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生成AIによるレポーティング業務の効率化:定常業務タスク自動化の実現


はじめに

現代のビジネス環境において、定期的なレポーティング業務は重要な役割を果たしています。特に広告業界やマーケティング分野では、データ収集や分析を基にしたレポートが意思決定の基盤となります。しかし、CrowdFlower 2016 Data Science Report”アンケート対象のうち60%のデータサイエンティストがデータ整形や準備に最も多くの時間を費やしている”と述べられているように、このプロセスは多くの時間と労力を必要としており課題となっているのが現状です。さらに、業務の複雑化とデータ量の増加に伴い、これらの課題がますます深刻化しています。本記事では、生成AIを活用してこれらの課題をどのように解決し、データ分析業務の効率化を目指すかについて深掘りしていきます。

定常的なレポーティング業務における課題

定期的なレポーティングの負担

多くの企業では、毎週または毎月の定期的なレポート作成が求められます。データの収集から整形、分析、報告書作成までを手作業で行うのは非常に手間がかかり、かつ作業の途中でミスをして手戻りが発生するリスクも伴います。特に、レポートの内容が複雑であればあるほど、その負担やリスクは増大し、効率的な管理が困難になります。

データ整形の手間

データ整形は異なる形式のデータを統合し、必要な情報を抽出する作業ですが、元データが大量あるいは複雑であればあるほど手作業での整形は多大な時間と労力を要し、人的リソースを大量に消費します。また、人手でのデータ整形はミスを生む原因となり、データの質や一貫性を保つことが難しくなる恐れがあります。

レポートの可視化や複雑な分析

分析結果の報告においては、単なる数値の羅列ではなく、視覚的に理解しやすいグラフやチャートでの表現が求められます。しかし、適切な可視化を行うためにはデータの深い理解と分析技術が必要です。これには、データの正しい解釈や効果的な可視化などが求められ、専門知識を持たない担当者にとっては困難な場合があります。また、可視化ツールの習得には手間や時間がかかるため、適切なツール選択と技術の導入が重要となります。

上記課題に対するソリューション

先ほど挙げた課題に対して、生成AIを活用することで、定期的なレポート作成やデータ整形の手間を大幅に軽減できます。ここではどんなAIツールがあるのかや今回のケースに最適なツール、導入時のメリットについて見ていきます。

AIツールについて

生成AIは定常的なレポーティング業務の効率化に役立つ強力なツールです。AIツールには主に以下3つの種類があります。

  • チャットボットAI:対話形式でサポートを提供し、質問応答やタスクの支援 例)ChatGPT, Claude, Geminiなど

  • ワークフローAI:業務プロセスの自動化を目的とし、定期的なタスクの実行やデータ処理の自動化の支援 例)Dify, Anakin AIなど

  • エージェントAI:高度な分析能力と自律的なタスク実行を持ち、複雑なデータ処理やレポート作成の支援 例)AutoGPT, MultiOnなど

今回のケースに適するもの

今回の「定常的なレポーティング業務」では、上記3つのツールの中で特にワークフローAIエージェントAIが適しています。これらのツールは、定期的なレポート作成やデータ整形の効率化において以下の利点があります。

  • ワークフローAI:定期的なタスクの自動化を実現し、一貫性を保ちながら効率的に作業を進めることが可能。また、プロンプトを考えたり、コピペなどの作業を最小限に抑えることができる。

  • エージェントAI:複雑なデータ分析やカスタマイズに対応し、自律的にタスクを実行することで高精度の結果を提供。

一方、チャットボットAIは以下の理由で今回のケースには不十分です。

  • 業務プロセスの自動化が難しい:業務全体のプロセスの自動化まではできず、定期的なタスクの管理が困難。

  • 外部ツールとの統合が難しい:使用するツールによっては、外部ツールとの統合が困難な場合がある。

  • カスタマイズの限界:複雑なカスタマイズは簡単にはできないため、業務ニーズに応じた柔軟な対応が難しい。

導入するメリット

上記のツールを導入することで以下のようなメリットがあります。

  • 業務効率の向上:定期的なレポート作成を自動化することで、手作業の負担を削減し、業務効率を大幅に向上。社員はより付加価値の高い業務に集中できるようになる。

  • エラーの削減:自動化されたプロセスにより、ヒューマンエラーを減少させ、信頼性の高い結果を提供。業務の精度が向上し、ビジネスにおける意思決定の質も高まる。

  • 柔軟なカスタマイズ:エージェントAIやワークフローAIは、高度なカスタマイズが可能であり、業務の特性やニーズに応じた柔軟な対応が可能。

  • コスト削減とビジネス価値の向上:業務の自動化により、人的リソースの削減と効率的な作業プロセスを実現し、コストの最適化が可能となる。さらに、効率化によって生まれたリソースを活用することで、ビジネス価値の向上にも寄与する。

デモ

今回はデモ用に作成した広告データを使い、生成AIを活用したデータ整形からグラフ出力までのプロセスに関するデモ動画をご紹介します。
今回はChatGPTの機能の1つで、個人でカスタマイズが可能なGPTsとノーコード/ローコードで高度なAIアプリを開発できるDifyの2つのツールを用いました。

GPTsによるデモ動画

厳密に言うと、GPTsもチャットボットの1つですが、今回はデータ読み込み、整形、グラフ出力などを行うワークフローを仮想的に作成しました。

Difyによるデモ動画

GPTsとは異なりDifyでは、データ整形からグラフ出力、レポート内容生成までのワークフローを組み込むことができるため、月を選択するだけでレポート作成を実施することが可能です。

これらのデモの結果から

  1. データの整形(カンマの削除、データの型の変換、日付形式の統一など)

  2. 整形したデータの出力

  3. DAUの推移を示すグラフの出力

  4. 11月のDAUに関するトレンドの考察

までをほぼ自動的に実行できている様子が確認できます。

今回のデモで出力された結果を直接レポートとして使うにはまだ内容が不足していますが、レポートの初期アイデアとして利用するなどして、冒頭述べました”レポーティング業務の課題”に対してクリティカルに対処でき、多くの定常業務を自動化できる可能性があることがお分かりいただけるかと思います。 また、ワークフロー内のプロンプトをより業務に沿った内容に変えたり、ワークフロー自体を見直すなどすることで、より高い精度での自動化されたレポーティング業務を目指すことも可能です。

おわりに

本記事では、生成AIを用いたデータ分析業務の効率化について説明しました。定期的なレポート作成やデータ整形の負担、レポート形式への対応といった課題に対し、生成AIを使ったツールが効果的なソリューションを提供することを示しました。生成AIを活用することで、業務効率の向上、エラーの削減、柔軟な対応などを実現し、コスト削減やより高度な分析業務に繋げることができます。

弊社のAI Transformation(AX)事業部では、ご紹介した生成AIを活用したデータ分析業務の効率化に限らない、AIを活用した企業の業務変革をご支援しております。事業に関するお問い合わせやご相談は、以下の連絡先までお願いいたします。