あれやこれやの東方Project 〜原曲から勧めるべき作品を考える〜

はじめに

自身が熱烈に好きなものは、とことん資料を揃えて完璧なディベートを行いたいフシがある。相手の意思を顧みない感情なので、迷惑極まりないと言われればそれはその通りではある。
しかしながら、溢れる愛とはそういうものであるので仕方ない。
タイトルからお察しの通り、私の愛は東方Projectに全て割かれている。中でも私が愛を訴えるのは、東方Projectの音楽にあった。
「何がいいのか」と聞かれた時、お粗末な語彙力では即座に回答ができない。情けない。だからこうして、書き残しておくことにした次第である。

事の発端は、いつものように説明のしようがない、ただただ作品愛に溺れるような感覚の中で、ひとつの疑問がチラリズム。

実際問題、東方原作は何から勧めればいいんやろなぁ?

由々しき事態、とまでは言わないまでも、将来的に誰かに東方Projectを勧める上で「コレやっとけ!」的な事が言えないと非常にまずい。オタクとしてまずい。
思った私は発起し、今に至るわけであるが……しかし困った事がある。
別に全作品やってるわけじゃないんだよな、という事。
今はもうSteamで三部作以外のナンバリングはリリースされているのでプレイは可能なわけであるが、万年EASYシューターの私にとって一気に消化するにはムリがある。未プレイの整数ナンバリングは花天虹だけなんだが。

……とりあえず全作品プレイはしてなくても、全作品の全曲はしっかり聴き終えているので、今回は原曲を聴いた上での評価に重きを置いて「初見さんはこれやるといいよ」的な勧め方をしようと思う。

Win版東方三部作 -黎明期-

東方紅魔郷 〜 the Embodiment of Scarlet Devil.

原曲評価:★★★★☆
初見お勧め度:★★★☆☆

ZUN氏の作品としてではなく、あくまで東方原作としての括りの中で一番最初の東方作品。二次創作や原曲アレンジも有名どころが多く活発で、触れ込みやすさとしては文句は無いと思う。
何より原曲初期特有のダウナー、暗い橙色のような退廃的曲調が個人的に好きで、同時期のCD作品である蓬莱人形も是非お勧めしたい。
しかしながらお勧め度を星三つと半端な数値にさせたのは、複数理由がある。

まず、台詞の言い回し、会話が独特すぎること。
自分としてはその要領を得ない、やや吹っ飛びがちな会話が独自性を持っていて好きではあるが、東方を全く知らない、あるいは二次創作から触れ込んだ人間に見せるにはあまりにも難易度が高すぎる。
後述の妖々夢以降は割と会話として読めるが、紅魔郷は会話というかメンチの切り合いみたいになっている。怖い。

もう一つは難易度にある。
得点での自機獲得や撃破での自機獲得があるにしろ、その自機を消費しうるだけの弾幕の難易度。慣れていれば簡単かもしれないが、やはり初見ということを考えれば少し勧めづらい部分はある。
ともあれ、やはり原曲自体は全作品でも群を抜いて勧めたいものが多いため、曲を目的にするのであれば最初にプレイする価値は十分にある。

おすすめ原曲
ほおずきみたいに紅い魂(一面道中曲)
ルーネイトエルフ(二面道中曲)
明治十七年の上海アリス(三面ボス曲)
亡き王女の為のセプテット(六面ボス曲)
☆紅楼 〜Eastern Dream...(スタッフロール曲)

※☆付きはおすすめ曲の中でもイチオシ

東方妖々夢 〜Perfect Cherry Blossom.

原曲評価:★★★☆☆
初見お勧め度:★★★★★

個人的な話になるが、今回作品を評価するにあたって、原曲の評価はなるべく第三者の目線ではなくあくまでも主観で評価をしている。
そのため、何でこんなに低いんだよ!的な事を言われても少し困る。そもそも評価が低いわけではなく、全曲が好きだから、泣く泣く一部を下げざるを得ないという状況である事を覚えておいてほしい。基点がゼロではなく、100点満点である事を念頭に置いていただき、再び作品の説明に戻る。

弾幕の評価、難易度、原曲評価と、全てが名高い妖々夢。正直初見なら妖々夢からでいいかな、と説明を放棄したくなるほど作品として完成され切っている。
けれども今回は全作品を照査していくため、ここで結論付けると私のnoteは終わりである。議題が覆るのでそれは困る。というわけで話を続けよう。

前述の通り、極端に高すぎない難易度と比較的簡単に増える自機、六面ボス、西行寺幽々子から放たれる弾幕がめちゃくちゃ綺麗な事も相俟って、プレイ済みの人が初心者に勧めることが多い。
ただし、私は逆張り厄介オタクなので勧めない。というか原曲評価で見たら勧められない。

……いや失敬。妖々夢は屈指の良曲揃いというのは分かっているけど、ここでダントツを出してしまうと後発が気まずいので……
公平性を持った目で見れば勧めやすさは一、二を争うほどだが、ここは私の主観note。独断と偏見を持たせると……。……いや、持たせても勧めたい作品ではあるけど……

ほ、保留で……

おすすめ原曲
☆無可有の郷 〜Deep Mountain(一面道中曲)
クリスタライズシルバー(一面ボス曲)
天空の花の都(四面道中曲)
アルティメットトゥルース(六面道中曲)
ネクロファンタジア(Phボス曲)

東方永夜抄 〜Imperishable Night.

原曲評価:★★★☆☆
初見お勧め度:★★★☆☆

前述二作品と比較してもモチーフとなった物語が最も分かりやすく、慣れ親しんだおとぎ話を深掘りして知ることもできるので、個人的にやりやすい作品だとは思う。
今回は二人一組の自機であるためキャラ同士の掛け合いを見られるので、そこもおすすめポイント。
主人公が敵として立ちはだかってくるしな。

ここまでの三部作は未だに非公式の人気キャラランキングで上位を張る事が多く、根強い人気が窺える。
自分自身、実は六面まで辿り着けていない数少ない作品でもあるため、再走したい意思はある。高校時代に慧音にボコボコにされた記憶が……

評価が中間地で落ち着いている理由は、上述の通り「最後にプレイしたのが高校の時」だからで、正当な評価が出来ない部分が多いのが理由。七年くらい前。
あまりにも杜撰すぎるが。

……いや、正直なところ、初めてプレイするよ!って人に永夜抄を勧めるのもアレかなと思うフシはあるので、ある意味正当と言えば正当なのだけど。
自機組のキャラクター像を知っておいた方がなおのこと楽しめる、という部分もあるので、上記三部作で言えばプレイするのは最後でもいいと思う。

おすすめ原曲
幻視の夜 〜Ghostly Eyes(一面道中曲)
もう歌しか聞こえない(二面ボス曲)
永夜の報い 〜Imperishable Night.(四面道中曲)
☆ヴォヤージュ1969(六面道中曲)
Eternal Dream 〜幽玄の槭樹(スタッフロール曲)

異色の対戦STG -第一次原曲過渡期-

東方花映塚 〜Phantasmagoria of Flower View.

原曲評価:★★☆☆☆
初見お勧め度:★☆☆☆☆

シリーズを通してみれば直近で東方獣王園の発表があったにせよ、対戦型の東方原作は異色中の異色なわけで、東方Project自体初見だよ、という人へ勧めるのも中々難しいものである。何より私自身プレイした事が無いから、正当な評価が出来ない。

本編の内容について詳細なレビューを行うことが出来ないため、ここでは楽曲の評価についてお話することにする。

文花帖からのアレンジ、風神少女もそうであるし、妖々夢から東方妖々夢をアレンジしたりと、過去作品の楽曲の色見を変えてぶっ込んできた今作。確かに東方妖々夢は花映塚アレンジの方が好きだし、スタッフロール曲に関して言えば全曲の中でも上位に来るほど(個人的な感情)。
紅魔郷のように初期の雰囲気があるわけでもなく、かと言って後述する守矢三部作ほど雰囲気を刷新したものではない、過渡期独特な雰囲気を持つ花映塚の楽曲は、実は結構な粒ぞろいなのだ。

……再三言うが、だからといって初見プレイを勧められるものでもないので、花映塚についてはここまでとしよう……

おすすめ原曲
東方妖々夢 ~ Ancient Temple(魂魄妖夢テーマ曲)
お宇佐さまの素い幡(因幡てゐテーマ曲)
彼岸帰航 ~ Riverside View(小野塚小町テーマ曲)
六十年目の東方裁判 ~ Fate of Sixty Years(四季映姫テーマ曲)
☆魂の花 ~ Another Dream...(スタッフロール曲)

花映塚という過渡期を越えて -守矢三部作-

紹介の前に

ここの三部作の説明をしたいがために、今回の議題を持ち上げたと言っても過言では無いと思う。
もちろん、ここの三部作以外にも思い入れのある作品は一杯ある。ただし、この三部作全てに対する熱量はそれらよりも多いため、ここでの論説には力が入る。
どうかオタク特有の早口を繰り出す構えを取った私について来て欲しい。

主題の通り、この三部作は花映塚という過渡期を経て、楽曲が新たな色を見せ始めた作品群でもある。それまでの狂気的なピアノのメロディであったり、初期の独特な暗さ、暗がりにもほんのりと見えた淡い明るさを持っていた楽曲たちは姿を変え、季節を名乗るようなメロディと優しく吹き付ける音色、ステージの雰囲気そのものをそのまま落とし込んだような楽曲が多く、初期三部作の明度低めな暖色をイメージさせる楽曲から、明度明るめな寒色へと変わったように感じる。
新しい顔を覗かせた楽曲たちと共に、各作品の説明に入りたい。

東方風神録 ~ Mountain of Faith.

原曲評価:★★★★★
初見お勧め度:★★★★☆

文句なし、誰にどう訊ねても満点に近い回答が返ってくる本作は、私個人としてもほぼ手放しで初見に勧めることができる。
東方Projectの世界観、信仰心と神社の関係性、幻想郷を取り巻く妖怪や神様のポップな描写が分かりやすく、ウィットに富んだ会話は比較的すんなり読める軽快さがある。
かといって極端に軽快なストーリーかと問われればそうではなく、信仰心が失われれば神社はどうなるか、霊夢のスタンスが今一度問われる作品のため、実は主題そのものは全作品の中でもしっかりしている。むしろ紅魔郷、妖々夢の異変の動機がフワフワしすぎている。

満点を付けられなかった理由は、バグ魔理沙ボムが霊撃システムへ変わってしまったことが最も大きく、そこが唯一の減点ポイント。空撃ち、ムダ撃ちはそのままショットのパワーに直結。ジリ貧で追い込まれるなんてこともままあるため、個人的にはスペルカードシステムの方が馴染みあってやりやすい。初心者には辛いシステムじゃないかな〜、なんて思ったり。

そして最もポイントを伸ばした理由は、やはり楽曲の外れが一切、全く、微塵も存在しないこと。
原作をプレイしていれば、「あー、この面のこの曲そんなハマらなかったな〜」なんてことは正直ある。結局曲単体として聴いてハマることもあるのだが。
風神録に関しては一面道中からEx面ボスまで、そういうプレイ時の外れが無い。遜色抜きで。
一面を開けば秋風に吹かれた風神録が始まり
二面へ出れば鬱蒼とした雰囲気の樹海を彷彿とさせ
三面で開けた山中と爽やかな情景が出迎え
四面で一変した風向きと夕闇が背景に迫り
五面で寂しさを含ませたメロディと共に異変の謎が紐解かれ
六面の荘厳な音楽と共に現れるは現世に信仰心を失った神様との対峙……
そしてEx面道中はゆらりとした日本を思わせる「らしさ」満点の楽曲でありながら、ボス曲はアップテンポ、初期三部作を除けば最後ではないかとも思われるピアノの狂弾

これ一つとして目を逸らされる要素が無く、各面でのキャラクターの魅力が強い。
胸踊らぬ瞬間がどこにも無い、まさに完璧としか思えない楽曲たちに、プレイする度に感動を覚える。
全作品を俯瞰せず、その時点でプレイ済みのもののみをピックアップする過去の自分であれば、間違いなく風神録だけを激推ししていたと思う。そんな作品。

おすすめ原曲
稲田姫様に叱られるから(一面ボス曲)
フォールオブフォール 〜秋めく滝(四面道中曲)
妖怪の山 ~ Mysterious Mountain(四面ボス曲)
信仰は儚き人間の為に(五面ボス曲)
☆御柱の墓場(六面道中曲)

(※ひっそりと各作品で5曲縛りをしていた苦しさがここに来てのしかかっている。つらい。)

東方地霊殿 ~ Subterranean Animism.

原曲評価:★★★☆☆
初見お勧め度:★★☆☆☆

楽曲と本編の難易度を天秤にかけたとすると、大体の作品は楽曲側が傾くので勧めることに躊躇いは無い。
しかしながら地霊殿、及び後述の星蓮船は、どう頑張っても初心者に勧められるようなものではないし、天秤は均衡を保つか、やや難易度側へ傾く。
曲は良いからな。勘違いするなよ。それを上回るえげつない難易度があるだけだからな。
ともあれ、思い入れある作品であることは事実。ひとまず作品の説明をしよう。

舞台は地底。序盤こそその舞台に相応しく暗〜〜い雰囲気を漂わせた楽曲が続くが、三面を迎えたらあら不思議。温泉街のように明るい背景と共に流れる「旧地獄街道を行く」がプレイヤーをお出迎え、さらに気風の良い姉御肌の勇儀さんが立ちはだかり、初見プレイヤーをボコボコにしていく。酷い。

東方Projectは主に一面、二面で新規プレイヤーを優しく出迎えるが、三面辺りから「遊びは終わりだ」と言わんばかりに様子がおかしくなってくる。四面に至っては「きみ三面までプレイしたね。それじゃあもう一人前だ!」と、とんでもない弾幕と共に本気を見せてくる傾向にある。事実、私も三面まで辛くもクリアしたと思えば四面の道中でコテンパンにされる経験を何度も積んできた。向いてないんじゃないの。

例外として一面から既にプレイヤーをボコボコにしてくる作品もあるが、地霊殿と後述の星蓮船は三面からが本番。まだ優しい。

楽曲に関して言えばアレンジも多くされたものもあり、東方Projectのファンの中では割と人気キャラが集まる。しかし初見にそんな事は関係ないので、今はとりあえず難易度と楽曲を鑑みて評価をさせてもらうことにする。

ちなみに私は六面までコンテを重ねて辿り着いたが、未だにクリア出来ない。無理

おすすめ原曲
緑眼のジェラシー(二面ボス曲)
旧地獄街道を行く(三面道中曲)
☆華のさかづき大江山(三面ボス曲)
少女さとり 〜3rd eye(四面ボス曲)
地霊達の帰宅(エンディング曲)

東方星蓮船 ~ Undefined Fantastic Object.

原曲評価:★★★★★
初見お勧め度:★★★★★

地霊殿で難易度のくだりを話しておきながら、星蓮船を勧めるのは非人道的ではある。確かにそう。
しかし、星蓮船のストーリーはそれを覆すほど緻密で良作なので、私個人として満点を付けた。
正直これがやりたかったまである

ネタバレに気を遣ってめちゃくちゃギリギリのラインで要約すると、「妖怪と人間の織り成すハートフルストーリー」である。……そうでもない?いや、そうだよな。
明確な悪意を持って主人公たちに立ち向かってきた者はいないし、敵側の言い分にも筋が通っているし、その背景を鑑みると主人公側が悪役じゃねーか、となるレベル。そんなことはないんだけどね。
通り魔的になぎ倒された多々良小傘を除いて、みんな聖から受けた昔の恩義を返すために必死に駆け回る姿は結構くる。復活した聖自身もまた尼さんだから人柄も良いし、あれ、これ霊夢の方が悪いのでは……?って感じ。

楽曲に関しては風神録と同様、今作もまた一面からEx面まで外れという外れがほぼ無く、一貫して楽しめるものになっている。
ただし再三述べているように難易度がえげつなく、ボムの使いどころを見極める必要がある。あ、ちなみに霊撃システム撤廃、スペルカードシステムへ戻った作品でもあるよ。

全体を通して地霊殿の薄暗い雰囲気とは真逆に透き通っており、楽曲においても一面から既にその様相を呈している。
……一曲、明るいけど透き通ってはいない曲があったな……四面道中……

今作から風神録五面ボスの東風谷早苗が自機として参戦。咲夜さんの跡を継ぐ形での参加となったが、目線は今に近しいためプレイヤーに親近感を抱かせる。やや神奈子頼りというか、自発的でない発言が見えるが。

こればかり述べて申し訳ないが、難易度どうこうは一旦抜きにして、是非初見にはプレイしてもらいたい一作。「東方Projectとはなんぞや?」を知るには少し物足りないかもしれないが、東方Projectの世界の中で生まれた物語としては非常に取っ付きやすい。ベントラーシステムに頭を悩ませること請け合いだとは思うけど。

おすすめ原曲
青空の影(タイトル曲)
春の湊に(一面道中)
小さな小さな賢将(一面ボス曲)
閉ざせし雲の通い路(二面道中曲)
スカイルーイン(三面道中曲)
時代親父とハイカラ少女(三面ボス曲)
キャプテン・ムラサ(四面ボス曲)
魔界地方都市エソテリア(五面道中曲)
☆☆☆感情の摩天楼 〜 Cosmic Mind(六面ボス曲)
夜空のユーフォーロマンス(Ex面道中曲)
空の帰り道 〜Sky Dream(スタッフロール曲)

我慢出来なくて好きな曲全部入れた。許して。

幻想郷は新しい時代へ ー第二次原曲過渡期ー

紹介の前に

紹介へ入る前に、再び作品についてのエピソードをお話させてもらいたい。
実は五、六年ほど前まで、私はただの原曲厨だった。今もそのフシはあるが。
作品やるより、好きな原曲聴く方がいい!アレンジはあまり好かん!という、厄介を煮詰めた人間だった。いや、それなりに厄介だな。
理由は単純で、私が東方にきちんとドハマりした要因が秘封楽曲、もとい音楽CDだったからである。
作品やらなくとも、これだけの素晴らしい曲が聴けるなら幸せだ!と、当時本気で思っていた。「原作をプレイすれば、もっと良い楽曲が聴けるぞ!」という発想はなかった。バカだ。
ちなみにこの時点でプレイ済みの作品は紅妖永紺であった。幅すげえな
確か三部作については「良作!」って感想を持って、紺珠伝に関しては「ムズすぎ!曲調も変わりすぎ!すきじゃない!」って感想を持っていた記憶がある。うーん、クソガキ。

実際、初期三部作のおすすめ原曲を見て「コイツもしかして……」と思った方もいるかもしれないが、私の原曲愛のルーツは秘封倶楽部にあったのだ。とはいえ、当時も結局鳥船遺跡辺りまでしか追えていなかったので、井の中の蛙に変わりは無い。大海を知った今は過去の愚かしさを呪うと共に、今なお新鮮な発見をできる気持ちを後に残してくれたと感謝している。

色々と能書きを垂れたが、結論から言うと「ここ以降の作品は直近になってようやくプレイをした作品である」ということ。……全体の評価において、プレイした時期はそんなに関係ないか。
それでは説明に入る。

ここのカテゴリでは二作品を括るべきと思い、それで収めている。整数ナンバリング以外のものを除外しているため、それらを含めるとここの数も変わってくる(心綺楼)。
淡く薄暗い暖色が明るみのある寒色へ変わり、更に楽曲の色味は移っていく。ここから先は何色とも形容しがたい、これまでの原曲の良い点をふんだんに取り込んだものが多い。ある種虹色への過渡期とも言えるかもしれない。虹龍洞はその集大成とも言える
そんな時期へ至るまでの、二作品を紹介する。

東方神霊廟 ~ Ten Desires.

原曲評価:★★★☆☆
初見お勧め度:★★★★☆

過去の作品にはあまり見られないポコポコした音源が多く、雰囲気は暗くとも楽しげな雰囲気が漂う今作は、東風谷早苗の会話あってこそ成り立つと思っている。この発言の真意は、ぜひ早苗で六面ボスまで辿り着いて見てほしい。
民俗学やおとぎ話、オリジナルをルーツとしてきた過去作と比較して、今作の主題はズバリ「日本の信仰」。実直且つ、その渦中を明確に、そしてオリジナリティをもって練り出された物語は非常にやりごたえと読み甲斐がある。
弾幕自体の難易度も(他作品と比べれば)割と簡単で、慣れていればノーコンティニューで六面まで辿り着くのはあまり時間がかからないと思う。私は五面ボスでしこたま残機を減らした。文句あるかこの野郎。

過去作には無かった、ボスが回復するシステムが一部ある。あそこの正攻法は今でも分からない。どうすりゃいいんだ、あれ。
斬新な行動に目を見張ることはあると思うが、そこは東方Project。耐え抜けばきちんと勝てる仕様である。耐える以外の方法を知りたいんだがな。

楽曲も人気なものが多く、とりわけボス曲はどれも粒ぞろい。大神神話伝や聖徳伝説は常に上位に居座るほどで、評価に違わず曲としての完成度が高い。
また、神霊廟時点ではまだ比較的守矢三部作の色が残っているため、聴いていて「んぁ?」といった、何か変わった的な違和感は抱かないと思う。ただ、星蓮船で見られた優しさに加えて音の力強さも含まれているように感じ、聴き重ねれば確実な変化を感じ取ることはできる。面白い。
個人的な主観で言えば、神霊廟以降の原作から入るのは取っ付き方としてはあんまり勧めにくいところではあるものの、作品としての出来栄えは良いので、そこも加味して星四つ。

おすすめ原曲
大神神話伝(五面ボス曲)
聖徳伝説 〜 True Administrator(六面ボス曲)
妖怪裏参道(Ex面道中曲)
☆佐渡の二ッ岩(Ex面ボス曲)
デザイアドリーム(スタッフロール曲)

後半の楽曲が道中、ボス含め良曲揃いで削りようがなく、泣く泣く前半道中やボス曲を除外。神霊廟もまた外れの少ない名作なのよ……。

東方輝針城 ~ Double Dealing Character.

原曲評価:★★★☆☆
初見お勧め度:★☆☆☆☆

確実に、ほぼ確実に過去作の楽曲から姿を変えた作品。
もう紅魔郷ら辺の雰囲気は見る影もない。しかしながらそれを嘆くような楽曲ではなく、新しい姿に変わった楽曲もまた愛されるものが多い。

結論から言うと、個人評価として初見には決しておすすめできない稀有な作品。というのも、五面ボスで操作をめちゃくちゃにされるためである。本当に酷い。怨むぞ鬼人正邪。
初見がそれで離れていくことを鑑み、更に弾幕の難易度も考慮するとどうしても後手後手に回る。
EASYですらノーコンクリアを危ぶまれる始末であり、とてもとても初見に勧められる難易度ではなく、原曲評価から初見に勧めるという今回の主題から離れてしまうが、それでもこの作品を初めてのプレイに勧めることはできない。

……とまあ散々こきおろしたが、主題や楽曲自体の評価は低いわけでもなく、寧ろ触れ込むには結構分かりやすい内容になっている。地霊殿あたりで話した「難易度と楽曲の天秤」を持ってきた時に、上記の要素を重ねてもなお、難易度の方に傾くため、仕方なくこの評価に落ち着かせたというところが大きい。
一寸法師をベースとして、付喪神の話を持ってきている当作品は、過去作と比較すると永夜抄並に分かりやすい物語となっている。
楽曲もハイテンポであったり、落ち着いたり、前項で述べた楽曲の優しさ成分をガッツリ抜いた、力強さが前面に押し出たものが多い。

だがしかし、全ての解説は難易度の前に砕かれる。
嗚呼、悲しき輝針城……。

おすすめ原曲
ミストレイク(一面道中曲)
幻想浄瑠璃(四面ボス曲)
空中に沈む輝針城(五面道中曲)
輝く針の小人族 〜 Little Princess(六面ボス曲)
☆始原のビート 〜 Pristine Beat(Ex面ボス曲)

始原のビートをイチオシにしているが、実際のところプレイ中に聴けていない。Ex解放はしたものの、道中でやられる。おのれ九十九姉妹。

現在の幻想郷へ ー原曲???期ー

紹介の前に

ここの項目をなんと名付けようか、全く思い浮かばなかったので仕方なく「???期」とした。前にどこかで誰かが命名していた気がするが、忘れたのでこれで。

ここ以降の楽曲は完全に黎明期三部作とは切り離していいと個人的に思っている。というのも、紺珠伝から音源が大きく変わり、それまでの退廃的なピアノのメロディや淡く柔らかなメロディとは全く異なる、現代に近しいコンテンポラリーなものが多いためである。だからといって作曲者が変わっているわけでもないし、評価として別枠にするわけではなく、ただ「黎明期三部作や守矢三部作と並べるには毛並みが違いすぎるかな」という考えのためである。楽曲評価としては別に並べても大丈夫だろう。

ちなみに最近になってこの辺りの楽曲がマッチしてきている。評価が高いのも何となく頷けるものだった。
それでは説明に入ろう。

東方紺珠伝 ~ Legacy of Lunatic Kingdom.

原曲評価:★★★★☆
初見お勧め度:☆☆☆☆☆

地霊殿の項目でお話したことを覚えているだろうか。
「例外として一面から既にプレイヤーをボコボコにしてくる作品もある」と。
コイツがそのボコボコにしてくる作品、東方紺珠伝である。

はっきり言う。話したくない。
思い出すのもうんざりする難易度。EASYがEASYしない。それでいて楽曲の出来は最高なのだから、こちらとしては説明が非常に困難である。
舞台は宇宙。秘封CDの鳥船遺跡に見られた「宇宙っぽさ」が全体的に強く伝わる楽曲も多く、地上を旅立つ直前の楽曲もまた決意が伝わってきて完成度が高い。
六面ボス曲に至っては非公式の人気投票で登場数回にして三本の指に入るほどである。そもそも初登場時点でトップ10入りなのだから、難易度だけでなく楽曲評価もバケモノなのだ。どうなってんだこの作品。

話したくない理由は前述の通り、その難易度。
弾幕、テンポ、雑魚敵の攻撃、全てが過去作の遥か上を行く絶望的なもので、はっきり言ってリトライもしたくない。しかしながら原曲は良いのでやるしかない。能動的マゾヒストへと様変わりである。
輝針城は「初見に勧めることはできないけど、ひとまずその内容と難易度は説明しようかな」といったレベルだったが、紺珠伝に至っては「とりあえず楽曲の良さを伝えて、作品の話は追い追いしようかな」レベル。初見プレイに持ってくるメリットが一つも浮かばない。

再三言うように楽曲の評価は個人的にもずば抜けて高く、新時代のZUN曲ビギナーセットとして説明するに相応しい名曲揃い。
原曲だけを聴きたがる、自分のような変態には丁度いい作品とも言えると思う。

おすすめ原曲
宇宙巫女現る(タイトル曲)
忘れがたき、よすがの緑(一面道中曲)
凍り付いた永遠の都(四面道中曲)
星条旗のピエロ(五面ボス曲)
☆ピュアヒューリーズ 〜心の在処(六面ボス曲)

「宇宙巫女現る」の掴みの強さは抜群だと個人的に思ってる。それまでの雰囲気とは打って変わって「なんか壮大だな」感が強い。

東方天空璋 ~ Hidden Star in Four Seasons.

原曲評価:-
初見お勧め度:-

……えー。

その

……大変申し訳ないんですけど。

……実は天空璋、本当に詳しくないんですよ……

未プレイの分、原曲をしっかり聴き通しているのですけど

他作品と違ってシステムへの理解度も、モデルとなった物語や背景も、一切下調べをしたことがないんです……

なのでここではおすすめ原曲だけを書きます。本当に申し訳ない……。

ちなみにネット上の話だと「初見に最も勧めやすい難易度」らしいです。それを調べてない俺はなんなんだ……

おすすめ原曲
希望の星は青霄に昇る(一面道中曲)
色無き風は妖怪の山に(二面道中曲)
☆一対の神獣(三面ボス曲)
幻想のホワイトトラベラー(四面道中曲)
秘匿されたフォーシーズンズ(六面ボス曲)

天空璋の原曲は回帰をイメージしているようで、確かに前後作と比較しても雰囲気は全く違く、どちらかと言うと永〜星までの楽曲に寄っている。

東方鬼形獣 〜 Wily Beast and Weakest Creature.

原曲評価:★★★★☆
初見お勧め度:★★★★☆

動物霊に気を取られて凡ミスする可能性を除けば、このカテゴリ作品の中では最も勧めやすい一作。
楽曲もさることながら、秀逸なのは六面ボスでの最終局面。
星蓮船では「色んな想いがあったんだ…」的な淡い胸熱展開があったが、こちらは「うおおおおぉ!!」的なIQ爆下げテンションは爆上げ、男の子ならみんな大好きな展開が繰り広げられる。正直燃えた。

この作品もまた次世代へ向けた音楽の作りになっており、前述の紺珠伝、天空璋とはまた異なった色を見せる。なんなら鬼形獣の時点で次世代の括りとして纏めて良かったのかも、と思う。
ただ後述の虹龍洞がシリーズの中でも最新であり、また異色でもあるため、虹龍洞だけは別枠でまとめたかった私のわがままが絡んでいる。
鬼形獣は紺珠伝、天空璋と一緒にしているが、実際は第三の過渡期にあたるのかもしれないということを同時に伝えたい。

難易度は全作品の中でもトップに上がるほど簡単で、Exもまたボスへの到達は容易。ただしクリア出来るとは言ってないぞ。
東方作品をSTGとして始めるには最適とも言える作品になっている。紺珠伝のピーキー具合はどこへやら。

この世ではない、彼岸を越えた先にある地獄のヒエラルキーと、その摂理を語る物語。
六面ボスの生まれ出たルーツと敵たる所以は歪なものの、その立ち居振る舞い、強さは全六面ボス屈指。捩じ伏せた時の快感を是非味わって欲しいものである。

おすすめ原曲
石の赤子と水中の牛(二面ボス曲)
アンロケイテッドヘル(四面道中曲)
トータスドラゴン ~ 幸運と不運(四面ボス曲)
セラミックスの杖刀人(五面ボス曲)
☆偶像に世界を委ねて(六面ボス曲)

語るまでもなく、偶像は東方原作の楽曲の中でも指折りの人気曲。私個人としては最も好きな楽曲である。
黎明期から存在するZUNペット、守矢期に見られた丁寧で緻密なピアノ、そして今ここに生まれ続ける荘厳なイントロは、ZUN曲の良いところ、好かれるところ、盛り上がれるところを全て詰め込んだ、欲張りセットになっている。

全ての過去を受け継いで原曲は進化し続ける -虹色期-

東方虹龍洞 〜 Unconnected Marketeers.

原曲評価:★★★★★
初見お勧め度:★★★☆☆

どこまでも変化と進化を続ける原曲の音色は、淡く暗い暖色だと説明したり、果てなく明るい寒色だと述べたりしてきたが、結局ここの題名に全て合わせるための布石とも言える。
虹色。
偶像に世界を委ねてが人気を博し、あらゆる世代のメロディが組み合わされた時代がこれから訪れるのかと想像すると、胸が踊る。

未プレイのため本編の詳細を多く語ることはできないが、難易度は鬼形獣同様に簡単。
特定の条件下で発生するアナザーエンディングがあり、やり込み要素は過去一か。

楽曲はピアノをメインに用いたものが多く、過去に類を見ない長調で作られた楽曲も生まれた。メロディも地霊殿と星蓮船を足して割ったような明度のものが多く、それでいてドラムやベースラインの音が強調されつつあるため、過去作品とはまた違ったピアノの音色を聴くことができる。

どの楽曲の雰囲気を見ても、どの過去作にも「っぽさ」を見出すことができるため、それこそ虹色の説明に最適かもしれない。だが結局「っぽさ」止まりのため、曲そのものは虹龍洞の独自性を持っている。「これ◯◯と同じじゃん!」が存在しない。

未プレイの中でも早くプレイしたい作品の筆頭。
楽曲がこれからまだ変化を迎える姿をしていて、プレイしながら聴きたいと常々思っている。
何でやらないのか?って?
時間がねえんだよ。

おすすめ原曲
駒草咲くパーペチュアルスノー(三面道中曲)
スモーキングドラゴン(三面ボス曲)
神代鉱石(四面ボス曲)
☆ルナレインボー(六面道中曲)
龍王殺しのプリンセス(Ex面ボス曲)

駒草咲くパーペチュアルスノーが唯一の長調曲。ネタ扱いされているけど聴き心地は原曲随一なので聴く価値は十分ある。
鬼形獣の「石の赤子と水中の牛」や、今作のルナレインボーもそうであるが、やたらピアノをぺろんぺろんさせる傾向にある。正直めっちゃ好きだからもっとやってほしい。

おわりと総括

一通り書き終えたところで、ずいぶんと薄っぺらい説明だなと感じた。
仕事の片手間に書いているからか、聴いてりゃ誰でも書けるだろう、的な感じがしてならない。

しかしながら、上記が各作品の各楽曲における自分の思いである。そこは偽らない。
もちろん、各作品ごとに上げたおすすめ原曲の他にも好きな曲は沢山あるし、泣く泣く削った楽曲も沢山ある。
そこは是非プレイしてみて実際に聴いてみてほしい。

お勧め作品を総括してまとめようと思ったが、想像以上に競っていてまとめが難しい。とりあえず各カテゴリ毎におすすめ具合が被っているものは、こちらの独断で選ばせてもらう。

まずは難易度と個人的な楽曲評価を加味した結果を発表する。
黎明期であれば東方紅魔郷
守矢期であれば東方風神録
後期作品ならば東方鬼形獣

次に、難易度を度外視して純粋な楽曲評価で作品を選ばせてもらう。
黎明期であれば東方紅魔郷
守矢期であれば東方星蓮船
後期作品ならば東方紺珠伝

なお、東方虹龍洞については各カテゴリ作品の楽曲を一巡してからプレイし、そして楽曲を聴いてもらいたいため今回は選出しなかった。ご了承頂きたい。

ひとまず楽曲本意での作品評価noteはここでお開きにさせて頂く。
今後、こちらのnoteを基にして今回おすすめした各楽曲の感想をお話することもあるかもしれない。
その時は是非お付き合いをお願いします。

以上、いち原曲ファンがお送りする、東方原作レビューでした。

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