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チウネン後日談〜メイド喫茶編〜
オレはチウネン・ポンチョ!ハーバード卒の交通整理員だ!この道10年ちょいのベテランだ!Googleの面接は2秒で落ちた!
よろしくなガキども!
さて今日の昼メシはここ!メイド喫茶!そういうものらしい!メイドも喫茶も知らないぜ!
来た理由はクーポンの為だ。
どれぐらい前かは忘れたけど海辺に旅行行って散々な目に遭った時の帰り際に、この店の店員を名乗るヤバそうな電波女からクーポンを貰ったのを昨日まで忘れてたんだ。期限が今日までなので危なかったぜ。
(ちなみに電波○○ってもう死語らしいな。知らなかったぜ。あの女は死語を体現するほど教養に富んだ女ってことだったのか。)
どうやらオムライスが目玉らしい。ウマいことこの上ないらしい。善はファスト!入店だ!
「「「おかえりなさいませ、ご主人様♡」」」
この店は割とマジにアルティメットファックレベルでヤバかったぜ。記憶があやふやなので席に着くあたりまで省略だぜ。全く見たことをないものを見た時、人は全身が震えるってことを知ったんだ。
「ご注文は何になさいますかー♡」
「オムライス(※1)1つ!」
(※1)正しくはオムライスではなくもっと長い名前で「〜〜で〜〜なドキドキ☆オムニャイス☆」みたいな感じを言わされたぜ。無言の圧力で言わされたぜ。店内の雰囲気は大事だからな。うん。
怖いな、異文化。ママのドリアが恋しいぜ。
「お待たせしましたご主人様〜〜♡
ん?……あーっ!♡」
望まぬ再会だぜ。電波女、オレにクーポンを渡した張本人、名前は確か……キチヤ・ルルだったぜ。
「来てくれたんですね〜♡」
この女、実に危険だ。なんたって歪んだ防火扉を殴って開けるんだぞ?しかも働いているのがこんな店だったなんて!足癖も悪い!小指を踏まれたらお終いだ!
「お久しぶりです〜♡元気そうでよかったです〜♡」
「ヘンッ!フィッシュアンドチップスを相手にしたオレがヤられるわけないぜ!」
そうだ!オレはバケモノを殴り飛ばせるほどの『真の男』だったぜ!雰囲気に呑まれてたぜ!
「はわ〜☆それもそうですね♪ま、積もる話もありますが、オムライス(正式名称は精神が削られる為、一般的な名前に置き換えてるぜ!)が冷めちゃいけないので魔法をかけていただきますね!」
「魔法?アンタはハリー・ポッターか何かなのか——」
ヂュッヂュヂュヂュッッ
なるほど、魔法だぜ!
恐ろしく速いケチャップ捌き!ファッキンビューティフルなHIRAGANA!コンピュータ並みだ!なんて書いてあるかはわからないぜ!オレは日本語を読めないぜ!
……手首って残像でるほど速く動くっけ?
「はぁい♡あとは、ご主人様への気持ちを込めるよ♡」
とんだビジネスウーマンだぜ!『メイド』の顔に一瞬にして戻った!メイドの顔なんて知らないがな!しかしこの上一体何を?
「萌え♡ 萌え♡ キュンッ♡」
ニンジャのような手印を組んだかと思えば、まさかオムライスに気功をぶつけるとは……。コイツもオレと一緒に魚人間どもを殴ってたのを忘れてたぜ。
「はぁい、召し上がれ♡」
こころなしかオムライスが気功で凹んでいるのはきっと気のせいだ。
オレはオムライスを食べたぜ!
たしかに、オムライスは一級品だった。このオレが天におられます父なる神に感謝を捧げるぐらいには。
具体的には——クッキングパパのオムライス回でも見てくれ。ふわとろとかトロトロとかモチモチとかそんな感じだった。おいしかった。
その後は普通にごちそうさま言って(ファッキン偉い。)さようならしたぜ。
あと、アイツが扉を殴り破った時に煽ったことを謝るのを忘れてたぜ!次会った時には必ず謝るぜ!
どんな暴力的な電波女であったとしても、アイツはオレを助けてくれたんだからな!
○○○○年○○月○○日 (月曜日? もしかしたら水かもだぜ!)
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紀池屋瑠流はチウネンの日記を閉じる。そしてそれを真新しい墓の前に戻す。
チウネンは死んだ。とあるリゾートホテルの火災に巻き込まれて死んだ。全く関係ない一家を助けて逃げ遅れたらしい。チウネンを含む複数名の遺体が未だ見つからないほどの大火災だった。
彼女は彼とそれほど親しくなかったから、チウネンが死んだと聞いた時も悲しい事は悲しかったけどそこまで悲しいわけじゃなかっただろう。
ただ、あのチウネンが家族でも友達でもない他人を助けて死んだというのを聞いて彼女は少し驚いていた。
しかしそれも今彼の日記をちらりと見て納得がいった。まぁ、彼、チウネン・ポンチョはそういう人間だったということだった。彼女が知らなかっただけで。
事実としては、チウネンにはもう紀池屋瑠流の働く店には来ないし、謝る機会はないという事であった。
その事実は当たり前と言えば当たり前なので、彼女はすんなりと受け止めた。重ねて言うようだが、感傷を抱くほどの間柄ではなかったからだ。
墓に来たのもたまたま休暇の旅行で来たのがチウネンの地元だったからというだけだ。日記を読んだのもたまたま墓の前に置かれていたからというだけだ。
まぁ、総括するとチウネンの墓に彼女が足を運んだ大きな理由はない。強いて言えば気が向いたから。
彼女の足癖の悪さに特に他意は無いし、むしろ治そうと思っているほどのものだから。
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