急成長AIスタートアップLayerX - 生成AIをフル活用するサービス開発への挑戦
Inside Algomaticです。当ポッドキャストでは定期的に他社のゲストをお招きする企画を始めました!今回はゲストにLayerX CTOの松本氏(@y_matsuwitter)をお迎えし、LayerXの生成AI事業の取り組みや開発の裏側、事業戦略について詳しく伺いました。
草創期からの研究開発の歴史 - 徹底的なユーザーヒアリングで事業仮説を絞り込む
—まず最初に、LayerXの生成AI事業の歴史について教えてください。
松本: 2022年11月にChatGPTが一般公開されたのを機に、私一人で研究開発を始めました。2~3ヶ月ほど社内で生成AIの可能性を訴求し続け、2023年4月にLayerX LLM Labsという研究開発チームを立ち上げました。8月ごろから事業化の方向性が見えてきて、2023年11月に正式にAI・LLM事業部を新設しました。今は20名弱の体制でサービス開発を進めています。
—ユーザーのニーズ探索はどのように行ったのでしょうか。
松本: 弊社の鉄則として、新規事業を作る際には100社以上にヒアリングを行います。無償でお話を伺うこともあれば、案件として有償でお取り組みする場合もあります。ブロックチェーン事業の経験から、実際のユーザーの声を聞かずに技術主導で進めると難しいことを学んだので、いろいろな方にお会いして、ユーザーの実際のペインを知ることに注力しました。
最高性能モデルを最大限活用 - 選択肢を絞り込み、大企業向けのサービスに特化
—現在取り組まれているサービスについて教えてください。
松本: まだ外に情報を出していないのですが、エンタープライズ企業向けに、生成AIをガッツリ活用した重厚なツールを開発しています。弊社のもう一つの事業である「バクラク」と補完関係になるよう、エンタープライズ企業向けのサービスに特化することにしました。
—モデルの選定などはどのように考えていますか。
松本: 当初は議事録作成など幅広く検討していましたが、最終的に選択肢を絞り込み、最も性能の高いモデルをたくさん使ってもらえるサービスを目指すことにしました。処理速度やコストを気にせず、最高性能のモデルをフル活用し、それでもユーザー企業が儲かるようなサービスを作っていくのが戦略です。
ユーザーファーストの徹底 - 技術ではなくデータ前処理とユーザー体験にこだわる
—生成AIサービス開発で大事にしていることは何ですか。
松本: 機械学習では、アルゴリズムそのものよりも、前段のデータの前処理と、後段のユーザー体験のデザインが重要だと考えています。良いサービスを作るには、LLMが使いやすいデータをどう整理するか、ユーザーが適切なプロンプトを入力できるUIをどう実装するかが肝になります。
—LLMの発展についてはどう予測されていますか。
松本: 性能は上がり続け、高速化・低コスト化も進むでしょう。その中で、常に一番良いモデルを一番たくさん使えるサービスは何かを考え抜くことが重要です。技術トレンドを追いかけるのではなく、あくまでユーザーファーストで選択肢を絞り込んでいくことが大切だと思います。
社内でも生成AI活用を推進 - 営業の効率化や人事領域への展開
—社内での生成AIの活用についても教えてください。
松本: 生成AIを使った営業効率化ツールの開発を進めているチームがあり、営業のあり方そのものを変革しようとしています。人事領域でもマネージャー支援への活用を探っています。LayerX全体として、あらゆる業務にLLMを導入していくのが基本方針です。重要な取り組みには適切なメンバーをアサインし、戦略的に推進しています。
—今後のLayerXの展望について最後にお聞かせください。
松本: 6月から新オフィスに移転し、LLMのMeetupなど各種イベントをこれまで以上に開催していく予定です。ぜひ気軽に遊びに来てください。LayerXのミッションである「すべての経済活動を、デジタル化する」を実現すべく、生成AIをはじめとするテクノロジーを駆使して、事業を成長させていきます。
生成AIの研究開発の最前線に立つLayerX。ユーザー課題を徹底的に探索し、性能だけでなくデータとUXにこだわったサービス開発を進めているという、CTOの松本氏の言葉からは、技術志向ではなくビジネス志向の戦略が明確に感じられました。今後リリース予定の生成AIサービスにも大いに注目です。