アパレル企業が真っ当なやり方で売れ残りの廃棄を減らす方法のお話。
と題名を書いてみたもののですね、実のところ商品廃棄なんかしたらBS上の在庫額が減少しちゃいますから、ぶっちゃければ、廃棄させてもらえなかったんですよね、実は。というかわかってたから廃棄しない方法を考えてたわけですけど。
このあたりはお金がない企業の哀しさでありまして、個人的には「それを捨てるなんてとんでもない!」でしかなかったりしたわけです。
ですので、世の中的にアパレル企業が売れ残り商品を廃棄しているなんてのは、個人的には「うらやましい」ってのが本音です。捨てたくても捨てられなかったから意地でも売ってました。ついでに言えば売るにしても原価割れさせるとBSにダメージがいくので、単品で原価割れしたとしてもトータルで原価割れしないように調整とかしてました。
さて、フランスで売れ残りの商品を廃棄するのを禁止する法案が準備されてるとかっていうのを小耳に挟んだりしたんですが、個人的には「いや捨てる前提でモノ作っていいのかよ」でしかなくて、正直何一つ問題だと思ってなかったりしてます。
でも、実はこの考え方って、現在のアパレル業界ではどうも異端なようでして、大手メーカーさんとかでも廃棄してたりするそうです。
ですので、折角なので真っ当なやり方側で売れ残りの破棄を減らす方法ってのを書いてみたいなーと思ったりしたわけです。
ちなみに、真っ当じゃないやり方ってのもあります。簡単に言えば工場とかに在庫を抱えさせりゃいいわけです。
もっと言えばQR的な準備だけしておいて、生地とかで在庫を持つようにすれば、まあ製品の廃棄はおきません。
要するに仕入れ先側に迷惑を掛ければ何とかなるってのが、真っ当じゃない方のやり方です。アパレルって日本だと(多分フランスでも)それほど国内生産してませんから、国際的に取り締まらなければ抜け道だらけです。
まあ、正直こういうやり方は好みじゃありません。好みじゃないやり方を効果的だからっていう理由だけでやるほど大人じゃありませんし、結果論的にご迷惑をおかけするってのはあるかも知れませんが、計画段階でご迷惑をおかけする事を織り込むのは徹底的に何かがおかしいわけで、そんな商売なんて長続きするわけありません。
ですので、真っ当に商品廃棄を減らすことを考えていました。っていうか材料すら廃棄させないようにしてこそ本領発揮だと思ってましたね。まあ現場でがっつりやってた時代ですから、その程度の事がやれなくては全社改革の最先端なんか走れやしないと思ってました。考えてみればなかなかの自信ですね。でもそんなに難しくなかったからなー。っていうか違うブランドが残した生地まで引き取ってましたし。
実際どうしてたかっていうと、もう嫌になるほど単純で、要するに
「販売計画に即した量以上は絶対に作らない」
という事を徹底してただけだったりします。
個人的には当たり前なんですが、販売計画を策定する段階で
「プロパー」(正価ですね)
「マークダウン」(季節の終りのバーゲンですね)
「バーゲン」(これはちょっと説明要りますけど、要するに経年した商品を催事場とかで販売する場合を区別してこう呼んでました)
という区分で売上計画を作ってました。
実はこれをやっていないアパレル企業って多いらしいです。個人的には驚きなんですけどね。どうやって必要量算出してるんだろ?
それを元にして生産金額計画を立てます。
理想的には
「プロパー販売額」+「マークダウン販売額÷(1-マークダウン率)」
なんですけど、これだったらマークダウン後の消化率が100%にならないと残品が出ます。
ですので、実際には
「プロパー販売額」+「マークダウン販売額÷(1ーマークダウン率)」
+「次年度バーゲン販売額÷(1ーバーゲン割引率)」
という感じの計算式を組んでました。
ちなみに、この時にブランド力が強いとマークダウン販売額が大きくなりすぎちゃいますので、マークダウン予算は基本的には前年度より低く、その分プロパーで上げられるなら上げる、上げられなかったら上げないってのをやってました。実はプロパーをそのままにしておけばマークダウン分売上が下がりますが、マークダウン売上に期待する方が間違いだと個人的に思ってましたから、まあ基本は無視してました。
とは言え、そういうのをやる前の実績金額ってのはありますし、マークダウン額はそれはそれで売上ですし、薄利ですけど利益額も出ますから、ここはバジェットって言われる、まあ要するにマークダウンで売る事を前提とした商品を差し込む事で対応していました。
バジェット商品を作る時なんですが、マークダウンで売る事を前提としていますから、できれば原価率は抑えたいところです。でも商品クオリティを下げると地味にダメージになります。そもそも商品クオリティが会社の売りでしたから、たとえバジェットであっても商品クオリティだけは下げたくありません。
まあこのあたり、理想論すぎるとか言われちゃいそうですが、実はできます。しかも案外簡単に。というよりこれが可能だからバジェット作成にGOサインを出してたんですよね。
じゃあどうしてたかっていうと、商品クオリティ以外のところで手抜いてたんです。簡単ですね。
例えば生地は残反を使う(ここで生地余り分を消化してました)ってのが一つの方法です。残反ですから、細かい話をすれば生地代の償却的なものはプロパー商品を作った段階で終わってます。っていうか終わらせてなかったらご迷惑ですよね。ですので生地代抜きで計算できます。
後はデザインやパターンを既存のモノを流用するってのも基本的な方法です。デザイン料やパターン料は内製化していたとしても労務費換算で原価の中にありますから、ここを省略できるってのは大きいんです。実際には生地特性に合わせた最低限の補正はしてもらってましたけど。
まあ、バジェットに関してのみ言えば、デザイン性を追求しない事で原価を下げてたとも言えます。っていっても数か月~1年程度前のデザインですから、最新ではありませんが古いわけじゃありませんし。
大雑把に言えば、プロパー+マークダウンで消化できる限り消化して、翌年の催事で全部売りさばくってのをやってたってだけで、何一つ特殊な事はやってなかったりします。ついでに言えば福袋なんかも強い味方でしたね。
このあたりを徹底的にやるだけで、在庫廃棄どころか廃棄してたら在庫が足りなくなるみたいな状態にすることは、まあそれほど難しくありません。っていうか私の基本的なスタンスって生産量≦販売量でしたから、残品は売って減らしてました。
まあ、条件付きではありますけど、全ブランドを見るようになった時なんかは、残品を売らないと売上予算にたどり着かないなんて事までやってましたからねー。そこまで説明して数値に落とさないと勝手に作ったりするんですよ。っていうかそこまでやって数値に落としていても勝手に作ってた部門とかあったのは・・・愚痴ですけど。
まあ、特殊でも何でもない事をやるだけで廃棄商品なんてのは限りなくゼロにできるのに、何で廃棄商品が問題になるの?って感じなんです。
とは言え、これを現実化させるための季中のオペレーションってのはなかなかに複雑です。販売期間変更とかってのも対策でしたし、マーケティング的に対策する事もありました。POP作りとかを日常的にやってたりなんかもしましたからねー。
利益計画がずれるのであまりやりたくなかったとはいえ、プライス変更ってのも対策ですし。極端な例だと素直に諦めて福袋材料へGOってのが最適解だったものもあります。
まあ、そういう事をやってました。要するに最初から最終消化率を100%に設定してモノづくりしてたら予算にたどり着かせる事だけ考えてりゃいいんです。ですので理想はマーケティング的手法ってやつですね。いろいろやりましたけど、いちいち書いてたらキリがありませんし長くなりますからいずれ別のところで。
まとめれば「残さない」前提でモノづくりしてりゃいいってだけです。逆に言えば廃棄商品問題の裏側には残す前提のモノづくりが隠れていますね、多分。
ちなみに、この時に犠牲にしたのは「売場の商品ボリューム感」です。売場が広かろうが狭かろうが売れる分しか送りませんから。いわゆる坪売上が低い店はスカスカです。
ま、スカスカな状態で見栄えを取り繕う方法ってのはいろいろありましたから、そういう事もやってましたけどね。やってみれば意外となんとかなるもんですよ?
まあこれはこれで面白いので長く書きたいのでいずれ他のところで、ですかね?
ってな感じで「それを捨てるなんてとんでもない!」な話です。廃棄なんて贅沢させてもらったことねーわ。苦笑。
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