夜の素顔

週末、午前中の休憩時間、シューティングゲームのコーチング動画を見ている私の向かいの席で、二人の上司がニヤニヤしながらお互いのお気に入りの女の子の写真をスマホで見せ合っている。幸せそうで何よりである。

私には対人関係が問題で職場を転々とした過去がある。社会適正に難があることは大いに自覚している。今の会社には辞めようと思うほどの敵意や嫌悪感を抱かせる人間は一人もいない。朝っぱらから、なんちゅう会話しとるんやと思うほどの人間なら目の前に二人いる。

正しくない人間を社会から排除してゆけば正しい世界が構築されるのか?私はそうなるとは思わない。正しい人間など存在しないからである。そして誰もいなくなっちゃうのである。

拙いがゆえに発生し得る問題を、円滑に回避するための規則を設け、不完全な者たちだけの集団の中においても、最低限の秩序を維持しようとするのが社会であると私は認識する。

ある規制により、類似した別のある犯罪が増加したという事例も存在する。必要悪という言葉が生まれた必然には人間の本質が深く関わっていると認めざるを得ないだろう。たとえそれが誰かにとっての許容であれ、妥協であれ、あきらめであったとしても。

終業を告げる鐘の音とともに、私は社会人としての仮面を脱ぎ捨てる。自分とかけ離れた人格を演じ続けるのは容易ではない。闇に潜みし怪物は、朱眼に光を宿すとともに牙をむき出し爪を立てる。

内なる領域にて轟く咆哮は、去勢に抗う魂の解放。今宵も甘い密を頬張らんとネオンの森に誘われ、淫らな欲望をその胸に、夜の街へと消えてゆく

上司をシリ目にゲームする
狩る者 集いし狩猟の宴である












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