アパレル業界で私が知ってること(システム周り篇1):予定以前の基本的問題

まあ、他の業界にも多少はそういう面があるのでしょうけど、アパレル業界で顕著なのは「発注通りの数量が納品されない」っていう問題です。遅れるとかじゃなくて不足で終了です。

これには生地の調達のところが大きなボトルネックになってまして。以前生地は大ロット前提とか書いたと思うんですけど、例えば生地に不具合が見つかったとして、じゃあその生地を作り直せるのかっていうと作り直せなかったりします。特に単シーズンのテキスタイルなんかはそうです。不具合=生産中止or生産減です。

生地屋さんだけの問題じゃない場合もあります。生地を発注する時に、要尺っていう、1着当たりに必要な生地の長さを計算するんですけど、実は生地の幅ってまちまちとまでは言いませんが、概ねシングルってのとダブルってのがありまして。いわゆるニット・カットソーってのは編んでますから性質上2重になってるもんですから、まあザクっとダブルって呼んでまして。単純にシングルの倍の幅があるんです。織物でもダブルはあるんですけど、シングルっていうか、要するに半分の幅の場合があります。特に昔の手作業時にはここで間違える事が多くありました。基本はベビーアパレルでしたからメインで使うのは綿のカットソーです。そういう中でたまに布帛とか使うと要尺間違えて、単純計算どおり半分しか納品されなかったなんてのもざらでした。

もう一つ間違いやすいポイントがありまして、柄物の場合、特にストライプやチェックなんかは縫い合わせる時に柄をできるだけ合わせるように裁断するんですが、当然なにも考えずに裁断する時より要尺が長く必要になるんです。で、その分納品が減ると。

あとは工程途中で不良がでたり、まあいろいろあるんですけど、基本的には減る側に数量が変わるんです。たまに生地を余らせないように余分な量を縫ってきてくださる工場とかもありましたけど、誤差なのでそこは黙って受領。工場との関係は重要ですし。

要するにここで言いたいのは「計画数どおりに入荷しない」ってのが日常だってことです。下手すりゃ初回投入分すら不足するなんてのも日常です。

当然なんですが、計画段階での各店舗への投入数を入荷した数量に合わせる、要するに投入数を減らす作業ってのがありまして、これを分配とか呼んでました。

これも企業的には当然なんですが「買い取ってくれる先」「よく売れる先」からはできる限り数量を減らさずに「消化率が悪い先」や「支払いが遅延気味な先」や「引取り率が悪い先」なんかから優先的に減らしたくなりますし、優先的に減らすのが企業としてリスク回避とかに繋がります。

実はっていうか、ぶっちゃけこのあたり手作業だったんです。結構定性的な要素も多いので、ひょっとしたら未だ手作業の会社があっても不思議でもなんでもありません。

でも、これ、誰がどう考えても「手作業無駄じゃね?」なわけなんですよ。でもメカニカルにっていってもどうすべきなのかって話です。

私がこのあたりに関わった段階では「店舗にランクを着けて下から減らしたらどうだ」案ってのが出ていました。即時却下ですね。下位ランクの店は商品ほぼゼロとかになりかねません。そもそも下位ランクの1枚減らすより中位ランクで3枚とか発注してるんだからそこから減らせよって話です。

解決案の方向性はすぐ見つけました。下位ランクの1枚中の1枚と上位ランクの複数枚中の1枚が同じくらい重要だと仮定して、計算させた結果一番不必要だと思われるところを減らせばいいんです。1枚減らしたら再度計算しなおしてってのを以下繰り返して合計数量=入荷数量になるまでやればいいわけですから。

まあ、でも開発そのものはそれなりに時間が(1年位?)かかりました。特に重み付け(下位店舗の1枚と上位店舗の10枚のうちの1枚とではどちらが不要なのか?って感じの話です)のバランスはなんども調整した記憶があるようなないような気がします。あとランクそのもののつけ方にも苦労しました。まあここに関してはこのタイミングの時は独断で決めましたけどね。そもそも手作業でやっている段階で私が独断してましたから所詮同じことです。っていうか、この段階で少なくとも私以上に全店舗を平等に扱える人間はいませんでしたから(全店舗に関わる仕事をしてたのが私だけなので当然です。普通は部門別しか知りません。西日本と東日本で分かれてましたので、そもそも西日本と東日本を平等に扱えるのも私くらいでした。まあ職務内容的にそうだってだけの話です)。

もうちょっと具体的に言いますと、ランクを1~10まで分けまして、店舗別の発注数量をこのランクの数字で割るんです。ちなみにこの場合ランク10が一番大事なっていうか一番減らしたくない店に該当します(実際はランク1000とかっていう、その店舗の発注数量未満の入荷の場合以外は絶対に減らないパラメータを指定した店舗もありましたけど)。で、その割った数字が一番大きい店から順番に1枚ずつ減らすようにさせました。理屈は簡単ですね。

このランク方式、ものすごく精度が高くて、私とかが手でやってたときより不満が減ったりしました。まあ定性的なものを(あるいみ定性的なままでなんですけど)定量化したわけですから、当然と言えば当然ですけど。

でも自分でやってもこうするよな的な答えが返ってくるのは快感でしたし、ぶっちゃけここでの作業効率は20倍とかそういうレベルでしたし、クオリティも下がらずどころか下手したら向上しましたし。

ついでに言えば、実は紙ベースでやっていた分配、入力作業もあったわけなんですけどここもシステム的に繋いじゃったのでそれを含めれば100倍とかそんなレベルの改善効果です。フルで6人位でやってた仕事(時期によりますが、大体平均してそんな感じだったかと。うろ覚えです)が1人で半日未満で済むようになりましたから。

ただ、その後基幹システムの改変というもっと大きなイベントがありまして、まあ発展解消と言えればいいんですけど、分配システムに関してだけ言えばグレードダウンしちゃいました。実稼働1年強ですかね?これがあったからこそ次のシステム構築に生かせたとも言えるんですけど、ちょっと捨てるには残念で、システム担当者と一緒に「もったいね~」と嘆いた記憶があります。

さて、次あたりからは基幹システムの乗り換えの話ができそうです。何があってどういう風にしたのかってのを思い出しつつ、うろ覚えでも覚えているうちにメモっておこうって感じですけど。

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