奥野宣之『読書は一冊ノートにまとめなさい』ダイヤモンド社 200303

アウトプットをするにあたって、効率的な読書ノートの取り方を知りたいと思い、この本を手に取った。少し自分の求めていたものとは違ったが、得たものは大きいと思う。

本書はタイトルの通り、読書を一冊のノートにまとめることを信条としている。
構成としては、読書前→読書中→読書後について具体的に教えてくれる。

・読書前
筆者はまず、読む本を選定することの重要性から説いている。
そのため、気になっている作家の新作、本で取り上げられたもの、新聞や雑誌の書評、あるいは電車の中吊り広告や、人との会話で出てきたタイトルなどすべてをノートに取る。
ここでポイントなのは、これらすべてを一つのノートに取ることだ。
一見雑多で整理されていないように感じるが、そうすることで「ここにすべての情報がある」という安心感を得ることができる。
そして、読みたい本をリスト化していく。これはワードでまとめて印刷してもいいし、最終ページをあてがってもいい。
そのリストをもってはじめて本屋に行くのだ。実際に目次や内容、文体を見定め自分が求めている文献かを精査する。これでロスを減らすことで、より良い読書を確立していくのだという。
本屋を一日かけてぐるぐる探し回るのも楽しいが、やはり時間の無駄は避けられない。たまにならいいが、基本的には筆者の考えに賛成だ。
私自身Amazonをよく利用する。気になったものはだいたいほしいものリストに入れておいて、よく見返す。そして本屋に行ったときに実物を見て、購入する。あるいはその場でAmazonで購入するという、不届きなこともする。
筆者もほしいものリストを情報の保管庫として利用しているとのことだが、量が多くなりすぎて手に負えなくなる、とのとこ。普段からアンテナの範囲がすごいのだろう。

・読書中
そうして選び抜いた本を読み始めるわけだが、その前に大切なことがある、と筆者は言う。それは、「何のために読むのか」を明確にしておくこと。
自分がこの本から何を学ぶのか、得たいのかをはっきりさせることは、読む速さや深さに影響する。良書はじっくり読みたいし、悪書はさらっと流したい、そんなところだ。あるいは、自分が学びたいと思っていることだけにフォーカスをあてて、ナナメ読みしてもいい。
このあたりは読書の自由さを改めて実感させられた。興味のないところはさらっと流してもいい。自分が確かに得たいと思っていることを得られるのならば。
そういった読み方の姿勢に入るコツとして、「読破する」を目的とした読書から、「読書ノートをつける」読書を意識することを解いている。
アウトプットするための読書ということだ。

筆者は読書中に並行してノートを取ることを推奨しない。せいぜいページの端を折るとか、マーカーを引くくらいに留める。読書中は読書に集中するべきだからだ。
私としてはあとでまとめるという作業は億劫に感じてしまい、ノートを取らなくなってしまった経験があるので、できるならばノートは並行して取りたい。
しかし筆者が言うように読書への集中力が途切れてしまう経験は多々あるので耳が痛い。さらに追い打ちをかけるように、ノートがない環境では読書できない、という制約を自ら設けてしまうことになるとも書いている。まったくもってその通りなので、見習うべきなのだろう。
それにあとでまとめるという行為は、部分的には再読することにもつながる。読んだときは素晴らしいと感じた文章もあとで読み返すとそれほど感動的ではなかったり、ノートに写した長文の引用が、そのあとの文章ではよりすっきりした形でまとめらていたりすることはままあることだ。

・読書後
さていよいよ読書ノートを取る段に入る。
マーカーやしるしをつけたところを再読し、ノートにまとめていく。引用するときは、要約はしない。要約は頭を使うので意外に時間がかかる。それに作者の述べたいことを十全に要約するというのはなかなか難しい。
「自分の考えが覆された、認識が揺さぶられた文章を、書き写したり読み返したりしながら、何度も納得したり、反発を感じたりする方がいい」p125
筆者のこの言葉は印象的だ。引用とは差別化して、自分の反発やなんとなくの感想などもどんどん書いていく。引用した文章に対して稚拙になってもいい。筆者の言葉で言うならば、「評論家のマネをしても仕方ない」ということ。無理に気取ったりせず、ありのままの自分の意見を書くことが大切だ。やはりここでも重要なのは「何のために読むのか」であり、自分にとって大切なことにフォーカスした読みの実践なのだ。

試行錯誤しながら、自分なりにノートをまとめる。できあがった後も大切だ。本を読み返すは骨が折れる作業だが、ノートはすぐに読み返せる。加えて言うなら、あとで読み返すことを前提にして作ることも重要だということだ。

本書を通して、主に読む姿勢について学んだ。ノートは分けない、普段のメモもスケジュールも読書ノートも一冊にまとめる。正直もとめていたのは、もっと狭義に読書ノートだけを取る手法だ。しかし、求めていた以上に収穫はあったかと思う。
「何のために読むのか。「ノートは分けず一冊にまとめる」ということ。
加えて、次の読書案内として、
日垣隆『使えるレファ本150選』(ちくま新書)
松田美佐『うわさとは何か ネットで変容する「最も古いメディア」』(中公新書)
が気になった。