アパレル業界で私が知ってること(データ分析篇3):やっぱり52週分析が基本だった。

 まあ、いろいろ予防線的な事を書いてたりしたわけですが、そろそろ実際のところどうなんよ的な話を始めたいなという事で。

 実際、分析始めの段階ではかなり手探りだったってのは事実です。参考文献とかがいまいち見当たらなかったってのもありますが、積極的に参考文献を探しにいっていなかったのも確かです。ですので、2000年代前半段階でどれほどの参考文献があったのかって正直わかりません。でも、まあ、そんなにあったとも思えないんですけど。

 とは言え、マーケティング分析的な話としての52週分析とかは当時にも話題になってたりはしました。というか土日と平日とで売上の差が2倍から3倍あるわけですから、週合計ってのが分析する為の1つの単位にして大きく分析していくしかありませんでしたし。

 でも、当時の会社としての商品分類上の時系列単位ってのは春・夏・秋冬の3区分です。区分としては春・初夏・盛夏・秋・冬っていう5区分なんですけど、正直初夏と盛夏の商品的な特性やあるべき論なんてのは、この段階では話題にすらなっていませんでしたし、秋と冬も似たようなものです。まあこちらは明確に「冬物だー!」ってのはありましたけどね。厚手のボトムスとかコートとか。
 ですから、3区分をいきなり52週区分にするのって意味ないんじゃね?とか思ってたんですよ、最初は。まあこのあたり厳密に言えば52週の全てに各々の意味があるって風には今でも思っていませんけど、単位として有効かどうかって話です。ですから最初は月でスタートしてみました。

 まあ、月ごとのシーズン毎の販売バランスとかはこれでもとりあえず出ます。でも、それしか出ないんですよね。しかも正しいのかどうかがわかりませんでした。当時はまだ納品も店舗毎でまちまちだったので、そもそもいつから店頭展開されているのかすらわかりませんでしたし。

 それに、ちょっと考えりゃわかるんですけど、例えば3月っていっても3月1日と3月31日では売れるものが同じわけありません。そもそも知りたかったことの1つが「Aというアイテムはいつからいつまで売れるのか」ですし、いつからってのは納品タイミングの話に直結しますから30日のうちのどこかしかわからないのであれば全部を前倒しにしないといけなくなるので生産的にアウトです。

 ここのところ、一見ヒアリングとかで解決しそうに見えるんですけど、販売員って「売れると思ってた商品が売れる」場合はほとんど記憶していなくて「売れないと思っている商品が売れた」事は鮮明に覚えているもんなんです。ですからバイアスがかかります。なので、ヒアリングをしたら現実より早い時期から必要な感じになってしまうんです。

 ごちゃごちゃ言わずに最初から52週でやりゃいいんですけど、これはこれで会社的なデータの持ち方の問題がありまして。データが「○月○週」っていう週データの持ち方をしていたんです。前月末週+当月1週目の合計をいちいちしないといけないんですよ。なのであんまりやりたくなかったんですねー。

 でも、まあ仕方ないから52週でやりました。1日単位でもやってみたんですけど、前述の通りで土日集中型ですからかえってわけがわかりませんので止めました。祝日の影響とか取り除きたかったんですけど、まあ素直に次の課題にすることにしました。

 ってことで52週で分析を行うようにしたら、これだけでいろいろ見えてきました。それ以前からうっすらわかっていましたけど、春秋の彼岸のタイミングで商品的な売れ方が気持ちよく切り替わるとか、ゴールデンウィーク前後での売れ方がどう変わるかとかも見えてきました。秋物と冬物との切り替えタイミングなんてのもうっすらとですが見えてきたりしました。

 要するにこの段階で、シーズン別の販売曲線ってのが見えてきました。基本的には山が一つのカーブになります。というかなるはずです。まあ、当時は主にプロパーばかり分析していましたから、マークダウンがあるシーズンの場合はっていうか、冬物はマークダウンの段階でバッサリ切られるので詳細が見え切っていませんけど。夏物の山はゴールデンウィークと一致してくれましたから大きく考える面では楽でした。細かい話をすればゴールデンウィークの前半と後半とでは売れ筋が変わるっていうか売れ筋単価が変わったりするのですが、当時はそういう事もまだまだ見えていませんでしたから。まだまだ未熟ですが、52週マーチャンダイジングに必要な要素がデータとして揃ってきたわけです。感覚的なところが数値でも説明できるようになりましたから、説得力も違います。マーチャンダイジングの構成を販売員が納得しているかどうかってのは売上面でも重要な要素なので、実際に売上に影響します。具体的には意図を持ったディスプレイとかができたりします。

 シーズンとしての平均としての販売曲線がわかってきたという事は、平均から逸脱する商品群もわかってくるっていう事です。例えば春物が大きく2分類されて梅春物と春物に分けるべきだとかってのがわかってきます。商品に落とし込んだ場合、裏毛トレーナーと長袖Tシャツとは売れ方が異なるのでシーズン分類段階で組み込んでおこうとかそういう感じの事がみえてきます。まあこの場合はアイテム名で区別がつくのでどっちでもいいんですけど。苦笑。

 こういう事をやっていけば、今度はアイテム別販売曲線もきれいになっていきます。そうなったらアイテム内で平均から外れる商品っていうのが目につき始めます。ここらあたりになると商品を見て特徴を探すって感じですかね。割と分厚いよな、とか、これって春物だけど実質夏物じゃね?的な感じです。

 こういった事をやっていけば、ある程度商品の再区分の方向性が見えてきます。春の羽織物は梅春ではなく春に売るものだ、とか、これはブランドによって異なるんですけど、当時私が直接担当していたブランドなんかでは、7分丈パンツは春物、5分丈パンツは夏物、とかそういう細かいところとかも見えてきました。なんか気づいたら企画と話をして、あーでもないこーでもないって言いながら詰めていきました。必要に応じて店頭に行って販売員とも話をしたり、展示会できた販売員を捕まえて話をしたりとかですね。

 まあ、そうやってるうちに、現実的な販売期間が見えてきましたから、年間に対してのシーズン別発注量なんかもそれに合わせる事ができるようになります。具体的には春物縮小夏物拡大なんですけど。当時春物は消化率が悪いので減らすべきだっていうのは議論されていたんですけど、じゃあ具体的にどれだけ減らせばいいのかってのが見えてなかったんです。でもここでk津論づけできましたから、バッサリ行きました。反面で夏物の早期展開の必要性とかの話もしてましたね。後は春―夏物的なのがあったら売れるんじゃないか?とかそういう話もしてました。7分丈トップスとか、薄手素材の長袖Tシャツとかです。

 まあ、実際のところそこまでシンプルではありませんけど、まあデータがあるのと無いのとでは雲泥の差でしたね。うっすらと感づいていた事が数値化されたり、気にも留めてなかった事に気づいたり。仮説ではありますが山ほどいろいろな気づきがありました。

 とりあえず、このあたりは実際に検証できるのは1年後ですから、データをいかに細かく見るかとか、組み替えてみるとか、そういった事の繰り返しです。まあ、あれです。ビクビクものです。仮説だらけですから。

 でも、一年後に実際に販売する段階でそれなりの手ごたえがあった時は、なかなか感無量ではありました。まあこの段階では喜びより一安心って感じでしたけどね。計算してませんけど全社売上の1/4程度を占めていたブランドですし、それまで各店舗で発注していた商品を1人でっていうか、まあチームで全部発注したわけですから。責任重大です。

 とは言え、不安はありませんでしたけどね。商品の目利きの話以外でも発注精度が上がる事は見えていましたから。サイズバランスとかだけで充分それまでよりクオリティが高い発注ができるっていう事はわかってましたし。ある種のイカサマみたいなものです。でもこの程度のイカサマを仕組めないようだとこういった大規模な改変はできませんでしたしね。

 そういや、このあたりでどんなことをしたのかってまだ書いてませんね。苦笑。次はちょっと脱線してそのあたりの話を書こうかと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?