいなもんだし。いいことも、あんまりよくないことも、「そうなんだ」って何の疑問も持たずに思っちゃうことの方が多いように思う。

「ブスじゃないよかわいいよ」
「全然太ってないよ」
「そんなこと言っちゃダメだよ」
って、他人に何度言われたって私は本当の意味では理解ができない。
だってそうだと思って今日までずっと生きてきてんだから。何がダメなのかも分かるけど、わからない。

何十年も積み重なったこの呪いは簡単には断ち切れない。

ただ最初に言った通り、私は別に悲観しているわけではない。事実として受け入れているだけであって。

「私はブスだしデブだけど、自分のことすごい好きだから別にいんじゃん?」って感じ。こういう風に考えられるとこも含めて好き。

でも子を持つ親たちには言いたいな、私みたいにポジティブに考えられる人間ばっかじゃないから、子供には素直に「かわいい」を伝えてあげて欲しいなって。

まあうちの母親みたいな天邪鬼がそんなにたくさんいるとも思えないけど笑