グローバルリーダーの流儀 森本作也

マッキンゼーのことはほとんど書かれていないが、海外でビジネスをする人、特にマネジメント層にはぜひ読んでほしい内容でした。

シリコンバレーを対象に書かれていますが、東南アジアや他の地域でも十分通用する考え方で、私自身もこれまで多くのアジア人とビジネスをする上で大切にしてきた考え方が詰まっていました。

仕事第一ではないので、働かされていることを受け入れません。主体的に働くようにモチベーションをあげる言葉や対応をすること、責任を与えて任せてしまうことが大切。とにかくやれ、では全く動かない。

組織として社員からの信頼を得ることが大切、社員を大切にする会社だという理解を得るための各種制度を整えること。

モチベーションスイッチを見つける。文化に固有のモチベーションボタンを見つけて最大限活用する。

日本の組織は石垣型組織。人が最初。そこにそれぞれの能力や必要に応じて仕事を割り振る。なので人の能力に応じて役割と権限が決まっていく。

海外はレンガ型組織。まず組織の形とポジションを決める。次にそれぞれのポジションの役割をきめる。その上で誰をはめようかと考える。

レンガ型は個人の責任がはっきりしているので無駄が少なく問題点の把握がしやすい。一方で想定に基づいて組織を設計するので想定外の事象に弱い。

レンガを積んだ塀の絵を書く。レンガの大きさは責任の大きさと給料の高さに比例するので上のれんがほど大きい、同じ段はほぼ同じ大きさになる。次にレンガの名前、例えばマーケティングVPとかポジションを決め必要なスキルや経験を明確にする。最も近いプロファイルを持った人をそのレンガに当てはめる。いない場合は外から取る。

このモデルは個人の役割と責任がはっきりしているので意思決定が早いが想定外の問題には担当が決まっていないこともあり仕事の抜け漏れが多くなりがち。ポジションが上がるたびに給料があがるのでコストがかかる。

石垣型は全く逆、何か起こるかもしれないので多めに人を配置して皆で連携をこまめにとって業務をカバーする。エラーは少ないが意思決定に時間がかかり責任がはっきりしない。

日本は人=石ありき。能力、経験、年次、人格によって石の形と大きさを決める。石の形を見ながら最も上部で美しい積み方を考える。どう組んだら組織が効率よく、調和して動くかを考える。石を積んだ後、個々の石に任せる仕事を決める。仕事が後から決まるので肩書が仕事の内容を示していない場合も多くある。

このモデルは1つの業務を複数人がカバーするので組織の団結力が強くミスは少ないが責任の所在が曖昧なので意思決定が遅れたり、失敗した場合の問題のありかが見えにくく対処が遅れるという欠点がある。

日本の武士道の考え方と西洋の騎士道の考え方の違い。

武士の主従関係は忠誠心に基づく。主人と主従関係を結ぶと主人が勝とうが負けようが一生どころか末代まで仕えることを誓います。

騎士の主従関係は職業的なもの。騎士の約束相手は神であり主人との契約はあくまで業務提携。うまくいかなければ契約先、つまり主人を替えることは騎士の倫理観からすればあり。同時にプロなので実績がだせなければクビになる。

武士より騎士のほうが入れ替わりが激しい。レンガ組織は必要な人材は市場にいるという前提。日本のような人材流動性が低い社会では上手く機能しない。武士の組織は人材流動性が低いので手元の人材でなんとかしないとという意識で作られる。個人の特徴を掴んだ上で組織を作るので、人が短期間で入れ替わってしまうような場合には人材を見極める時間が十分にとれず上手く機能しない。

製品開発のリードタイムが長いものは人材流動性が低いほうが有利だが、リードタイムが短いIT開発などは都度チームを組み替えるのが競争力の源泉なのでレンガ型が機能する。

レンガ型ではまず、私はあなたのために働いているということを示して信頼を勝ち取ること。そして常に自分の意見を持つこと。

日本はコンセンサス重視の縦社会。東南アジアや中国はトップダウン型の縦社会。

日本と海外文化の媒介役になり、海外と別の海外との媒介役にもなること。

ディフェンダー志向とオフェンダー志向。海外ではリーダーシップ能力が重要視され、問題発見、解決能力、創造力。守備がボロボロになる危険性はあるが、上手く機能すれば爆発的な攻撃力を持って頂点を狙える。日本では記憶力と論理的思考力、実務処理能力が重要視される。決まった答えに早く正確にたどり着けるか、つまり失点が少ない人、ディフェンスに優れ弱点が少ない人が求められる。

オフェンダーばかりだとミスやスケジュール遅延がでる。日本からディフェンダーを入れても機能しません。彼らのことをよく理解した優秀なディフェンダーを採用すること。

組織からの期待と自分のキャリアプランの折り合いを上手につけることが大切。日本ではやりたい仕事じゃなくても理解をしてくれるが海外は別。各自が得意な分野に力を発揮できるように組織を設計すべき。

グローバルリーダーはT型人材。特定分野でも深い専門性を持ち、様々な人と議論するため幅広い領域で高い能力を持つ必要がある。日本ではジェネラリストかスペシャリストと分類されるが2つを融合した人材がグローバルリーダー。グローバルリーダーは常に意識して自分の専門性を磨いておく必要がある。

メッセージを伝える責任は話し手か聞き手か。日本ではメッセージを伝える責任は聞き手にある。だから質問がでない。海外では話し手にある。伝わらなければ話し手が下手ということになる。だから質問する。均一な人に伝える日本と様々な人がいる前提の海外では伝え方も大きく違う。

表現は直接か間接か、言語か非言語か。日本は非言語に依存して間接的に伝える文化。海外は言語に依存して直接的に表現する文化。空気は読まない。言葉を尽くして説明することを意識する。ネガティブな事を言う場合、人格と意見を必ず分けて伝える。

マインドセットはポジティブかネガティブか。リーダーはどんな状態でも常にポジティブなコメントで全員を鼓舞し、前向きな雰囲気でミーティングを終える。客観的に冷静に見つめることとそれに悲観的になることは違う。日本人は問題の指摘や否定するなどネガティブから入る。

常にポジティブでいる。超ポジティブ志向。人を褒める、それで人はついてくる。1on1や日々のオペレーションでは深く問題を掘り下げ議論することも必要。指摘する際も、ここは良いが、ここを治すともっと良くなるという伝え方をする、ネガティブなことをいっても何も良いことはない。

ネガティブなメッセージを伝えるには、フェアで公正であること、批判や反論から逃げないこと、相手の気持に寄り添い言葉を惜しまないこと。

日本は農耕民族、海外は狩猟民族。ハンターには獲物を求めて移動する、見つからなければ全員餓死。どこにどう向かうのかを決めるのがビジョンでありミッションである。会社の方向性であり、ありたい姿。常に新しいことをする機会を求めている人に対してリーダーが世界観を示せなければ誰もついてきません。強いリーダーがメンバーと世界観を共有することが組織を束ねるために重要。世界観を共有するためにはリーダーと社員が時間と空間を共有する必要がある。

リーダーは得られる情報から強い意志を持ってどこへ行くかを決定する。まさにビジョンを作る。将来を見通し、行く先を決定できる人がリーダーになる。農耕社会では土地の規模や作物の種類から出来高は想定できる。天候が安定していれば手順通りやればだいたい予想通りの作物がとれる。ビジョンもミッションも必要ない。農耕社会のリーダーには人員を的確に管理して作業を効率よく進め、問題があれば対処するといった管理能力が求められる。

狩猟社会ではリーダーのビジョンが間違っていたら目的地についても獲物はいなくて餓死する。メンバーがビジョンに従わなければチームの資源を無駄に使うことになり、食糧不足を引き起こしかねない。

グローバルリーダーに求められる4つの要素。誠実であること、前向きであること、わくわくさせること、有能であること。

日本では誠実とわくわくはそれほど重要視されていない。シンガポールでは有能であることが重要、誠実は重要視されていない。

現地をしっかり日本流にコントロールするには現地の鬼軍曹を入れることも選択肢。現地の文化を理解したリーダーを選ぶこと。

相手の国、文化、組織に対してどのスタイルを取れば効率的にメッセージが伝わり、同意と信頼を得ることができ、人が動くかを理解してこちらのスタイルを調整する。

レイオフの際は組織の修正・再構築をするために、あなたのポジションが削減されることになったという伝え方をし、あなた個人のパフォーマンスとは一切関係ないことを伝える。問題ない人には事前に伝えておく。レイオフされる人はすぐに退出するよう伝える。私物は後日引取に来ることを伝える。

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