民間航空機の行方を追って



同じ品物(ipad)を買っても、どうも使いこなせなくて、ベッドの下にほったらかしにしているイザベラもいるし、飛行機の航路を追っている人もいる。

ちょっと工夫をこらすと、あらゆる民間航空機の行方を教えてくれるので、ある読者の父親は、ちょうど頭上を通り過ぎる頃合を見計らって、外に出ると飛行機を確認し、家の中にもどっては、「実に驚くべき製品」だと口にする。

この投書には、特選のマークが付いていた。

英国の新聞、ガーディアン紙ではネット記事の下の方に読者が意見を書き込める欄があり、なかでも、おもしろくて的を射たものは、特選として評価される。

そういえば、ロンドンに滞在中、街を歩いていると、やたら上空に航空機が飛んでいるのを目にしたり、耳にしたりするように感じた。

はたして、256人の書き込みで議論が盛り上がったのかというと、答えは否である。

使い方が分からなくて、ベッドの下にほったらかしにしている著者に、第一何をいっても無駄であろう。無理しても使えと命じるのは馬鹿げている。

私はこのように使っているというような書き込みがあっても、生活のスタイルが各人バラバラである以上、説得力が感じられない。

映画が見られるといっても、こんな小さな画面で「タイタニック」のような大作が満喫できるわけはないし、周りの観客の漏らすためいきに、こんなに大勢の人と時空間を共有していることに感慨を深くすることもできない。

旅行にでかけるとき、本を何冊もカバンに詰め込むことなく、これ1台ですべて間に合うと言われても、読書の習慣のない人には豚に真珠である。

電子書籍を読んでいるときに、未知の単語があれば、すぐに辞書がひけると言われても、想像の世界が壊れてしまうので、そのまま飛ばして読み進める人にはメリットは感じられない。

はたして、「戦争と平和」のような長篇小説を画面上で読み続けたら、目を痛めることにならないのだろうか。近眼の人が、ますます増えてゆくような気がしてならない。

雑誌や新聞なら、森林資源を守るためにも、電子化がどんどん進んでゆくほうが望ましいと思う。広告には、動画や音声が存分に使えるし、芸術作品といってもいいような優れたものができるかもしれない。

図書館やスーパーに置いてあるフリーペーパーのように、電子書籍を無料にすることはできないのだろうか。ネットならタダという概念は、なかなか改まりそうにない。

ニューヨーク・タイムズ紙の電子版は、毎月、無料で読める記事の本数が決まっていて、そのあと最初の4週間に限って、料金は99セントに設定されているが、抜け道がいろいろあって、筆者もふくめて誰もが無料で利用していると思われる。

にもかかわらず、伊藤穣一氏とブライアン・マックアンドリューズ氏を重役に迎えて、タイムズ社が倒産しないよう画期的な課金方法を編み出すことを期待しているのは、筆者だけではあるまい。これは、10年以上前の話。

NYタイムズによると、2011年の3月から課金を始めて、2020年の終わりには、500万人以上が、電子版のタイムズ紙を購読しているとのこと。

現在、筆者が払っているのは、月に8ドル20セント。これで、100年前の記事でも自由に読めるのは、素晴らしい。


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