別のナニカ

変わらずにはいられないものがある。そう簡単には変わらないものがある。闇と光の巡る中、破壊と創造は繰り返される。次なる形を成す、そのもとで、未知なる産声が聞こえよう。それは人に関するものか……あるいは別のナニカ……

本州で唯一、千葉県には野生の熊が生息していないそうである。13000年さかのぼっても、その痕跡はないとされている。おそらく、13001年前まで千葉に生息していた熊たちのあいだで大流行した、バトル・ロワイアルの最後の二頭の一騎討ちが、互角の闘いが続いた後、相討ちでの結末をむかえてしまったため、それ以来、真の目撃情報が途絶えてしまったことは想像に難くない。それ以降のあらゆる目撃情報は調べてみると、やはり別のナニカであったらしい。

東京や神奈川、埼玉の自然界に生息する熊たちが千葉へ移動するには、東京の区内の市街地を通過する以外の方法は困難らしい。なるほど、ハンズ、ヨドバシ、ドンキーで欲しいモノはぜんぶ買い揃うし、上野でパンダでも観賞した日には、もう千葉まで行ってみたい気持ちが消え失せるのも理解できなくもない。日本のアニメが好きすぎて、ディズニー等々はいまいちピンとこないなんて個体もいるかもね。「あの黄色い生き物はなんだぁ?」っちゅって。東京駅での京葉線への乗り換えで、心をへし折られた者たちも、そこで引き返さざるをえなかったのだろう。そして同胞たちに伝承するのだ。アレは東京駅とは名ばかりの別のナニカであったと。

最近ではシャケもハチミツもぜんぶアマゾンの置き配だから都内どころか町田や横浜、大宮すらも出掛けなくなりがち、ピラニアってうまいんか~?なんて、寝そべったままネットで調べて、ふ~んっちゅって、寝て起きて忘れてハイおしまい、である。冬眠あけの空腹での暴飲暴食には気をつけよう。薬に頼らざるをえない時は、ユウタン一択である。アレはマジで効く。アレはマジで効く。別のナニカは推奨しない。アレはマジで効く。

真面目な話はさておき、今日まで、熊による被害は絶えることがない。ある者は人の安全を優先し駆逐をと声をあげる。またある者は頭数が減少することの弊害や、動物への愛護を理由に、人との住み分けを徹底し、保護をしようと声をあげる。最善策を模索しようとする議論の場に、少なくとも私は、わずかな悪意もみてとれなかった。差し迫った声をあげて、秩序を獲得した分野は歴史に数多に存在する。退化ではなく進化と呼ぶべき変化を遂げるため、轟くようにと声をあげる。まだ行き届かない課題の克服は、全人類の宿命であり希望であると言いきろう。耳をすませば、未知なる産声が聞こえよう……我々は知っている。犠牲のうえの感傷の、その先にある反響を、新たなる基の環境と


別のナニカの誕生も……


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