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ラブホ奇譚〜田舎ラブホの日々〜


初日の大事件がら数日、数週間は別段トラブルは無く、サブフロントと清掃をこなしながらつづがなく働いていた。

珍客も勿論いたが初日の事件が大き過ぎて大概が可愛いレベルに感じれたので逆にありがたかったかもしれない。

フードを持っていくと致しているなんかはしょっちゅうだった。

しかし、そんな事を言ってもやはり記憶に残るやばかった出来事はいくつかあるのでお話ししていきたい。

まず毎週決まった曜日に来るデリヘルジジイ
うすぼんやりとした記憶だが確か火曜日辺りに一番高い部屋に入る年配の男性客がいた。
監視カメラでしか姿を確認した事なかったがまぁ60代以降だろうなと言う普通そうな見た目だったと思う、いわゆるおじさんだった。
デリヘル呼んでるんだろうなぁとは思っていたが何故だかこのジジイは退室時に風呂の蛇口を開けっぱなしにする、理由は一切わからないが毎回、毎回律儀に絶対に湯を全開に出していくのだ。
田舎の古いラブホテルは自動ジャグジー等あるはずもないのでそのジジイが来た際は急いで清掃に行かないと脱衣場まで浸水するので本当に迷惑だったが出禁などには何故だかならなかった。

そしてオーナーの愛人の看護学生(♂)
これは私が清掃のペアを組まされていたの看護学生で当時20代後半くらいの男だった。
びっくりするくらい仕事をせず、事務所で爪を眺めたり、お菓子を食うこの男を何度となく張り倒そうと思ったが周りは何も言わない。
割合厳しめなおば様方もいたのだが彼だけどうしてだか優遇されていた。
ある日、清掃中にあまりにも非協力的すぎてブチギレそうになり、フロント番のお局様に「なんであの人、ここにいるんですか?」と聞くと当たり前の様に

「オーナーにケツの穴貸してるんだよ」

と言われてしまい、呆気に取られた。
流石に本人に真偽は問えなかったが彼から地元のハッテン場の話などをしていたのは耳にしたのでまぁ、そう言う事だったんだと思う。
その後も特別待遇の彼と私は歳が近いと言うだけでシフトが被った際はペアだったが仲良くはならなかった。

そして最後の最後に起こった親、襲来。
田舎だったものでまぁフロントにいると見覚えのある車やら、人やらを監視カメラから見る事になる。
別に話しかける訳でもなんでもないのでこちらとしても気は楽なのだが、ある日、フロントのモニターを眺めているとあまりにも見覚えのある派手目な色の軽自動車が入庫してきた。
ん...?と思いモニターを凝視していると、まさかの実母と当時付き合っていた恋人である。

半笑いになりながら頼むからフードなどは頼んでくれるなよ、と願いながら働いていたが無事に親子感動の再会は回避できた。
翌日、母親のドレッサーから自分が働くラブホのライターが出てきた時には腹を抱えて笑った記憶がある。

その後、当時地方公務員をしていた祖母の耳に私がラブホテルに出入りしていると言う話が耳に入り、この世の終わりくらい怒られた。
(田舎の情報網は早いし、怖い)

そのまま渋々ではあるが私はラブホテル勤務を辞める運びになり、無事美容学校も卒業し、にも関わらず美容師にはならず「こんな閉塞的な場所で死んでたまるか」と地元を飛び出すに至ったのだった。


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