ムーンフェイス その2

膠原病の病棟に入院したときには、もうすでにステロイドを服用している患者さんたちがいた。どの人も「顔が・・・。以前はこんなんじゃなかったのに・・・。」「顔がむくんだ。友人からとても驚かれた。辛い。」と嘆いていた。
「この顔おかしいでしょ?」と何度も聞かれた。私も付き添いに来ていた母も(コロナ以前)「そんなことないですよ。」と繰り返し答えた。これは本心で、相手を傷つけないように嘘をついたわけではなく、本当にどこがおかしくなっているのか全く分からなかった。服用する以前の顔を知らない私たちは、彼女たちの顔に違和感を持たなかったし、なぜ何度も確認してくるのかも不思議でならなかった。

しかし・・・、いざ私もステロイドを服用して顔がむくんでくると、彼女たちと全く同じことを言うようになっていた。寝ても覚めてもムーンフェイスのことばかりで鏡を見ては涙を流し、親にも愚痴を何度もこぼした。
体調が安定し、薬が減らされ、ムーンフェイスが落ち着いてくると親や叔母は「もう大丈夫。顔変じゃないよ。というよりそれ以上顔の肉が落ちたら変になるよ。今が丁度いいよ。」と言ってくれた。それでも納得がいかず、ずっと鬱々とした日々を過ごし、外出時は絶対にマスクを手放さなかった。

結局のところ、他人は私の顔を熱心に観察していないし、興味もないことを知った。過去に自分に言ってあげたい。「顔の造形に囚われずもっと楽しく過ごせたはず。」余計なストレスを抱え込んでしまったなぁ。
あともう一つ、皮膚が張るので見た目が若返ることも言ってあげたい。

色々あったが、今ではムーンフェイスが出ていた時の写真を残しておけばよかったなと思うくらい、心に余裕が生まれている。

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