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ひいおばあちゃんとレンジの中のオムライス。
幼少期、母子家庭で母は働きに出ており、私と妹はひいおばあちゃんに面倒を見てもらっていた。
朝から晩まで私達を育てる為にがむしゃらに働く母の姿を見て我が儘を言っては行けないと幼心に強く感じていた事を覚えている。
元来人見知りで、周りにうまく馴染めなかった私は友人も少なく、とても陰鬱していたと言うか決して明るい子どもでは無かった。
小学生時代、周りから軽いイジメのような事を受けても恥ずかしさと情けなさで母に言い出す事も出来ず1人部屋で泣いていると、キッチンの方から小刻みのいい音で何かをみじん切りにし、フライパンでじゅうじゅうと炒める音が聞こえてくる、そしてケチャップの少し焦げた甘い匂いがしてきたな、と思うと部屋のドアが「コンコン」とノックされ「電子レンジ、いいのはいったあるさけに食べなよ」と声をかけられる。
袖で涙を拭いながらとぼとぼキッチンに行くともうひいおばあちゃんはおらず、レンジをあけるとオムライスが入っていた。
普段は煮物や魚ばかり出すひいおばあちゃんが唯一作ってくれたこのオムライスはごろごろとした鶏肉と荒めに刻まれた玉ねぎにケチャップの甘味と隠し味の醤油のおかげで少し和風で、薄く焼かれた卵の中にはち切れんばかりにパンパンにチキンライスが入っていた。
食べると不思議と心があったかくなって元気が出る、外で食べるオムライスとは全然違うけれど私はひいおばあちゃんのオムライスの味が大好きだった。
母に怒られた日、妹と喧嘩した日、学校で上手くいかなかった日、はじめて反抗して家を飛び出して帰ってきた日、私がメソメソとしているとひいおばあちゃんは必ずこのオムライスを作ってくれて
「電子レンジ、いいのはいったあるさけに食べなよ」と声をかけてくれるのだ。
励ます事も、頭を撫でる事もしてはくれないけどそっと心に寄り添ってくれたひいおばあちゃんの優しさ、あのオムライスの大きさはきっとひいおばあちゃんの「いっぱい食べて、とにかく元気になりなさい」と言う気持ちの表れだったんだろうと今になれば思う、私は多分、これからもずっとずっとあの味が忘れられないだろう。
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