アパレル業界で私が知ってること(企画篇)その2:企画準備とか展示会とか
前回、生産量はプロパー販売予算とプロパー消化率から決めるって書きましたが、じゃあ実際に企画ってどういう感じで進めるのよってお話をしようかと思ってたりします。基本的にはシーズン単位で企画しますが、例えば初夏物と盛夏物とは同時に企画してました。梅春と春、秋と冬と防寒はセットです。これはわたしがいた会社の展示会が年3回でそういう括りで行われていたからで、実は会社によって違ったりします。例えば会社によっては「防寒展」とかしてたりします。
大ざっぱな流れとしては下の感じになります。
シーズンコンセプト設定→イメージマップ作成→一点サンプル作成→全体構成作成・確認→単品デザイン みたいな感じですかね。
シーズンコンセプトってのは「今回はどういう風な感じでまとめようか」ってお話で、イメージマップはそれをとりあえず可視化してみたって感じ(雑誌とかの切り貼り)で、一点サンプルってのは象徴的な商品を先行してサンプル作成しておくって感じです。で、全体のアイテムバランスとかを調整して、じゃあ単品はどうしようってのが最後ですかね。ちなみに全体のアイテムバランスの調整の段階で(少なくとも)月別の展開イメージまでは共有していました。そうじゃないと後からちゃぶ台返さないといけなくなる可能性が残りますから。
ちなみに慣習的に一点サンプルまでできたタイミングぐらいで会社にレポートします。まあ、よっぽどのことがない限りスルーされますけどね。ぶっちゃけイメージマップとシーズンコンセプトとで良し悪しの判断なんかできたもんじゃありません。ふわっとしまくってますから。個人的にはシーズンコンセプトとブランドコンセプトがコンフリクトしない限りはわりかしどうだっていいやとか思ってたりしてました。デザイナーがデザインを起こすときのベースとして重要ですけど、だからって私がデザインするわけじゃないし♪って感じですね。
そんなことよりアイテムバランスとかの方に注力しまくってました。コーディネイトスタイルが変化した場合はアイテムバランスを実績ベースから崩さないといけませんから大変です。最終的に説明できるようにしておかないといけませんし、そもそもこの辺りはロジックでやっておかないとちゃんとした反省すらもできなくなりますから。
時期なんですけど、実は生産とか集計とかの関係から、前年同シーズンの販売期間が済んで間もないあたりで展示会を開催します。これは生産側の都合でして、これより遅くしたらちょっと商品が間に合わない可能性が高くなるんです。私がいた会社では春物は6月、夏物は9月→10月(途中で変更しました)、秋冬物は2月でした。これでも例えば春物の受注を集計して発注するのは7月、商品ができあがってくるのがおおむね12月~2月で3月末にはほぼほぼ店頭に投入できるってのがスケジュール感です。シーズンによって差異はありますけど、発注してから入荷までが概ね4カ月から6カ月って感じですかね?夏物は裏地とかあんまりありませんし、わりと縫製とかも単純ですから比較的早いです。逆に防寒とかは6カ月でも油断したらアウト食らいます。生機から押さえないといけない場合なんかは1年半以上前から押さえるんですけど、まあ定番的な商品とか何かには流用できるものばかりですから押さえるだけは押さえてましたが、それ以外は織からですから。まあそれでも割とギリギリですけどね。生産管理なんかからすれば「ふざけんな!」な日程らしくて、よく事前発注させられましたよ。トホホ。
ですので、企画そのものは先行します。シーズンコンセプトとかからスタートですね。で、テキスタイル(生地とか)の準備に入ります。記事サンプルとか取り寄せまくるんですけど、生地によっては前述のとおりこの段階で数量確定する必要もあったりして泣きそうになったものです。面倒なのも面倒なのですけど、あとからつじつまが合わせにくくなるのでできる限り避けたかったんですけどね。でもそれくらい期間はタイトだったようです。QRとかの話を知っている人からすれば「いやそんなにかからんやろ」って話なんですけど、QRできるための前提条件ってのがあるんですよ。生地や副資材(ボタンやらファスナーやらタグやら)がある、工場が空いているとかそういう感じです。逆にクリアしておけばわりと1週間~10日で商品ができあがります。普通はクリアしないだけです。
話を戻すと、ブランドごとにストロングポイントは異なりますから、どういった構成で、とかは様々なんですが、共通して重要なのは「どの時期に何を売る」ってのと「店頭品揃えはどういう状態であるか」です。どの時期に何を売るって方は時間軸に対する変化ですが、店頭品揃えの状態はある時間の状態を切り出したものです。この2つは、特に数字とかが絡んでいない場合には同じものをどういう風に見るかの違いでしかありませんから、一方を他方に変換できます。でもちゃんとやったら手間暇がかかりますので、少なくともこのタイミングでは脳内とかでしかやりませんでした。
で、展示会の1カ月ちょい前にある程度プロパーの前年実績は固まります。その段階で本格的になにをどう作るかを決めていきます。サンプル発注とかもこのあたりから本格的になります(定番的な商品なんかは先行しています)。大体この前後でシーズンの販売予定商品のデザイン数なんかも決まります。予定売価単価(プロパー単価)も概ね決まります。概ねですけどね。後から変更とかはあります。
大抵のブランドは、アイテム別の中心価格帯と最安値とはこの段階かもう少し前の段階で決めてしまいます。エグゼクティブなブランドの場合は決めなかったり(サンプルができてから考えるってのもあります)しますから例外もあります。レースなんかをふんだんにあしらった商品群なんかは見た目と原価が釣り合わないことって案外多いので、後から価格入れ替えたりとかもしますからね(レースはデザイン周期あたりの長さが長いほど高いのが基本)。ちなみに最高価格側は普通は決めません。勝手にある程度に収まりますから。たまに企画提案されることもありますが「いや売れへんやろ」で終わるのが大半で「ひょっとしたらいけるかも?」ってのがごくまれにって感じです。いけそうな気がしたら当然作っちゃいます。ですから上限決めてしまうと楽しくなくなるんですよ。「最悪5割引きでもいいや♪」って感じです。そういうのを置いておかないと平均価格は下がる一方ってのもありますからね。
中心価格帯の商品が最も多くなるように設計するのが基本ですが、気を付けないといけないのは、シーズン途中で中心価格帯が変化することがあるってことです。例えば夏物はゴールデンウィーク前とゴールデンウィーク後、もっといえばゴールデンウィーク前半までとゴールデンウィーク後半以降で明らかに売れている商品価格が変わります。まあだから初夏と盛夏を分けたってところもあります。ゴールデンウィーク後って本当に高い商品が売れにくくて。ゴールデンウィークの間には必ずと言っていいほど「真夏のような暑い日」がありますから、それで慌てて買いに来るからでしょうか。いろいろ理由は考えられてますが、いまいちピンとこないんですよ。ただそうなるってだけで。なんにせよ、そういう変化もあるから要注意って感じです。このあたりはブランド別でいろいろ調べまくっているうちに見えてくるものですが、最初から多ブランドに関わっていればブランド特有なのかわりと一般的なのかがわかるのでその面ではありがたかったものです。
ざっくりとはこんな感じで展示会に突入します。それまではわりとデザイン画とかでやってるんですよね、実は。で、展示会でサンプルチェックしながら実際どうなのよ的な話を煮詰めていきます。明らかにヤバい特徴とかが出ていたら(色が悪いとか長さが中途半端とか)その後に変更します。とは言え展示会段階でサンプルが上がってこないものもそれなりにあって、例えば生地が上がってなくて違う生地で作って「現物はこの生地になります」って書いてスワッチっていう生地の小片みたいなのをつけておいたり、プリント部分をカラーコピーで張り付けてて「現物は」とかやったりしてたんですけどね。
あともう一つ、生地の最低ロットとかは事前に共有しておいて、遅くともサンプルが上がってきた段階では(特に色バリエーションとかを)やるかやめるか決めたりしてました。「意外といいやん♪」ってのもあれば「あ、やめよ」ってのもあって、この辺りは本当にデザイン画ではわかりきらないことが多くて面白くはありました。生地ロットが関係してくる場合って、大抵柄物だったりしますから余計に出来上がりがイメージしにくいんですよね。ここでたまにけんかになりますが、大抵の場合は案外全会一致です。全会一致するのは「売れるか売れないか」という共通軸上で話をするからで「かっこいい/悪い」「かわいい/かわいくない」で判断しないようにしたからです。「むっちゃかっこいいやん。売れへんけど」とかって感じですね。当然ボツか、数量激減させて作るかです。生地ロットとかで数量激減させられなければボツです。
このサンプルを見る仕事ってのが一番楽しい仕事です。でもそのあとの発注のが控えてますからど真剣で、展示会の時の私は動物園の熊のようにうろちょろうろちょろしまくって、夕方になれば販売員とすり合わせってのを毎日(大阪・東京で各1週間、合計2週間)やってたりしました。展示会後の1週間は今度は発注で展示会場にこもりますから、合計で3週間ほどはうなってばっかりいました。周りもわかってるので「うなってるなー」って感じでしたね。たまに席で仕事してたら「あれ?」とか言われましたし。いや日常業務はやらないといけないわけだからね?
じゃあどうやって数量を決めるかってお話が次ですかね?初めて全店舗の発注した時には数字がゲシュタルト崩壊したんですけど、おかげでそれ以降は時間こそかかれど発注そのものはできるようになりました。じゃあどうやって、的なのは次回詳しく説明します。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?