祇園さんの蜃気楼

7月の京都と言えば祇園祭。一カ月に及ぶ祭事が続き、クライマックスとしての巡行があります。

若い頃は屋台が並ぶ街中を山鉾を見るよりも買い食いして練り回ることが楽しかったのが、年齢を重ねるとともに暑い中わざわざ人混みに揉まれるなんてまっぴらごめんと、とんと関心が無くなりました。宿泊のお客様にご案内するための情報は頭の中に入っているので、わざわざ出歩くなんてもう何年もしていません。

が、好きな作家である森見登美彦氏の祇園祭に絡むお話を読んでからは、早朝か深夜の仕事の行き帰りに、敢えて山鉾町を通過するようにしています。

ひと気のなくなった街中で佇む山鉾はそれだけで幻想的で、森見登美彦氏の描く、夢か現、その狭間を彷徨う人々の物語が目の前に広がるようで、京都の魔力のようなものを感じられる夏の京都の密かな楽しみとなっています。

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