第百七十六回 Ba 沙我|ノーズマウンテン・ラジオ アルバム「GRACE」全曲徹底解説(3)

3月9日の東京公演を皮切りに、LAST DANCE ACT.3「Graced The Beautiful Story」ep.2〝Farewell Flowers〟が開幕。今回沙我には、バンド凍結発表後、改めてアルバム「GRACE」の全曲徹底解説を"最終章"としてインタビュー。今だからこそ語れる想い、さらにはこの後始まるツアーについて話を聞いた。

ーーアルバム「GRACE」の徹底解説もついに最終章に入りました。今回は7曲目の「Answer」から始めていきます。

沙我:これは虎の原曲。アルバムを作る段階において、アップテンポでポップな要素を含んでいる曲が、当時は「Funeral」ぐらいしか無かったんですよ。なので、もう1曲そういうベクトルで、「もうちょっとポップな要素がある曲が欲しいな」という話を虎さんにしたところ、上がってきたのが「Answer」の原曲。僕の曲調を意識してきたのか、珍しくAメロからBメロにいく時に転調してたりして。虎さんなりにこのアルバムの雰囲気を汲み取ってくれたのが伝わるデモだったんですね。それを僕が広げていった感じでした。

ーー実際に昨年のツアーで披露してみて、手応えはいかがでしたか?

沙我:難しいんですよね。演奏が忙しくて、気を抜くとフレーズがすぐ飛んじゃうんですよ。だから、曲は盛り上がりたいんだけどメンバーは盛り上がれずに集中しなきゃいけない、という(笑)、そういう曲でした。でもアルバムを作る上で元々、演奏する時に緊張感が続く曲が欲しかったので、その望み通りにはなってるんです。

ーーでは、次の「Roar」は?

沙我:ヒロト原曲です。ヒロトがアルバムの曲出しの時、一番最初に持ってきた曲が「Roar」だったんです。「Funeral」「界」と同時期にあったんで、レコーディングは早い段階でやりました。ヒロトはライブでシンガロング、お客さんとのコール&レスポンスが好きなので、この曲も「サビにそういう要素を入れたがってるな」というのがデモを聴いてすぐに分かって、それを汲み取りつつ初期にできた曲だったんで、「Funeral」や「界」とはテンション感がまったく違ってたんですよ。かといってアルバムに合わせすぎるのもな、と、結構悩みました。それで、入っていたシンセとかはなるべく削ぎ落として、肉感のあるサウンドにシフトして作っていきました。そうしたら、僕の中でクラシックロックに近い感じになっていって。ドラムソロはかなりオマージュが入ってるんですよ。元ネタはThe Whoというバンドなんですけど。

ーー沙我さんがThe Whoを知っていることが予想外です。

沙我:僕が生まれる前にいたレジェンドみたいなバンドですからね。彼らのあるシーンがすごくカッコよくて僕は好きで。それを隠し味としてオマージュする感じでこのドラムソロに忍び込ませることができたので、僕はすごく気に入ってるんですよ。次のツアーでは、照明も含めてもっと元ネタのオマージュに寄せていこうかなと思ってます。

ーーそして次が「Farewell Flowers」。

沙我:これもヒロト原曲ですね。大昔にデモを聴いたことがあって、それが一度「Merry Christmas To U」という曲になったんですよ。「あれはクリスマスソングになっちゃったんだね」というところで僕の中では終わってたんです。なんですけど、ここでもう一回、あの昔のデモが出てきて(笑)。だから「Farewell Flowers」でやっと大元のイメージのままの曲ができたという感じなんですよ、僕の中では。

ーーつまり、元のデモは一緒なんだけれども、それが分家にいって育ったのが「Merry Christmas〜」だとしたら、本家として育ったのが「Farewell Flowers」だということですか?

沙我:そうです。ずっと前にデモを聴いた時から「これはいい曲になるし、ひょっとしたらアルバムのリード曲になるかもしれないから早く作ろうよ」と言ってたんですが、なかなか作業が進まなくて。これも、デモはほぼシンセだったんですよ。ヒロトの面白いところは、ギタリストでガンガンにギターを入れてきそうな感じなのに、ギターを入れないでシンセをいっぱい入れてデモを作るところ。それを僕がアルバムの雰囲気に合わせて音を調整して、バンドとして演奏できるものに落とし込んでいきました。この曲はすげぇ苦労しましたね。シンセのパートを「ここはギター、ここはベースに」って置き換えて弾いたりして。まあ大変でした。

ーーでも、これから始まるツアーのタイトルにもなった曲ですよね。

沙我:それぐらい大事な曲になっていきました。次のツアーでのこの曲の見せ方は色々まだ試行錯誤しているところなので、楽しみにしてて欲しいなと思ってます。

ーー演奏面ではいかがですか?

沙我:「秘密」もそうなんですけど、ウチのバンドはこういうハネてる感じのリズムが苦手なんですよ。なので、歌や演奏がハネてなくても、「いかにハネてる風に聴かせるか」という工夫…例えばドラムの一瞬のキックの位置だったりとか、すごく考えて作りました。ベースは基本、僕はピック弾きなので、このニュアンスを出すのはすごく苦労しましたね。本当は指で演奏した方がいいんですけど。

ーー敢えてピック弾きにしたんですか?

沙我:自分の機材は指じゃないんですよ。基本、ピックでガシガシ弾くようなセッティングにしちゃってるんです。指で弾くと、ローがどうしてもピックで弾くよりも増しちゃって、「ボワーン」って音が出ちゃってアタックも強くなるんで。どうしても指で弾かなきゃいけない時は、ベース本体のつまみをいじって、ベースのローの部分をマイナスにしたりとか、こまめに調整しながらやってるんですよね。

ーー指で弾く時はステージでそういうことをやっていたのですね。

沙我:ええ。手元で細かく調整してます。

ーー「Farewell〜」のレコーディングはピック弾きですか?

沙我:いや、部分部分で変えてますね。ピックと指。他の曲もそうですよ。「Funeral」もBメロのジャズっぽくなるところは指ですし、「Grace」の静かになるところのベースも指で弾いてます。

ーーレコーディングだからこそできる技。

沙我:そうですね。ステージは僕、使うベースは一本だけでやりきっちゃうスタイルだから、ライブは余計にピック弾きになるんですよね。

ーー曲に合わせてベースを変える方もいらっしゃいますけど。

沙我:僕は変えたくないんですよ。スタッフの数も限られてますし、僕がセットリストを考えてるんですけど、流れを重視したいから、自分のベースチェンジのためにその流れが途切れるとかしたくないんですよ。だから僕の足元のボードはベース一本でできるように設定してあるんです。ベースはもちろん他にも持ってるんですけど、ステージは基本一本でやりきるタイプです。

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限りなく2次元に近い2.5Dロックバンド、アリス九號.のオフィシャルnoteです。 毎週メンバーがリレー形式でオフィシャルnoteだけの…

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