5.通信路
相互情報量
相互情報量$${I(X;Y)}$$は、X とYの「依存度」を表す指標である。
$${I(X;Y)=H(X)-H(X|Y)=H(Y)-H(Y|X)=H(X)+H(Y)-H(X,Y)}$$
関係性を図示すると、以下のようになる。
$${I(X;Y)=H(Y)-H(Y|X)}$$から、
$${H(Y)=H(Y|X)}$$で$${I(X;Y)=0 (\min)}$$
$${H(Y|X)=0}$$で$${I(X;Y)=\max}$$
$${p=0,1}$$で$${I(X;Y)=\max}$$となり、
$${p=0.5}$$で$${I(X;Y)=0}$$となる。
通信容量
通信路が運ぶ情報量である相互情報量$${I(A;B)}$$の最大値をその通信路の通信容量と呼ぶ。
生起確率を$${P(a_j)}$$として、
$${C=\displaystyle\max_{P(a_1)+P(a_2)+ \cdot \cdot \cdot +P(a_j)=1}I(A;B)}$$
2元対称通信路
誤り率$${p}$$の2元対称通信路
通信路行列を考える。
$${T=\begin{pmatrix} 1-p & p \\ p & 1-p \end{pmatrix}}$$
入力確率変数$${X}$$の値が$${x}$$となる確率$${p_x(x)}$$を$${p_x(0)=a ,p_x(1)=1-a}$$としたとき、
通信路容量$${C}$$を求めたい。
入出力エントロピー
エントロピー$${H(X)}$$は、
$${H(X)=-(p(0)\log p(0)+p(1)\log p(1))}$$
$${=-(a \log a+(1-a)\log (1-a))}$$
次に出力エントロピー$${H(Y)}$$を考える。
式は、$${H(Y)=-(p(y_0)\log p(y_0)+p(y_1)\log p(y_1))}$$となるが、$${p(y_0),p(y_1)}$$はいずれも示されていないので、導出をする必要がある。
図1の2元対称通信路は何を示しているのか?
一度、以下のような通信路線図を考える。
節点は、入出力で有向枝は条件付確率を示している。
入力シンボルは、独立に生起しているから、
出力するシンボル$${b_2}$$の確率$${p(b_2)}$$は、
$${P(b_2)=\displaystyle \sum_{k=1}^i P(a_k)P(b_2|a_k)}$$
要するに、出力$${Y}$$各生起確率を出したいときは、入力の生起確率とそれの枝の本数分(条件付き確率)の和である。
行列式より、$${\bold P(b_k)=\bold P (a_j)\bold T}$$
このことを踏まえて、2元対称通信路を考える。
0となるシンボル$${y_0}$$の生起確率$${P(y_0)}$$は、
$${p(y_0)=p(x_0)p(y_0|x_0)+p(x_1)p(y_0|x_1)}$$
$${=a(1-p)+p(1-a)=a+p-2ap}$$
したがって、$${{H(Y)}=-((a+p-2ap) \log(a+p-2ap)+(1-a-p+2ap) \log(1-a-p+2ap)}$$
条件付エントロピー
$${H(Y|X)=\displaystyle \sum_{j=1}^J P(x_j)(-\displaystyle \sum_{k=1}^Kp(y_k|x_j)\log P(y_k|x_j))}$$
$${H(Y|X)=-\displaystyle \sum_{j=1}^J\displaystyle \sum_{k=1}^Kp(y_k,x_j)\log P(y_k|x_j))}$$ ※結合エントロピーは順不同だが、情報量と合わせると間違わない。
したがって、
$${H(Y|X)=-(p(0,0) \log p(y_0|x_0)+p(0,1) \log p(y_0|x_1)+p(1,0) \log p(y_1|x_0)+p(1,1) \log(y_1|x_1))}$$
$${=-(1-p) \log(1-p)-p \log p}$$
通信路容量
$${C=\displaystyle\max_{P(x_0)+P(x_1)=1}I(X;Y)}$$
は、何を示しているのか?
まず、計算を進める。
$${C=\displaystyle\max_{P(x_0)+P(x_1)=1}(H(Y)-H(Y|X))}$$
前項で計算を省略したが、
$${H(Y|X)=-((1-p) \log(1-p)+p \log p)}$$とpのみの式になる。
通信路容量は、入力シンボルの組み合わせで最大値になる組み合わせ
であることを示している。
したがって、誤り率$${p}$$は定数で、第2項は無視できる。
$${=H(Y)-\displaystyle \sum_{k=1}^Kp(y_k|x_j)\log P(y_k|x_j)}$$
では、$${H(Y)}$$が最大値を取るには?
エントロピーの範囲は、
$${0 \leq H(Y) \leq \log J }$$ ($${J}$$は事象数)
であるから、最大値は1である。
したがって、$${C=1-H(Y|X)}$$
$${p(x_0),p(x_1)}$$の組み合わせは、どうすれば良いか?
$${p(x_0)=0.5 ,(p(x_1)=1-p(x_0)=0.5)}$$のとき、$${H(Y)=1}$$
無限に直列につないだ2元対称通信路
大学院試や資格等で出てきそうな問題に取り組む。
前の出力と後ろの入力が直列でつながっている。
(OUT:0→IN0)/(OUT:1→IN1)
2段の2元対称通信路
初めに2段の2元対称通信路をつなげたときを考える。
入力は不変だが、出力は変わる。
要するに、通信路行列が変わることがいえる。
$${\begin{pmatrix} z_0 z_1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix} y_0 y_1\end{pmatrix} \bold T}$$
$${\begin{pmatrix} y_0 y_1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix} x_0 x_1\end{pmatrix} \bold T}$$
$${\begin{pmatrix} z_0 z_1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix} x_0 x_1\end{pmatrix} \bold T^2}$$
したがって、通信路行列の2乗を考えればよい。
1段と同様に、通信路容量を求めると、
$${C_2=\displaystyle\max_{P(x_0)+P(x_1)=1}(H_2(Y)-H_2(Y|X))}$$
$${H_2(Y)=1}$$であるから、$${H_2(Y|X)を計算すればよい。}$$
n段の2元対称通信路
加法的2元通信路
通信路内の誤り源$${S_E}$$が、各時刻に$${E\in\{0,1\}}$$が発生する。
通信路は、入力$${X\in\{0,1\}}$$に対して、出力$${Y\in\{0,1\}}$$。
$${\oplus}$$は、排他的論理和(XOR)を示している。
排他的論理和:「論理演算の一つで、二つの命題のいずれか一方のみが真のときに真、両方真・偽のときは偽となるもの」
$${X=Y=0}$$のとき$${E=0}$$
$${X=Y=1}$$のとき$${E=0}$$
一方で、
$${X=0 \neq Y }$$のとき$${E=1}$$
$${X=1 \neq Y}$$のとき$${E=1}$$
$${\bold {E=1}}$$のとき、$${X \neq X\oplus E =Y }$$で誤りが発生する。
相互情報量$${I(X ;Y)}$$は、
$${I(X;Y)=H(Y)-H(Y|X)}$$
$${=H(Y)-{H(X\oplus E|X)}^※}$$
$${=H(Y)-H(E)}$$
※$${{H(X\oplus E|X)}=P(X=0)H(E|X=0)+P(X=1)H(1 \oplus E| X=1)}$$
$${X,E}$$は独立しているから、
$${H(E|X=0)=H(E), H(1\oplus E|X=1)=H(1\oplus E)}$$
さらに、$${P(1\oplus E=0)=P(E=1)}$$であるから$${H(1 \oplus E)=H(E)}$$
したがって、通信路容量$${C}$$の導出は入力$${X}$$の確率分布に関して、$${H(Y)}$$を最大にすればよい。
$${X,E}$$が独立だから、$${P_X(0)=P_X(1)=1/2}$$であれば$${E}$$に依らず、$${P_Y(0)=P_Y(1)=1/2}$$となる。$${H(Y)}$$は、最大値1を取るので、
$${C=1-H(E)}$$を得る。
誤り源が無記憶定常情報源
2元対称通信路として考える。$${P(E=1)=p,P(E=0)=1-p}$$
$${H(S_E)=-(p \log p+(1-p) \log (1-p))}$$より、
$${C=1-H(S_E)}$$
誤り源がマルコフ情報源
定常分布において、状態$${s_0,s_1}$$にいる確率を$${\pi_0,\pi_1}$$とする。
$${H(S_E)=\pi_0 H(E|s_0)+\pi_1 H(E|s_1)}$$
$${E=1}$$であるから、エントロピーは、
$${H(E|s_0)=H(0.4)=-0.4 \log(0.4)=0.5288}$$
$${H(E|s_1)=H(0.7)=-0.7 \log(0.7)=0.3602}$$
状態分布$${\pi}$$は、平衡方程式から求める。
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