世界最大級の米国化学メーカー、デュポンとダウの統合分社化後の各社概要
本記事では米国トップ化学メーカーの二社であったダウ社とデュポン社の世紀の合併、およびその後の分社後に誕生した各3社についてまとめました。
ダウ&デュポンの合併・分社化 概要
2015年、アメリカの大手化学メーカーであるダウ社とデュポン社の合併が発表され、世界中に衝撃が走りました。発表からおよそ1年半後の2017年9月、世界最大の化学メーカーとしてダウ・デュポン社が誕生しました。売上規模は約860億ドル(日本円でおよそ9兆5000億円)と桁外れな規模であり、日本最大の化学メーカーの三菱ケミカル(約3兆5000億円)と比較してもその凄さがうかがえます。
ただしこのまま超大規模企業として歩み続けることはせず、ダウ・デュポン社が誕生した後に各事業セグメントごとに順次分離・分社化され、最終的に3社へ分社化されました(2019年)。この理由は色々と言われていますが、「シナジー効果の見えない多様な事業を抱えると企業価値が下がるため、事業毎に整理・分社化を行ってトータルの企業価値向上を目指した」というのが有力なようです。近年、アメリカでは同理由での分社化が増えています。
ここからは分社した各企業の概要についてまとめました。
1.ダウ社(素材科学会社)
2019年4月、ダウ・デュポン社から素材化学部門を切り離して最初に分社化されたのが新・ダウ社です。売上規模は385億ドル(日本円で約4兆2000億円)であり、主な事業は「パッケージ&特殊プラスチック」や「産業用素材&インフラ」、「機能材料&コーティング」があります。
具体的な製品としては、ポリウレタンやエラストマー、シリコーン製品など多岐に渡るラインナップを揃えています。
2.コルテバ社(農業関連会社)
ダウ社分離後の6月、ダウ・デュポン社から農業関係の部門が切り離されてコルテバ社が誕生しました。この新会社の売上規模は142億ドル(日本円で約1兆6000億円)であり、世界で三番目に大きいアグリビジネス会社となりました。売上の内訳は農薬などの作物防疫関係が65億ドル、種子関連が77億ドルで、それぞれ豊富なラインナップを揃えています。
3.デュポン社(特殊化学品会社)
上記2社の分離後、残ったダウ・デュポン社が特殊化学品会社として新たにデュポン社となりました。売上規模は143億ドル(日本円で約1兆6000億円)であり、主な事業分野は「エレクトロニクス&産業分野」「水&防護分野」「モビリティ&材料」といったものが挙げられます。
デュポンのコア技術は「頑丈な素材」であり、軽量かつ高耐久なケブラーや耐熱性難燃性に優れたノーメックスなどの商品が有名です。これらの素材や技術を駆使して、防護関係を中心にアプリケーションを広げていると言えます。
まとめ
以上がダウ社とデュポン社の世紀の合併、および新たに誕生した3会社の概要です。新興国の価格攻勢を受けて化学業界では合併再編が進んでいる中で、この2社の再編は象徴的であったといえます。今後さらにこの業界の競争が激化した時に、今回のダウ社デュポン社の再編が正しかったのかの答えが出るかもしれません。