アパレルで私が思ってる事。 主観に基づいた現在の見解。2:ECだったらどうよ?

 さて、ECの場合はいろいろ状況が変わります。最大の変化は店頭販売員が不要になるっていうところです。ただし出品している商品の管理は(店頭の販売員などの代わりに)誰かが本部でやる必要が出てきますね。そういう意味では本部費用が若干上昇します。ただし販売員が行っている接客やレジ処理が不要になりますから、人数的には少なくて済みます。

 反面、販売員のテクニックによる販売ってのは不可能になりますから、どうしても消化率は低下します。ついでに言えば服を身体に合わせて見るという事ができないので、サイズ違いの販売が困難になりますし。リアル店舗だったら試着して「まあいいか」ってなるんですけど、ECでこれはありません。どういう事かと言いますと、売れにくいサイズの商品を販売するのが困難になるわけです。売れにくいサイズってのは普通は一番小さいか一番大きいかなので、売れやすいサイズばかりが売れてしまって在庫がゼロになった場合、ぶっちゃけ売れにくいサイズだけが残った商品を展開し続けるのはリソースの無駄になったりもします。

 このあたりが覿面に出るのはマークダウン商品の販売時です。店頭だったら自分のサイズの上下のサイズがあればとりあえず合わせてみて、許容範囲だったら購入していただけるんですが、ECの場合これに期待するのはちょっと難しいのも事実です(いや私なんかは割と平気ですけどね。サイズの差が実際どの程度なのかってわかってますから、モノにもよりますが、大きい側なら買います。最悪自分で直しますし)。
 もう一つ面倒なのは、ボトムスのサイズ直しの問題です。ちょっと見た感じだとボトムスの裾直しはやっていらっしゃらないようですね。私みたいに自分で直すってのは例外として、これが障壁になっている人も多いんじゃないでしょうか?

 さて、上記の問題をクリアしていこうと思えば
①サイズ展開の幅が必要
②ボトムスは売れにくい可能性がある
③中央の良く売れるサイズでの欠品はさせたくない
ということになり、端的に言えばプロパー消化率が稼ぎにくい構造になると思われます。1アイテム内のSKUは増やせば増やすほど消化率が落ちるのが普通のパターンです(当然例外はあります)から。

 まあ③の問題に関しては、販売データがある程度出揃えば対応は容易です。②の問題はそもそも論なのでボトムスの展開量を減らして様子を見ればいいってことになりますね。

 とは言え、ZOZOTOWNから見れば歩合が売上です。最低保証を付けているようですが、ぶっちゃけ最低保証レベルの売上で満足されちゃ困るわけですよ。ブランド展開の取捨選択にはZOZOTOWN側の意向があることでしょうから、ある程度の売上を確保しておかないと追い出されちゃう可能性があるわけですね。であれば「売り切り御免」的な売り方が困難になります。

 もう一つハンデになるのは、商品の現物を保持しているのはZOZOTOWN側だってことです。このあたりはどうなっているのかわかりませんが、ZOZOTOWNに納品した商品を引き上げて他に流用するっていうのはわりと面倒なんだろうな、という想像はできます。百貨店からマークダウン前に商品を引き上げるっていえば嫌な顔をされたり、ぶっちゃけ「やめてくれ」って言われたりするのと同様ですね。まあこのあたりZOZOが同様なのかどうかはわかりません。

 要するに構造上、
①プロパー消化率を低めに設定する必要がある
②返品が多くなる可能性が高い
 という事を念頭に置かざるを得なくなります。

 ですので、ちょっとそれを前提に状況設定してみましょう。
原価はSCと同様20%とします。プロパー消化率は低めの中では比較的高い40%位にしてみましょうか。今回は返品がある事を前提にしていますから、ちょっと真面目にマークダウン消化率を20%、返品率は40%と仮定してみます。マークダウン率はSCの時と同様に40%オフにします。

 計算を簡単にしたいので投入金額をシーズンで100万とします。いわゆる値入率っていいますか、手数料の歩合は35%という噂なのでそれを使用します。
 さて、100万円上代の商品を投入すれば、プロパー売上40万+マークダウン売上は12万になります。これらの商品の元上代は60万ですから原価は15万ですね。売上が52万で原価が15万ですから粗利は37万です。
 ここから手数料と言うか歩合の35%が引かれます。売上52万の35%ですから18.2万円です。この段階での利益は18.8万になります。黒字ですね。

 さて、配送料とかそういうのはどうなっているのかいまいちわかりませんから0とします。なので返品分のダミー評価損だけを計算します。返品元上代は40万ですから原価で10万です。これが粗利から減になりますから実質的な利益は8.8万円になります。売上対利益率で約17%になります。

 さて、SCの場合込み込みで本部費用を20%にしましたが、これを調整する必要があります。リアル店舗はいろいろなところにありますから物流費は下がりますね。5%下げましょう。15%です。その代わりに本部が商品の店頭在庫管理(というかZOZOに出品する量とかの管理ですね)を行う必要がありますから2%増やしてみましょう。足し引きして17%です。これをさっきの売上対利益率から引き算したら、あれ、ゼロになっちゃいました。いや適当に設定したんですけどゼロですか。大真面目な話、ゼロにしようとしてゼロになったんじゃなくて、わりときちんと想定した比率だったんですけどね。まあきちんとっていっても私の脳内がソースですから適当じゃね?って言われたらそれまでなんですけど、でも物流費は本当は5%減では収まらない可能性も高いので、そういう意味ではちょっと甘めな設定なんですよ?

 まあ適当っちゃ適当なんですけど、一応頭の中に残っている数字イメージからの算出ですから、それほど外れてはいないとは思うんですよ。いかにブランクがあるとはいえ、こんな計算ばっかり数年間やってたわけですから。

 まあ、あれです。メーカー側が「利益がでない」って言っているパターンってこういう状態じゃないのかな?的な意味では証明になっているのかも知れません。当然1品あたりの販売数量が増えればプロパー消化率は上昇しますが、展開ブランドが増えれば増えるほど1品あたりの販売数量を増やすのが難しくなるのも事実ですからね。

 ここでECモールに対しての個人的な見解を入れてしまうのですが、ECって、論理的には売場的な制約は存在していないのですが、実際には人間の処理能力、この場合には顧客側の処理能力っていうのが実質的な売場のサイズになると思ってるんです。同じような商品が1000種類あっても最初の数種類しか見ませんよね?そういう感じの意味です。ですから商品点数が増えれば増えるほど1商品あたりの露出度は減少すると考えるべきだと思います。このあたりがリアル店舗と違うところで、リアル店舗は売場サイズの制約はありますが、案外売場内の商品の(少なくとも買おうとしているアイテムの)全てを目に通してるんです。ECだと全てに目を通しているかどうかは怪しくなります。なんだかんだ言いながらリアル店舗は一覧性に優れていて、EC店舗は絞り込みの面で優れているっていうメリットデメリットがあると考えてもいいでしょう。これって紙資料とデジタル資料の関係と同じような感じですね。

 まあ、ZOZOの取引条件を使って試算していますが、実際的にはZOZOに限らずこのあたりはECモールの問題or課題でもあります。個人的には楽天なんか一覧性という意味ではわりかし最悪な部類だと思ってますし。検索して出てくるのが多すぎなんです。まあ私が楽天で買い物するのってミシンの消耗品だったり(私の持っているミシンって職業用ミシンとロックミシンなのでたまにAmazonとかでは売っていない部材とかあるんですよ)、生地だったり(ニット・カットソー系はリアル店舗で売っている店を探すだけでも一苦労なんですよ、特に天竺素材、たまに皮革。まあ皮革は大抵はリアル店舗で買いますけど)だけなので、わりかし絞り込めるんですけどね、それでもぶっちゃけ探すのが面倒です。アパレル系でブランド横断で探すときの探しやすさで言えばZOZOがダントツだと思います。それでもやっぱり一つ一つは薄くなる感じはありますね。

 さて、こちら側に関してはわりかしフェルミ推定的な数字の出し方をしています。全くの無根拠ではありませんが、実際のところはわかりません。
 ただ、ECモールは一覧性で劣る、消化率で劣る可能性が高い、マークダウンでの販売は案外難しいだろうっていう仮説からの帰結です。一応仮説を置いた上で数字をフェルミ推定的に出していますから、仮説が正しければ、まあそれなりな感じで、仮説が間違えていれば大外れって感じですかね?

 まあここまで書いた上で、次に私が現時点でイメージしているアパレルの構造改革ってどういう方向に進むべきかってのを書いてみようと思います。
 要するに上中下みたいな感じですね。三部作です。笑。


 余談なんですけど、ZOZOの特徴としてのサイズの独自基準に合わせた、通販的には比較的丁寧なサイズ計測には感心はしているのですが、ファッションアパレルの販売である事を考慮すれば、もう少し詳細があってもいいんじゃないかと思ったりもするんですよね。
 っていうのは、デザインの方向性として、タイトに着こなす服とルーズに着こなす服ってのがありまして。ルーズの方はわりと適当でも良いんですけど、タイトに着こなす服っていうのは「どこがタイト(だからカッコいいの)か」っていうのがつきまとってくるんですよ。例えばウエストにタックを入れてタイトに見せるとか(その場合重要なのはウエストサイズになります)、肩幅をタイトにすることでジャストフィット感を見せていくとか(この場合は当然肩幅サイズがメインですね)、そういうパターニング上での特徴ってのが表現しきれなくなってしまうので、なんて言えばいいのか、ガチスタイリッシュみたいな商品がどこでサイズ合わせすればスタイリッシュに着こなせるのかっていう情報が不足しちゃってる気がするんですよね。まあぶっちゃけそこまで考えてやっているECサイトや通販なんて聞いたことがないんですけど、ファッションを売るのであればそういったところまで気をつかうべきだと思っているわけです。
 まあ、これって大半はメーカー側っていうかデザイナーやパタンナーのエゴの部分なのかも知れませんけど、でも本当にファッショナブルな着こなしを考えた場合、そういうところってものすごく重要で、例えばテーラーなんかが「細く見せたい」とか「貫禄があるようにしたい」なんていう要望に応えて仮縫い段階で調整をかけるのはそのためだったりしますから。

 ってのをちょっと書いてみました。だから何なのっていわれると困るんですけどね。とことん拘る人ってそういうのにも拘るんですよ。

 

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