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秘密再読-直子へのフラストレーションを発散する-


※このnoteは対象作品を既読のユーザーのみを対象にしています。ネタバレなどが嫌な方はブラウザバックを推奨します。そんなの関係ねぇ!という方も読めるように努力はします…



みなさん初めまして。
一月末に東野圭吾のメジャー作品を大体読み終えたので着手し始めた頃に読んだ作品をもう一度読むことにしました。

現在5作品ほどを再読したのですが印象が強い、というよりは頭にこびりついて離れないのは男女で意見が分かれがちな「秘密」です。
直子に嫌悪感を持ち終わるのか、ハッピーエンドとして捉えるのか将又、別の感想を持つのかは読者一人一人によって違うのが面白い作品です。

人物&ストーリー紹介(既読のユーザーはスキップ推奨)

────────
・平介
嫉妬深いが仕事はできて家族思いの夫
・直子
平介の妻
バスの事故により娘の身体に魂が入る
しかし直子自身の体は死んでしまいモナの意識、魂は行方知らず。
・モナ
平介と直子の娘
バスの事故により母の魂が身体に入る
直子の魂が身体に入りその後は意識不明。
物語終盤で意識が回復し母と体をシェアという形で生活を送っている………はずだったが…
・俺
無職
───────────────
バスの事故によって娘のモナの身体に妻の直子の意識のみが混入し様々な苦悩を抱えることになる主人公の平介。娘はどこにいったのか、この歪な秘密はどう結末を迎えるのか、というのが「秘密」の大まかな設定とあらすじです。

さてここで僕の感想を綴っておきます。
一言で言うと

「気わりー」です。

色々突っかかる部分はあるんですがやはりラストにかけてのネタバラシはすごく不快です。平介にはあんな幸せじゃなくもっとちゃんとした幸せを手にしてほしかった。

以降は僕が「気ーわりー」と特に感じた部分をご紹介します。ちなみに10割方直子の行動なのでそんなのに興味ないよ、って方はここで記事を閉じるのをお勧めします。

1.恋愛を楽しもうとしている

まずはここにイライラ。

身体は違えど平介という亭主がいながら先輩とデートする約束をする(半ば強制的ではあるが…)それについて平介が問い詰めると気分悪くなったり…

直子は"自分は平介の妻である"と自認を抱きながらこれをやっているのですからタチが悪いです。しかも平介が少し小学校の教師に惹かれた時には嫉妬の感情を見せたのに自分はそういった行動しちゃうのが本当に許せない。不愉快です。

子供じみた感想ですが自分がやられて嫌なことは人にすんな、と。

2.平介の嫉妬への解決策

1に続く形です。
平介はそういった直子の行動に嫉妬が募りに募った結果暴走し盗聴、ストーカー行為と色々やらかします。
これらの行動は平介の「自分が信じたことは疑わず、すぐ行動に移す」という性格が悪い方向に出てしまったものです。故に平介側にも批はあるんですが問題は直子の対応です。

平介はただ娘の体をしていても"妻"という存在として自分の元を離れないで欲しかった、(僕の解釈)だけなのに直子は娘の体を使い性交を持ちかけてきます、お前…💢
そういうことじゃない、ただ妻として在てほしかっただけなんです平介は。

3.モナとして生きる直子

はぁ〜(クソデカため息)

これも嫌でした。
自分の行動によって様々な不幸を招いた直子は自分と平介が幸せになるためにはこの歪な関係を終わらせる、要は自分が消える必要があると感じ、直子は娘に後を託し自分は消える。最後の言葉は「私を忘れないでね」。感動!…………

一見物語の山場でとても感動するシーンなのですがここ、最後のネタバラシのシーンで絶望することになります。

結果からいうと消えたのは直子ではなくモナです。なんならモナの人格はバスの事故時点でおそらく消えており、作中後半数回ほどモナの人格が現れるのですが、出てくるモナは直子の演技ということでした。
しかも結局平介にバレて彼は一生それを心のモヤとして生きていくことになります。

なんだよそれ───────────────
ズル、セコイ。

自分の存在を消すことが両者の幸せになるというのはいいんですが「私を忘れないで」って釘打ったのマジでよくない、この期に及んで何故平介を縛り付けるようなことを言ったのか。

ほんとに憎いやつですこいつは。
しかしこういう女性の心理行動描写が面白さに繋がっているのですから本当に悔しいですが絶対に外せないシーンです。

悔しい、

悔しい…


あまりにイライラが募りすぎて
言葉足らずのままサッサと仕上げ
批判するような形にはなってしまいましたが
この作品は

「名作」です。

間違いなく。

娘と妻を両立させないといけない直子の葛藤に対してなるべく妻であってほしい平介

両者が抱える苦悩をどう解決していくか、それによって残る"しこり"こそがこの作品の魅力なのです。

 タイトルの「秘密」とは"妻が娘になる、という歪な関係性を隠す"といった意味、"自分と平介が幸せになる為の直子だけの秘密"といったダブルミーニングになっています。東野圭吾作品にはこういったものが多いですね。

 今回感想を綴った「秘密」以外にも東野圭吾作品には沢山面白い作品があります。時生やクスノキの番人とかも面白いですよ。図書館や本屋などでぜひ読んでみてください。

次回はさまよう刃になるかなー

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