アパレル業界で私が知ってること(予算管理篇3):計画に対して上振れしても下振れしても大変。苦笑。

 いきなり極論からスタートしちゃいますが、計画は立てるのは所詮数字遊びでしかなくて、押さえるところさえ押さえておけば、まあ誰でもそれなりには作れます。当たり前ですねー。でもまあ押さえるとこ押さえ損ねる人も多かったり。苦笑。
 この時に大事なのは、プロパーとマークダウンの販売比率と生産量とのバランスで、粗利予算を立てるときにここをちゃんと考えておけば少なくとも数字上はちゃんと実現可能な予算になります。
 逆を言えばここを無視して予算構築したら売上と粗利の関係がぐしゃぐしゃになって実現不可能な予算とかになりますけどね。ちなみに1年ほど物流倉庫で仕事をして戻ってきたときの年間予算が計数的に破綻してました。いきなりこれかよって感じで、笑うしかないスタートでした。とりあえず指摘だけして裏で独自にBプラン予算構築してたりしてました。まあ脳内でですけどね。

 それはさておき、実際の予算構築の際には「売上予算」と「売上予算のプロパー・マークダウン比率」「マークダウン率」「最終消化率」「一品当たりの原価率平均みたいなの」で諸元出揃うって感じで計算したら粗利がでるみたいなイメージで作ってました。まあ、実際に予算作成する時は粗利額からスタートする事が多かったりしますからイメージです、イメージ。
 まあ、要するにこの数字の動向さえ押さえておけばとりあえず予実管理や変動への対応なんかは余裕なわけですね。

 さて、実際問題として販売予算と販売実績が乖離したら何かしらのアプローチをする必要性が出てきます。
 まあ、売上が最初に狂う要素です。季節商品ですから長期的な季節変動に影響されて、まあ普通に狂います。

 ここ「売上がいかない理由に天候を使うな」ってよく言われるんですけど、実際に天候に影響されます。ですので「売上がいかない理由に天候を使うな」ってのは「予算構築段階で一定レベルは想定しておけ」っていう意味だと個人的には解釈しています。どっちかっていえば予算を構築する側でしたので、他部署とか部下とかに「売上がいかない理由に天候を使うな」って言った事はありません。「だって天気のせいだもんなー」ってのが本音でしたし、本音で生きてましたからね、当時から。笑。

 狂うっていっても狂い方にもいろいろあって「良い方向に下がる」とか「悪い上がり方をする」なんてのも日常茶飯事なのがアパレルの面倒なところです。「良い方向に下がる」ってのは、例えば消化率が高すぎて売上が低迷する場合なんかそうですね。もったいないんですけどリカバリーしない方が結果的に正しくなります。「悪い上がり方」の例で言えば、そうですね。例えばマークダウンの翌月に、マークダウン商品が残った事で本来プロパー販売で取りたかった分以上にマークダウンで売上が伸びてしまった場合とかですね。

 とは言え、要するに「プロパー」と「マークダウン」との売上をきちんと把握しておけば良いだけの話でしかありませんけどね。

 でも、まあ、単純化した場合「プロパー時売上が上がればマークダウン売上は低下する」「プロパー時売上が下がればマークダウン売上計画で調整する必要があるので粗利率は低下する」ってお話になります。重要なのは相関関係(まあ、実際には因果関係なんだけど)が生じているよって話なだけです。

 ちなみにここの状況を手っ取り早く見たいので、普通はシーズン別月別予算とかを作っておきます。まあ、社内にはオープン、対外的には隠す的な資料ですかね?隠す意味もないのですけど、オープンにしたら説明が面倒なんですよ、これ。ですので大抵のアパレル企業は作っているはずですが、大抵のアパレル企業は開示していません。二分化すれば社外秘になります。個人的には隠すほどのものじゃないよなーって気もしてますけどね。ただ、いちいち説明するのは嫌なので求められたら出してもいいかなって感じなのも事実ですね。

 さて、シーズンインして最初の段階で予算を下回ったら当然面倒なんですけど、上回ったら上回ったで面倒です。下回った場合はとりあえず下回った分の商品をマークダウン側に振り替えて目測しておきます。上回った場合はマークダウン側からプロパー側に振り替えて目測しておくといいとは思います。

 さて、当たり前の事なんですけど、
 プロパー販売で予算を上回った場合、端的に言えば、商品不足になります。
 プロパー販売で予算を下回った場合、端的に言えば、在庫過多になります。
 まあ、ぶっちゃけどっちの場合も困るわけなんですよ。

 ここで面倒なのは、予算を下回った場合はみんなが「ああ、悪かったんだな」って言うのを共有できるんですけど、予算を上回った場合「良かった」っていう判断だけして放置する場合があるってことなんです。 

 ここって、まあ言っちゃえば面倒なだけなんですけど、誤解されがちなんですよねー。
 プロパー予算で上回りました→マークダウンで売上落ちます。
 っていう話なだけなんですけど、実際には、
 プロパー予算で上回りました→マークダウン時の売上も上がるでしょう。
 っていう判断されちゃう場合が多いんです。これは2018年1月あたりで「ユニクロ不調」っていうニュースが流れた事からもわかるように、本当に誤解されやすいんです。この事例で言えば、2017年12月とかまでにプロパーで商品が売れたので1月に売る商品が無くなったってだけで、アパレル業的には万々歳なんです。でも不調って言われちゃうっていう、こういうとこです。

 そもそも大抵の店舗では機会ロスが目に見えるようになる消化率と、在庫ロスが意識される消化率っていうのは重なっている領域が存在しています。   
 プロパー消化率は月坪あたり売上(厳密には月棚あたり売上)に依存するので、現在の大半のアパレル小売店舗の月坪あたり売上ではかなり広い領域で重なり合いが起きています。
 端的に言えば、少なくとも現時点では大半のアパレル企業では在庫ロスと機会ロスの両方を許容できる領域は存在していないんです。ゼロです。
 まあ、ここがゼロだって事がアパレル業界の大きな課題の一つ(少なくとも私の中では問題ではなく課題です。問題は「現在のアパレル業は消化率が低すぎる」です)ですので、まあ、そのうち詳しく書きます。一応「アパレル業の最低限こうであるべき姿」的なものまでは書く予定にはしていますので。

 

 閑話休題。要するにプロパー売上が上がったらマークダウン売上は落ちるっていう、世の中一般とはズレた感覚が必要なんです。その上で「じゃあマークダウン用に商品作る?」っていう問いかけをしながら適当に(臨機応変と言いたいところですが、私の場合は基本適当にです。まあやる事は一緒なんですけど)を練るのが必要になります。
 例えば、防寒物不足とかになったら、まあ個人的には無視します。作って残ったら悲惨ですから。逆に夏場のTシャツ不足だったら多分作りますね。作り易さとかそういうのもありますし、消化しやすいってのもあります。このあたりはブランド特性とかそういったものを含めて検討してました。

 プロパーで売れなかったらマークダウンで売る事を考えます。ここでブランドの強さってのが如実に現れます。強いブランドってマークダウンしたら売れるんです。逆に言えばマークダウンしたら売れるようなブランディングが成功していれば一旦はブランディングに成功しています。さらに上を目指すならマークダウンしなくても消化できる、なんですけど。まあ敷居が高すぎます。カジュアルファッションでは、まあ、うーん。かなり難しいと思います。やってやれない事はありませんが、時間と金の両方が要ります。あとちょっとした工夫も必要ですかね。フォーマルとかだったら普通にマークダウン無しを目指しますけど。っていうかそういう前提のブランディングします。

 この事は、逆を言えば強くないブランドはマークダウンしても売れないって意味です。当たり前なんですけど、その当たり前がなかなかわからないってのが面倒なところです。極論すればマークダウンで売り切りたけりゃそれだけ強いブランドにしておけって話であって、これは違う視点から言えば希少性を高める努力しとけって話です。

 話がずれてきてますね。失礼。
 要するに、弱いブランドの場合、プロパー消化できなかったらマークダウン販売を目指すんですけど、マークダウンで消化できる確率が低いって事なんです。

 予実管理上の話で言えば、強いブランドの場合、プロパー消化できないと予想した分量はマークダウンに回して、マークダウンで消化してしまえるという見込みを立てる事が可能なんですが、弱いブランドの場合、プロパー時期に実績が予算を下回ったら、マークダウンの見込みもどちらかと言えば減らすような感じで考えないといけないってところで、ここで見極めが必要になります。面倒ですねー。この場合に触るのはマークダウン率です。売れる値段まで下げて考えておくんですね。当然粗利率は減少します。額も減少します。でも残品が残るよりマシなんですよ、実際。

 ここでもまた数字の面倒なのが登場してきまして。実はマークダウンしない方が粗利率は高いんです。当たり前ですねー。でもその当たり前が何を意味しているのかを理解しておかないとアパレルは潰れます。
 端的に言えば不良在庫化します。アパレル業での不良在庫ほど本気の不良在庫って世の中には案外少ないんじゃないかなって思うくらい経年すればするほど売れなくなります。まあいろいろな要因があるんですけど、とにかく売れません。笑。
 そうなるとキャッシュフローが悪化するので会社は潰れます。
 もうちょい細かいレベルの話にすれば、マークダウンで販売すれば粗利率は低くなりますが粗利額は多少なりとも増加します(予算に近づきます)。

 まあ、そういう感じで調整っていうか、数字を触ってました。
 とは言え、実際のところ、生産しちゃえば売り切るしかありませんから、生産計画段階である程度の許容範囲的な物を想定していましたね、実際のところ。要は下振れしても作ってなかったら問題ないんですよ。笑。
 ですので、実は予算通りに売れたら途中で作らないと商品が不足するっていう構造にしていました。追加生産枠ってのを残しておくわけです。

 実際のところ予算通りの進捗の場合、
 強いブランドだったらそもそもマークダウン用の商品を作りこまないと売場の要望に応えらない(要するに作るのが前提なので数量調整だけにしておく)
 弱いブランドだったらそもそもマークダウン用の商品が多少少なくても売場的には問題が発生しない(そもそもマークダウン売上に期待してない)
 という2つの、身も蓋もない言い方をすればごまかしがきくポイント(一応言っておけば対外的になんとかなるって意味で、社内ではきちんと説明してました、っていうかそういうのも含めて管理するのが仕事でしたからちゃんと数値管理して問題が無いことを確認してました)がありまして、このあたりを念頭に置いて予実管理や生産量管理を行ってましたね。

 うーん。なんかこのあたりグダグダ感が半端じゃないですね。表とかで書いたらわかりやすくなるのかなー? 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?