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日本最北端の路面電車で巡る旅―あり観!ぐるぐる回る札幌市電編


はじめに

今回は、北海道札幌市中央区で運行する札幌市電の沿線スポットについてご紹介していきます。

かつて、札幌市電は中心部から東西南北に路線網を持っていましたが、高度成長期のモータリゼーションや地下鉄の開業により相次いで廃線、一時期は西4丁目停留所から中央図書館前停留所を経てすすきの停留所の区間まで縮小されました。

その後、2015年に西4丁目停留所から札幌駅前通りにある狸小路停留所を経てすすきの停留所までが復活する形で開業し、現在は循環運転が行われるようになりました。

そんな札幌市民でもあまり乗る機会の少ない札幌市電の旅を始めましょう。

札幌市電といえば、緑と白のカラーが特徴的。
なお、新型車両は白と黒のデザインに代わり、順次置き換えていく予定です。


すすきの停留所周辺

北海道で一番の繁華街・すすきのは全国的にも知られている場所です。
とりわけ有名なのがすすきの交差点で、ニッカ等様々な広告や交差点の中央に時計台があり、夜間にはネオンサインが煌びやかに輝きます。
そうした光景を撮る観光客も非常に多く、すすきのに来たということが一目で分かります。

この辺り周辺には飲食店も多い一方で、大人向けなお店も多く、以前は夜になると客引きが交差点ごとに声をかけるくらいの有様(※個人的見解)だったようですが、現在は条例によりかなり減っています。
だからといって、必ずしも違法店が排除されたとは言い難いので、免疫のない人は日中はともかく、夜に出歩くのは控えた方が良いかもしれませんね。

すすきの交差点。札幌市電が循環運転されるようになったことで、こうした光景も撮ることができるように。

飲食店以外にも商業施設も多くあり、そのひとつがnORUBESA(ノルベサ)です。名前の由来は、フランス語のNord(ノル、北のという意味)と北海道弁のべさをかけた、何とも北海道らしいネーミングです。

こちらの最上階には観覧車もあり、1周約10分程度で運行し、夜間にはライトアップもされます。

かつては冬季に雪ミクとタイアップしたラッピング観覧車もありましたが、新型コロナウイルスの影響により、2021年度以降は実施されておりません。
乗車中には雪ミクのタイアップ曲が流れたり、乗車記念のポストカードも貰えたりしましたが、通常料金よりもお高くなるのはご愛敬です。

ノルベサ全景。飲食店やアミューズメント施設も入居する。
2020年度の雪ミクラッピング仕様の観覧車。こちらは全国で初めて緊急事態宣言が発令された時の写真で、客よりも係員の方が多いという有様だった。


東本願寺停留所周辺

すすきの停留所から南に進んだ先には、東本願寺札幌別院という寺社があります。

1870年に北海道開拓と開教のために建立されたのが始まりで、本尊は新潟県直江津市の林覚寺から寄贈された阿弥陀如来立像で、境内にある旧御堂は新潟市にある光圓寺から譲り受ける等、本州から移設されたものが多くあります。

本来、境内は比較的広いですが、冬期に行くと、必要な箇所しか除雪されないため、割とこぢんまりとした印象に見えるかもしれません。

とはいえ、札幌市内では大きいお寺なので、ぜひ一度は参拝してみましょう。

東本願寺入口。
東本願寺境内。写真の通り、参道以外は雪に覆われています。
ちなみに、入口が二重窓になっているのも北海道ならでは。


中島公園通停留所周辺

更に南へ進むと、山鼻9条停留所から中島公園通停留所にかけて広がる、中島公園があります。

公園自体もかなり広々としていて市民の憩いの場にもなっていますが、その園内には豊平館という建物があります。
こちらは開拓使が建てた洋造ホテルで、最初の宿泊者は明治天皇と由緒正しき施設となっており、その後は要人の宿泊や祝賀会、更に2012年までは結婚式会場として、比較的最近まで利用されていました。
現在は資料館として見学することが可能となっています。

豊平館全景。白い外壁とウルトラマリンブルーでふち取られた造りは、 当時としては珍しかった。

館内に入ると、広々したロビーがお見えし、煌びやかなシャンデリアや天井中心飾、職人の高度な技術によって作られた階段の手摺等、まさに豪華絢爛な光景が広がっています。

豊平館ロビー。

また各部屋には椅子や机等の調度品もあり、現在も貸室することが可能となっています。通常時はこのような椅子に座ることもでき、往年の雰囲気を味わえるかもしれません。

部屋の一例。椅子のクッションも分厚く、座り心地も良かった。

この他にも社交ダンスも行っていたであろう広間や、明治天皇が宿泊された部屋を再現された場所もある等、見どころがたくさんあります。入館料もそれほど高くないので、ぜひ見学してみて下さい。

豊平館広間。館内にはタブレットによるAR体験もできます。


中央図書館前停留所周辺

続いて、札幌市電としては最も南側にある停留所の一つである中央図書館前停留所についてです。

札幌市電では車庫へ入庫する際に、朝晩を中心にこの停留所まで運行されますが、この辺りも住宅地が広がっています。

その中でもひと際大きな建物が札幌市中央図書館です。札幌市内には各区に図書館がありますが、こちらは約86万冊の蔵書があり、市内でも最大の規模を誇っています。
基本的に、札幌市民または札幌市内へ通勤通学される方のみ、本の貸し出し可能ですが、閲覧だけならどなたでもご利用できます。

札幌市中央図書館。冬場でも入口通路はロードヒーティングがあるため、歩きやすくなっています。

また、こちらの図書館には、札幌市埋蔵文化財センター展示室も併設されており、札幌市内で出土した資料の展示や先史時代の歴史等も紹介しています。

内地…もとい本州とはまた違った歴史を辿った北海道について知ることができますので、ふらっと立ち寄ってみるのも良いかもしれませんね。

展示の一例。本州では火縄銃や刀といった鉄を多用する江戸時代頃でも、北海道では弥生時代とさほど変わらぬ暮らしをしていた。


電車事業所前停留所周辺

中央図書館前停留所から一つ隣にある電車事業所停留所
こちらには、現在運航している札幌市電の車両の全てが入出庫する施設があります。

鉄道ファンはもちろん、小さいお子様等も喜びそうな施設ですが、基本的には関係者以外の立入はできません。
しかし、年1回市電フェスティバルが行われるほか、春から秋にかけては一部施設の見学も可能となっています。
但し、2024年現在、車庫建て替え工事に伴い、いずれも現地では行われておりませんのでご注意下さい。

電車事業所の車庫。冬場でも工事が行われています。

ちなみに、冬期には札幌市内でもかなり積雪があるため、積雪状況に合わせてササラ電車という除雪車も運行され、札幌市の冬の風物詩にもなっています。
通常は始発前の午前4時に除雪作業が行われますが、日中でも積雪があれば、その姿を見ることが可能となっています。

日中に運行されるササラ電車。前面に付いている笹を束ねたローラーで、軌道上の雪を跳ね飛ばします。

また、同じく冬期限定でSnow Mikuとタイアップした雪ミク電車も毎年運行されています。
各年度のテーマに沿ったラッピングが施され、車内では専用の広告もあるほか、アナウンスは初音ミクが担当するという特別仕様。
ダイヤも公表されており、狙って乗ることは可能ですが、車両点検や運用上の都合で、運行しない場合もありますのでご注意下さい。

2024年度版の雪ミク電車。今回は運悪く車両トラブルのため乗ることができず、車庫内で入れ替え作業をしているところだけは見られました。


ロープウェイ入口停留所周辺

続いて一つ隣の駅、ロープウェイ入口停留所。
こちらは札幌市内でも有数の観光地である藻岩山への最寄駅となっており、観光客も結構乗降しています。

停留所から藻岩山ロープウェイまでは歩くと若干距離がある上、途中から坂道が続くことから、近くに無料送迎バスも運行しています。
但し、平日については夕方以降の運行となりますのでご注意下さい。

ロープウェイとゴンドラを乗り継ぐと、藻岩山山頂に到着します。
昼間に登ると札幌市街地はもちろん、日本海等も眺めることができます。

日中の藻岩山から見た札幌市街地。この日はやや雲に覆われて遠くは見えず。


しかし、やはり人気となる時間帯は夕方以降の夜景の風景で、非常に多くの観光客が山頂へとやって来ます。
日本新三大夜景にも選ばれた藻岩山から見る夜景は、とても綺麗でずっと見ていても飽きることはありません。

山頂も非常に静か…なんですが、時折観光客の話し声が結構聞こえてくるのは玉に瑕。最近は外国人観光客も増えているので、なかなかゆっくり見られないかもしれません。

けれども、絶景なのは間違いありませんので、札幌に来た際にはぜひ一度は訪れてみましょうね。

藻岩山山頂から見た夜景。昼間とはまた違った風景を楽しむことができます。
ちなみに、藻岩山にはもーりすというゆるキャラもおり、こちらは中腹駅で出会うことができます。


西8丁目停留所周辺

北上していた線路が東側へと曲がっていくと、大通公園に程近い西8丁目停留所があります。

この停留所から至近の距離に三吉神社があり、1878年に秋田県の太平山三吉神社の分霊を祀ったのが始まりとされています。
合格祈願や出世祈願にご利益があり、普段から地元民の参拝も多くいるほか、5月には例大祭もあり多くの方で賑わいます。

札幌の中心部である大通にも近いので、ぜひご挨拶に行ってみましょう。

三吉神社全景。雪化粧な光景が見られるのは冬だけ。
ちなみに、鳥居の間から市電を撮ることも可能です。知る人ぞ知る撮り方ですね。


西4丁目停留所周辺

かつて終点だった西4丁目停留所も、現在は途中駅になってしまいましたが、すすきのと並んで繁華街が広がっています。
しかし、すすきのとは異なり、大通公園に近いことや丸井今井等の商業施設も多いため、そこまでアングラな感じはありません。

大通公園にはご存じさっぽろテレビ塔があり、高さ147.2mと札幌を象徴するシンボルにもなっています。
このさっぽろテレビ塔には、非公式キャラクターであるテレビ父さんがおり、展望室にはテレビ父さん神社もあるので、展望室へ上った際には風景を楽しむだけでなく、こちらもお参りしてみましょう。

さっぽろテレビ塔。夜にはライトアップもされます。

また、大通公園ではよさこいソーラン祭りさっぽろ雪まつり等の各種イベントも行われており、期間中は多くの観光客で賑わいます。
特に、雪まつり期間中はホテルの宿泊料もかなり値上がりする上に、良い所は早々に満室になってしまいますので、行かれる際には早目のご予約をした方が良いでしょう。

さっぽろ雪まつりの一例。大雪像の前ではイベント等も行われます。


狸小路停留所周辺

最後に、循環運転が行われるようになった時に開業した狸小路停留所周辺について。

停留所を降りるとすぐに東西に伸びるアーケード街があり、こちらが狸小路となります。
北海道で最も古い商店街で、1丁目~7丁目まで約900mと非常に長いのが特徴です。商店街ということで飲食店からアミューズメント施設等、様々なお店が並び、一通り歩くだけでも楽しむことができ、観光客だけでなく、地元民も非常に多く訪れています。

とりわけ、道内でも雪の多い方である札幌だけに、アーケードがあることで天候に左右されることなく散策できますので、ぜひこちらにも足を運んでみてみましょう。

狸小路停留所(左)と狸小路商店街。
狸小路商店街の様子。早朝は人通りが少ないですが、日中から夜にかけて多くの人が訪れます。

また、この狸小路停留所の近くには千秋庵という和菓子や洋菓子等、様々な商品を販売しています。
特に、この本店だけですが、焼き立てのノースマンを食べることができ、サクサクの生地や中の餡が非常にマッチして美味しいです。

なかなか焼き立てを食べる機会はないと思いますので、札幌に来た際にはぜひ千秋庵にもお立ち寄り下さい。

千秋庵本店全景。
焼立てノースマン。こしあんとつぶあんの2種類から選ぶことができます。
※料金は2024年3月現在


終わりに

いかがだったでしょうか?

札幌市民でも沿線に用がなければ、市電に乗る機会はあまりありませんが、今回ご紹介したように、たくさんの魅力的なスポットがあります。
観光で利用するもよし、ちょっとした旅情を楽しむのもよし、時間つぶしに乗ってみるのもよし。

ぜひ、札幌市電で色々巡ってみましょう!


おまけの話

今も残っていれば紹介したかったのですが、イベント開催時点ですでに閉店してしまったお店があります。

それは西線9条旭山公園通停留所すぐの所にあった洋菓子店シャモニーです。
こちらではアレルギーに配慮したケーキなど様々な洋菓子が販売されており、特に札幌市電にまつわる商品として西線ロールというケーキが販売されていました。

当時販売されていた西線ロール。価格は1個190円だった。

ロールケーキと言いながらも甘さ控えめで、しっとりとした生地とクリームは非常に相性が良く、美味しく頂きました。

店主がご高齢ということもあり、2019年3月に閉店してしまいましたが、その1ヵ月前に訪れることができ、これを目的に来ましたよと言うと、自作のパンフレットも頂きました。

シャモニーのパンフレット。代々受け継がれ、創業90年という古い歴史を持っていました。

現在、跡地には『YAKINIKU BISTRO石鎚』という料理店に変わってしまいましたが、こんなお店もあったよということでご紹介させて頂きました。

店内の写真。他にお客さんも居なかったので、ご主人に店内の写真を撮っても良いかと尋ねると、快く了承して頂きました。とはいえ、このままデータの奥隅に置いておくのもあれなので、今回公開致しました。

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