アパレル業で私が知ってる事 雑記。オンワードの今を勝手に想像してみる。

 オンワードがどうもZOZOから撤退しようとしているっていうか実質的には撤退したっていうニュースとかが入ってきて、オンワード側ってよりZOZO側が目立っていたのでオンワードの撤退が大きく取り沙汰されてきたわけで、ZOZO側ってどうなるのだろうなー、とか思いつつ、逆に「オンワードって今どうなってんだ?」っていう疑問が生じまして、オンワードホールディングスのホームページを見たりなんかしてたら、丁度1月11日に決算短信と業績下方修正のお知らせが出てまして。

 本来、四半期ごとで利益率が思いっきり変わるアパレル業界で3Qの累積決算短信から何が見えるかっていうのはちょっとどころじゃなくかなり荒っぽい事なのかも知れません。
 でも、まあ同じアパレル業でこういった数字と格闘しまくっていた経験っていうフィルタを通せば、それはそれでなんとなくどういう状況で今どんなことを考えてるんだろうなーってくらいは想像できそうな気もしてたりします。
 まあ、折角なので頭の体操的にちょっと見ていこうかってのが今回の趣旨です。いつもと同じく主観もいいところなので、異論反論ドンドン出てきて欲しいなー的な?

 っていう事で見ていきましょう。見るのは、
 https://www.onward-hd.co.jp/
 の中の
2019年2月期 第3四半期決算短信(PDFファイル)
 と、
業績予想修正に関するお知らせ(PDFファイル) 
 だけを見ていきます。内容が少ない業績予想修正をまず見ましょうか。

 通期予想で、通年計画の売上高が 243,600百万→243,100百万(△500百万)になっています。金額だけ見れば5億円ですけど、要するに当初予定の99.8%ですね。こんなもんは企業規模から見ればぶっちゃけ誤差です。とっとと次行きましょう。
 営業利益が5,400百万→4,150百万ってなってます。△1,250百万です。ちなみに経常利益は一旦無視します。営業外収支はちょっとめんどい。笑。

 さて、この数字から見て脊椎反射的にわかる事は大きく2つあります。
1つは「元々の売上対営業利益率がそもそも2.2%だったんだな」っていうことで、もう1つは「売上の低下より営業利益の低下の方が大きいんだな」って事です。ちなみに修正側の業績予想での売上対営業利益率は1.7%です。

 このことを踏まえた時、アパレル脳的にまず何を考えるかっていうと「粗利が低くなる予想なんだ」って考えるんです。
 このあたり、実際のところはわかりませんが、他業種とアパレル業との大きな差かも知れません。普通の場合だったら固定費率とかを疑いますし、実際私だってこれが他の業界の数字だったら固定費的なものがどうなっているのかを疑いながら読むと思います。

 でも今回はアパレル業です。ついでに言えば斜め読み的な読み方してますから深いところまでは見る気もありませんし。深いところをみるなら少なくとも前年の四半期ごとの推移を参考にしますからね。アパレル業って本当に四半期ごとの利益率が、粗利段階で全然違うんですよ。
 まあこれは当然で、1Q(3月~5月)ってのはプロパー販売メインです。ここを取り出したら粗利率は高くて当然です。次の2Q(6月~8月)は逆にメインはマークダウン販売ですからここを取り出したら粗利率は低くなるに決まってます。まあそういう業界ですから仕方がない。苦笑。

 さて、通期予想が売上で500百万、営業利益で1,250百万下回る予想っていう事は、お知らせの本文にも書いてありますけど、要するにプロパー販売が辛かったんだろうなって事がわかります。業界の人だったらこんな理由なんか読まなくてもわかるんですけど。苦笑。

 さて決算短信の方も斜め読みしてみましょう。
 プロパー販売がつらかったって書かれているっていう事は、在庫を処分する必要が出てくるって事ですから、在庫がどうなってるのかをまず確認したくなります。このあたりもひょっとしたらアパレル業的な発想な気もしますけど。

 B/S上の商品及び製品ですが 、43,547百万になっています。比較対象として示されている前会計年度末は36,143百万で、ここからかなり増えていますけど、2月末って一番在庫が少ないタイミングですからここの比較は一旦無視です。増えてて当たり前なんです。前年の同じ時期との比較だったら意味があるんですけどね。
 規模感がわからないのでPL上の売上とかと比較します。
売上は 178,648百万、売上原価は 94,053 百万ですね。ここから見える粗利率ってのは47.4%です。原価率で見れば52.6%ですね。残りの4Qがマークダウンでの販売時期を持っている事を考えた場合、ちょっと不安な数字です。ですので昨年同時期の原価率も計算しておきましょう。51.9%です。ちょっと悪くなってますね。けどそもそも売上高対営業利益率が2%とかの商売をしているわけですから、この0.7%くらいってのが大きい意味を持ってきますね。

 折角なので在庫回転率的なものを出してみましょう。今回は売上原価がわかっていますので、売上原価を使います。売上高を使うより「視覚的」な結果がわかりやすいのですよ。
 えーと、3Q終わりなので9か月経過ですから…ややこしいな…先に在庫月数計算します。約4.17ヵ月です。ってことは在庫回転率だと2.88回転/年ですね。
 多いなー、おい。ってのが正直な感想です。大雑把な考え方ですけど、年4回商品が切り替わる前提の商売ですから、せめて4回転して欲しいところです。在庫月数で言えば3か月ですね。でも、まあ11月末だからなー。年間で一番在庫が増えるタイミングっちゃそれまでだけどなー。でもやっぱり多いかな?って感じですかね。

 さて、さっきはスルーしたんですけど、粗利率に戻ります。アパレル商品の単品としての原価率が50%超えているわけはないってのは、まあ普通に考えてわかると思いますし、このあたりの事も最近ではよく知られ始めていますからぼかす必要もないんですけど、原価率が50%を超えているという事は、要するに少なくとも半分以上は値引き販売してるんだろうなーっていうのが見えてきます。仮に原価率が対上代で25%だったとしたら、粗利が50%になる販売額は対上代で50%オフです。まあオンワードの原価率は知りませんから何とも言えませんが、まあ半分以上の商品をプロパーの半額で売ってる的な数字だなーってわかります。

 まあここまででも大体の状況はわかりますが、折角なので流動比率と当座比率くらいは見ておきましょう。流動比率は約1.2ですが、当座比率は約0.79です。流動比率と当座比率の違いってのは「商品及び製品」ですから、まあ要するに商品が多いから当座比率が1を割っちゃうって事になります。

 このあたりまで見るだけでも、オンワードの経営上の問題が見えてきた感があります。要するに
1:商品回転率が悪い
2:粗利が低い
 ですね。で、理由としては、
3:マークダウン販売などの値引販売が多い
 っていうことが想像できます。問題と問題を引き起こしている理由がわかれば課題設定が可能になります。つまり、

値引き販売を少なくするにはどうすればいいのか?

 を考えるのが課題となります。さて、ここでオンワードが現在置かれている状況ってのが見えてきました。

 つまりですね、ZOZOTOWNにおける「年中割引販売」的な考え方っていうのは、オンワード側から見れば課題をクリアするための障壁なんです。

 課題がこれであれば「(今後は特に)プロパー販売に拘りたい」というのがオンワード側の思惑であって、その際に「ZOZOでの値引き販売」っていうのは看過できないわけなんです。自分の会社でプロパーで販売しようとしている商品が他所で割引販売されてたら、結局自分たちもそっちの値段に合わせないといけなくなっちゃいますから。

 まあ、多分そんな感じの事があったんじゃないかなーって勝手に想像してたりします。ざっくり言えばオンワードの社内で「やっぱプロパー販売充実させていかないとヤバいよね」的な話をしている矢先にZOZOでキャンペーンですから、おいまてちょっとこら、的な感じだったんじゃないかと。
 つまり、改善しようと思っている方向性と真逆の方向性を示されちゃったわけですね。まあ軽めにヒステリックな動きになった可能性はありそうです。
 でも、まあ、ZOZOが割引販売前提の商売を続ける限りオンワードが戻ってくる可能性は少ないと思います。ブランディングの上で価格っていうのは重要なんですよ。特に(少なくともマークダウン時以外に)値崩れするって事は世の中的にブランドとして認められていないっていう事ですから、ブランディングをする際には重要なんです。ブランドイメージは最終的には外側がどう思うかって話なんですが「このブランドはこういう意図で作ってるんだ!!」的な発信はブランディングでないとできません。っていうか発信することをブランディングって言うって考えても的外れではありませんから。「いろいろ考えてるけどあえて発信しない」ってのもありますから、的外れじゃないだけで正解でもないんですけどね、多分。苦笑。このあたりブランディングとかブランドとかブランドイメージとか適当に使っちゃってますね。うーん。一度自分なりに整理しておくべきかも。いや申し訳ございません。流してください。トホホ。

 まあ、そういう意味ではオンワードの離脱っていうのはZOZOにとっては少なくとも短期的・数字的にはそれほどの影響はないと思っています。でもZOZOっていうのがメーカーから見た時に「ブランディングさせてもらえない」プラットフォームだという事が見えてしまったっていうのは今後を見据えた時に大きなマイナスになるんじゃないかな、って思ってたりします。まあ、そんな感じ?苦笑。

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