天使になって

静寂とこもる熱に  境界を確かめる針
簡単な約束も  忘れてしまうように

目を閉じる。

見えなくなる 見えなくなっていく色、は暗く
落ちていく、落ちていくのは 光の方で

天使になってみたくて。

借物の言葉で恋をする朝の空(うろ)の中
暖かい海に溶けていくみたい。
でも、まだ、痛みが消えない 

繰り返す 柔らかな ゆりかごの中で
変わらない ただ巡る呼吸と痛みは

冷たくて 指でなぞる 熱い鼓動の海
天国なんてないのに。

天使になってみたくて。

始まりがあると信じて眠る夢の中
暖かい海に溶けていくみたい。
あぁ、まだ、覚めない!

天使になったふりして
灰色になったあなたに小さく祈った

暖かい海に溶けていくには
もう、冷たくなってしまった 

輪郭を指でなぞる 外は雨が降っている




いつからか涙を流すことができなくなった僕の海。正解の繰り返しと照りつける光線は、僕の中から少しずつ何かを奪って行く。

焦点深度の浅くなった彼女の目の色は、まるで誰かの祈りみたいに透明で、もう僕を写すことはできないと思った。

目を開けると重さがなくなって、宙に浮いている。

冷たくなった彼女はまるで天使になったみたいだった。

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