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【連作創作群】澄川市物語 命の交錯 第三節 春時雨

 公園から帰り着く頃、ちょうど雨が降り出した。慌てて花霞を暖かい部屋へと連れて行く。花霞は窓の向こうの降る雨を不思議そうに見ている。
「花霞ちゃん。あれは『雨』、というのよ。水がお空から降っているの」
 優しい花の声と顔を見てまた窓の外が気になる花霞である。
「ちょっと待ってて」
 花は一瞬、花霞を浩一に任せるとすぐ戻ってきた。小さな器に水を入れている。
「はい。花霞ちゃん。これがお水よ」
 赤子特有のぽちゃぽちゃした手を持って指を器につける。花霞の目がまんまるくなる。何に驚いたかは口が達者でないためわからないが、水というものを知って驚いたのだ。その表情がまたかわいらしい。
「まぁ。花霞ちゃん。なんてかわいいお顔なの。この世界には花霞ちゃんの驚くことがいっぱいあるわ。それをママとパパと一緒に知っていきましょうね」
 しゃべりは絵本の読み聞かせで他の子よりも達者になっているが、世間を知らない。他の子に比べてまだまだ知ることは多い。今の顔を何度も見ることだろう。それがうれしい花と浩一だ。
 あんなに小さく一生懸命に生きようとしていた子がこんなに大きくなってまたさらに生きようとしているのに感無量な両親である。
 そこへ、チャイムがなった。歩けるようになっている花霞はとっとと、と音にひかれるように歩いて行く。
「花霞ちゃん!」
 あわてて抱っこして玄関に向かう。
「花屋elfeeLPiaです。お届け物に来ました」
 しっかりした声が返ってきた。この声は店長の向日葵だ。
「ひまちゃん? お届け物?」
 玄関を開けるとぬっとマーガレットの花束が飛び出てきた。
「Barのマスターからの贈り物です」
 向日葵より少し小さい、アルバイトの莉々亜が元気よく言う。花霞はその白い花弁をじっと見つめていたかと思うときょろきょろしだした。
「花霞ちゃん?」
「花霞ちゃん? 向日葵だよ。わかるんだね。その目を大事にしてね」
 そっと向日葵が言う。優しいまなざしで花霞を見ていた。どういうわけか二人の間にはテレパシーでもあるのか、花霞はこくん、とうなずいて笑顔になる。
「花霞ちゃん。かわいいー。リリーにください」
 莉々亜が言う。
「自分で産むのね。邪魔者はさっさと帰る。じゃ、花さんまた」
 出て行きかけた向日葵はふと振り向くという。
「マーガレットの花言葉は『健康』、『真実の愛』です。叶えばいいね、花霞ちゃん。では」
 向日葵は雨の中莉々亜を引っ張りながら帰って行った。花霞はばいばいと手を振っている。
「健康」。花霞の一番大事なことだ。マスターも粋なことをしてくれる。いつの間にか背後に居た夫、浩一が花束をとる。
「浩一さん?」
「花束と記念撮影。マスターに持って行くよ」
「いいわね。花霞。ママとパパとまたお写真撮ろうね」
 また春時雨が幸せをひとつ運んできてくれたのだった。


あとがき

シムシティ小説第三弾です。どこで誰がどうなるかわからないこのシリーズ。とりあえず、二人の赤ちゃんの話が続くはずなんだけど周りの人の話も乱入。向日葵のなれそめとかね。花屋elfeeLPiaの向日葵の秘密の恋の事も書きたい。本編では出なかったあの二人がどうなってるか。第二シリーズの予定がこっちにはまってしまい、続きがない。澄川でシムシティです。ってわかるのかしら。シムシティで。

寝ようと思うけれど、サイトが気になる。二つのテンプレート組み合わせたので、そのアンバランスなところが気になって。小説用に全体を組み合わせたテンプレートがないもんで。あとはナビゲーション機能を外したり。あると延々とリンクをたどらないと行けない。あとがき書いたり。こいつら頑固だな、とほんとに殴りたい気になる主役達の話とこの純粋な乳児のぽてぽて歩くのを考えたら安らぐ~。ここ。花霞ちゃん、すくすく育つのよ。と、書いて投稿します。って日付越えてらー。

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