見出し画像

"スゴイものを作る"という呪い

 フリーゲームを作っています。
私がゲーム作りを始めたのは小学校高学年からで、
完成したゲームを初めて公開したのは高校生の時でした。
そこから現在まで、ダラダラとゲームを作っています。

しかし一度、10年ほどゲーム制作をやめていた時期がありました。

なぜやめたのか。
それはある一言がきっかけでした。

それは「ゲームがつまらない」でも、
「作中のギャグがスベってる」でも、
「頑張って描いてるみたいだけど絵が下手」でもありません。
まあ全部言われたけど。別にそれはいいんです。


「結構実力ついてきたのに、
 このままこの路線でやっていくの?」


でした。
ゲームを公開し始めたとき、私は「ギャグゲー作者」と呼ばれるのが夢でした。
ギャルゲーではないです。ギャグゲー。簡単に言えば漫才のようなやりとりがメインのギャグ漫画のようなゲームのことです。
毎日ノートにおもいついてはギャグを書き込み、ネタ帳を真っ黒にしていました。
それに「なにそれーーー!!!???(爆発音)」とか「そうじゃないだろーーー!!!(銃声)」というツッコミを入れればもう完成。

でもいくら作っても、誰からもそう呼ばれませんでした。
なぜかって、まあ……前の数行見たあなたはもうおわかりだと思います。
自分にギャグの才能がないことはこの頃、うすうす感じていたわけです。
加えて、何作も作っていくうちに最初は選択肢くらいだったゲーム性も
戦闘を自作したりなど、徐々にオリジナルのシステムも作るようになっていっていました。

そこにこの一言。 私は開眼してしまいます。

「そうだ…… 私はもう、
 "スゴイゲーム"が作れるんだ……!!」

こう思った瞬間から、足元がぬかるんできます。
……スゴイゲームに必要なものはなにか?

それは、上手な絵。斬新なシステム。
感動できる複雑で面白いシナリオ。
壮大な世界観、やり込み要素、長いプレイ時間……

必ずしもそうではないと否定する人もいるでしょう。

でも、そういうものが"良い"と思ったことが一度もないなんてことがあるか!!

さあ、そう思い始めるともう泥沼です。
自分の今まで身に着けたものはすべて無駄になります。
つまらないギャグも、下手な絵も私の足を引っ張ります。
だってすごくないんだもん。

何度立ち絵を描いても、描き直し。
だってすごい絵じゃないから。
シナリオも何を書いてもしっくりこない。
だってすごい話じゃないから。
戦闘やシステムも斬新な要素を求め、複雑化していきます。
自分が作り切れないほどに。

SNSで見かける制作中のすごい人のゲーム、
人気のすごい絵と感動するシナリオの名作フリゲ、
そのどれもが、現実の自分とはかけ離れています。
それらを見かけるたびに心は傷つき追い込まれてゆく。


もっと、もっと、これより、すごいやつを……


作らなきゃ……


次第に、楽しくて始めたはずのゲーム制作は自分を苦悩させるだけの存在になっていきます。

そんなことが続いた某日。私はある決心をします。


―やめよう。ゲームを作るのは。


10作以上も作ったけど大してファンもつかなかったし、才能ないんだよ。
だんだん自分でもわかってきてたはずでしょ? 自分の実力ってこんなもんって。
私のゲームはすごくないんだ。他の人に勝ってるところがどこにある?
こんなに悩む日々が続くなら、もういっそ「何も作らない」側の人間になるべきだよ。
元々、あってないようなつまらないゲームしか作ってないんだから。
やめればいいじゃん。 そうだよ、もうやめよ。

そう思った時、すごく肩の重荷が軽くなりました。
ツイッターを消し、ブログを消し、公開していたゲームも徐々に消していきました。


フリゲ作者、アレンはここで終わり。

もうゲームを作ることはないでしょう……。


―それからのアレンではない約10年。

何をしていたかというと……


ゲーム作ってた。


いや作っとるやないかい!!!!!!!!


はじめはあーもうゲームとか作らんわーと思っていました。
消費型の趣味に熱中し、その趣味のブログを作ったりなどしてゆるやかに活動していました。

でも、面白い漫画を読んだとき。アニメを見たとき。映画を見たとき。本を読んだとき。
浮かんでくるのは、いつも「こういうゲームが作りたい」でした。

もう自分の中では、食事・睡眠・ゲーム制作 くらいのレベルで本能に刻まれていたわけです。

でもゲーム制作の大変さは身に染みています。あんなこと、もうやるもんか……
そこで少し今までと違ったこともしていました。
なろうみたいなサイトでSSを書いたりとか、
pixivに二次創作を投稿したりしていた時期もありました(自分にしては珍しい……)

しかしどんなことをしても渇きは癒えません。
私のやりたいことは、絵とも、漫画とも、小説とも違う。
ゲ制の渇きはゲ制をしなければ癒されないわけです。
気づけば、PCのメモ帳に、携帯の片隅に、お絵かき用の落書き帳に作りたいゲームのメモがたまっていました。

ちょっとだけ、ちょっとだけ……公開とかしないつもりだし、ゲーム作りたい欲を抑えるためにだけ……
という気持ちでまたゲーム制作ツールを起動しはじめました。
いまはゲ作者として活動していないんだからゆっくり気負わずにできるし、
大作ものびのびと作れるかも……という下心もまだ消えていませんでした。

結論から言うと、この時期に作っていたゲームはどれも完成まで至ることはありませんでした。
自分は大作を作ろうと思って作るのは向いていないんだと身に染みてわかりました。
それに加えて、もうひとつわかったこともありました。

私はやっぱりゲームを作るのが好き。

絵があって、文章があって、音楽や効果音がある。
プレイヤーがキャラクターを操作してゲームを進める。
自分の世界を作れるのはゲームしかない。

そして何年かぶりにまたアレンとして、ゲーム作者として復活したわけです。
私はすごいゲームは作れないし、何年たっても絵も上達しないし、
昔よりもDL数もかなり落ちたけど(これは時代的なものもあると思う)、
もうゲームを作るのをやめたりしない。

だって、私にとってゲームを作ることが一番楽しいことだから。

https://www.freem.ne.jp/brand/8431

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?